2013 Fiscal Year Research-status Report
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24580130
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 勉 法政大学, 生命科学部, 教授 (70215812)
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Keywords | 細菌 / ファージ / DNA再編成 / 細胞分化 / 枯草菌 |
Research Abstract |
枯草菌の胞子形成遺伝子でありポリサッカライド合成酵素をコードするspsM(capD)は、栄養細胞においてSPβプロファージにより分断されている。昨年度我々は、この分断されているspsMが胞子形成期に再構築されることを報告した。 本年度は、SPβ上のyokAおよびyotNによりDNA再編成が調節されていること、これらの遺伝子のうちyotNが胞子形成期に母細胞特異的シグマ因子σEにより転写され母細胞特異的DNA再編成がおこること、これらの遺伝子以外の領域を除いた最小化SPβ株でも胞子形成期のDNA再構成がおこることを明らかにした。一方、SPβプロファージはMMCなどのファージ誘発剤で宿主ゲノム上から切り出されるが、この切り出しにもこの2つの遺伝子が関与していることが確認された。また、この最小化SPβ領域を母細胞特異的胞子形成遺伝子の一つであるspoVF遺伝子座に挿入したところ、胞子形成期にDNA再編成がおこり、完全形のspoVF遺伝子が再構築されることも明らかとなった。これらの結果より、DNA再構成機構の詳細が解明され、またSPβファージによりもたらされる遺伝子再構築が他の胞子形成遺伝子でもおこりうることが示唆された。 さらに、有胞子細菌のDNA再編成であるGeobacillus thermoglucosidasius C-56-YS93、B. vallismortis DV1-F-3、B. cereus ATCC10987において、それぞれspoVR、spoVK、gerE遺伝子が胞子形成期にDNA再編成により再構築されることを示し、このDNA再編成は挿入される遺伝子に多様性があるものの、有胞子細菌が持つ普遍的な現象であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、有胞子細菌の細胞分化におけるDNA再編成機構とその獲得過程の解明にある。前者のDNA再編成については、SPβプロファージを用いて、yokAとyotNの2つの遺伝子のみが、その機構に関わっていることを示した。特に、YokAはDNA組換え酵素としての本体であり、YotNはそのタイミングを決める因子であることを示したことは重要である。つまり、細胞分化と密接に関わる遺伝子再構築は、このような2つの因子のセットで調節されていることが普遍的である可能性が考えられた。一方、枯草菌において構築される標的遺伝子spsMは、胞子表層に関わるポリサッカライド合成に関与することを示した。これまでspsMはSPβプロファージにより分断されているため機能しない遺伝子とされ、従ってポリサッカライド層の存在についてもこれまで議論されてこなかった。しかし、今回の研究でspsMは再構築され、胞子ポリサッカライド層が存在することが明らかとなった。 さらに、後者に関しては、Geobacillus thermoglucosidasius C-56-YS93、Bacillus vallismortis DV1-F-3、B. cereus ATCC10987において、それぞれspoVR、spoVK、gerE遺伝子において再編成が認められ、有胞子細菌の細胞分化における遺伝子再構築に普遍性があることが示された。また、spoVF遺伝子を人為的に再構築させることに成功したことは、これまでに見つかった遺伝子再構築による調節される遺伝子以外にも標的となりうる遺伝子が存在することを示しており、DNA再編成の獲得過程の一端を明らかにすることができた。以上の結果から本課題において大きな進展があり、達成度は高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、SPβプロファージを用いて遺伝子再構築の獲得過程の解明を中心に進める。SPβファージの標的となる宿主のspsM遺伝子上のattB部位を除き、これ以外の部位へ挿入させ、新たな遺伝子再構築系を作製する。これにより、進化における遺伝子再構築系獲得過程を検証する。また、最小化SPβをさらに多くの胞子形成遺伝子に挿入し、人為的な遺伝子再構築系が作製可能か検証する。
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