2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 勉 法政大学, 生命科学部, 教授 (70215812)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細菌 / ファージ / DNA再編成 / 細胞分化 / 枯草菌 |
Research Abstract |
本研究は有胞子細菌の細胞分化におけるDNA再編成の機構とその獲得過程を解明することを目的としている。これまで有胞子細菌である枯草菌のsigK遺伝子、また本研究室においてB.weihenstephanensis(B. wei)のspoVFB遺伝子が胞子形成期に再構築されることが明らかになっている。本年度は、B.weiの部位特異的組換酵素spoIVCAと再構築されるspoVFBの転写開始点を決定し、それぞれ母細胞で機能するシグマ因子SigEおよびSigKにより認識されるプロモーターを有していることを明らかにした。この結果、B.weiにおいてもDNA再編成は、DNAが伝承される胞子側ではなく、将来消失する母細胞でおこることが示された。sigKおよびspoVFBには不完全なプロファージが介在しており、このファージ様DNAが欠失することにより、ゲノム上に該当遺伝子が再構築する。さらに、公共ゲノムデーターベースを調べたところ、これら2つの遺伝子以外の胞子形成遺伝子にファージ様因子が介在している有胞子細菌が数多く見いだされた。これらの遺伝子の多くはファージ様DNAが欠失することによりゲノム上に遺伝子が再構築されると考えられるが、逆位により再構築する可能性のある遺伝子も見いだされた。また、枯草菌のプローファージであるSPβはポリサッカライド合成酵素をコードするcapDを分断しており、この遺伝子も胞子形成期に再編成されることを明らかにした。これらの結果より、DNA再編成の機構には多様性があり、また、DNA再編成の起源はプロファージの介在の結果であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、有胞子細菌のDNA再編成の機構とその獲得過程の解明である。前者においては、B.weiの部位特異的組換え酵素をコードする遺伝子および構築されるspoVFBのプロモーターを決定したことにより、胞子形成期での発現メカニズムを明らかにした。この結果はDNA再編成に必要とされる酵素および対象遺伝子の発現時期が細胞分化と深く結びついていることを示したもので大きな進展があったと言える。さらに、今回、研究のブレイクスルーとなったのは後者の獲得メカニズムの解明である。公共ゲノムデータベースを用いファージDNAにより分断されている遺伝子を探索したところ、モデル細菌である枯草菌のプロファージSPβが分断するcapDが再構築されることが明らかとなった。これまで実際に生きているファージDNAがファージ誘発の機能とは別に細胞分化において遺伝子再編成に関与していることの報告はない。今回の解析結果は、ファージDNAが進化の過程で遺伝子再構築に関与してきたことを示す有力な証拠となり当初目的を達したに近い成果が得られたと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
有胞子細菌のDNA再編成の獲得過程に関する研究において、大きな進展が見られたため、今後は生きたプロファージであるSPβによるcapD再構築の解析を中心に進める予定である。B. wei spoVFBの構築にいては、一通りの解析が終了し、現在論文としてまとめている。また、自然界に存在する有胞子細菌のDNA再編成においては、標的となる遺伝子が異なり多様性があり、また欠失だけでなく逆位がおこることも示唆された。今後はこの現象の普遍性およびメカニズムの多様性を明らかにすべくさらに多くの有胞子細菌のDNA再編成について調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究費の遂行に必要な、試薬、プラスチック・ガラス器具を中心に使用する予定である。また、扱う有胞子細菌の種類が増えたため、研究補助に対する謝金の支出も予定している。前年度繰越金などを利用して対応したいと考えている。
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