2013 Fiscal Year Research-status Report
酵母の新規イオン輸送体の解析とオルガネラ膜のイオン輸送体測定技術の基盤構築
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24580135
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浜本 晋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10533812)
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Keywords | イオンチャネル / 細胞内小器官 |
Research Abstract |
本研究では、酵母の巨大化法と細胞内小器官を用いたパッチクランプ法の併用により、酵母液胞膜に局在するCa2+チャネルYVC1の機能解明、yvc1欠損株の液胞膜に真核生物の細胞内小器官に局在するイオン輸送体を導入発現して機能解析することをめざした。 動物において痛みや温度などの刺激に応答するイオンチャネルTRPのホモログチャネルであるYVC1は、動物TRPチャネルの分子機構を解明するための重要な研究対象である。測定電極の先端に液胞膜の断片を移しとるexcised-patch法を用いた単一チャネル測定を行った。その結果、細胞質側のCa2+によってYVC1チャネルが活性化するのとは反対に、液胞内のCa2+によってチャネル活性が低下する特性を見出した。 yvc1欠損株にヒト細胞のリソソームに局在することが知られているTPCN2チャネルに緑色蛍光タンパク質GFPを融合したTPCN2-GFPを形質導入し、共焦点顕微鏡を用いて観察したところ、yvc1欠損株の液胞膜から蛍光シグナルを検出した。さらに、TPCN2チャネルを発現した酵母液胞膜を用いてパッチクランプ解析を行ったところ、液胞内から細胞質に向かって透過するNa+電流を検出したがK+電流は検出されなかったため、TPCN2はNa+選択性の高いチャネルであることを見出した。さらに、細胞質側に該当する測定溶液にホスファチジルイノシトール-3,5二リン酸(PI(3,5)P2)と添加したところ、TPCN2チャネルの活性化を確認した。 また、シロイヌナズナのゴルジ体に発現する陰イオン輸送体CLC-dを酵母細胞に形質導入したところ、酵母液胞膜への発現が確認されたため、ゴルジ体に局在するイオン輸送体の異種発現系として酵母液胞膜を用いることが可能と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、液胞内のCa2+がYVC1チャネルの活性を阻害する新規の制御機構を見出した。これまでにも幾つかのCa2+チャネルが細胞内小器官内の高濃度のCa2+によって活性が阻害されることが報告されており、Ca2+チャネルの普遍的な阻害機構の解明の糸口になりうる結果である。 ヒト細胞のリソソームに発現する陽イオンチャネルTPCN2を酵母細胞に形質導入したところ、巨大化酵母の液胞膜への局在を確認した。また、シロイヌナズナのゴルジ体に局在する陰イオン輸送体CLC-dを酵母に形質導入して局在を検討したところ酵母液胞膜への局在を確認した。ヒト細胞のリソソームの直径は約1マイクロメートル程度であるが、パッチクランプ実験に適用するためには膜小胞の直径が5マイクロメートル程度は必要である。そのため、リソソーム等の細胞内小器官の脂質二重膜に局在するイオンチャネルの機能解析は遅れていた。本研究結果により、ヒトのリソソームに局在するイオンチャネルを酵母液胞膜を用いて機能解析する測定系の構築が達成された。さらに、シロイヌナズナのゴルジ体に局在するイオン輸送体CLC-dが酵母液胞膜に局在することが明らかとなり、今後の機能解析が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によってシロイヌナズナ陰イオン輸送体CLC-dが酵母液胞膜に発現することを確認した。今後はCLC-d発現酵母の液胞膜を用いたパッチクランプ測定を継続し、CLC-dの機能解析を試みる。シロイヌナズナのゲノムDNAには七つのCLCチャネル遺伝子が保存されており、全てのCLCタンパク質が細胞内小器官に発現して細胞内窒素濃度の恒常性維持と浸透圧調節に関わっていることが報告されている。植物CLCチャネルは、それらが細胞内小器官に局在することが機能解析行われなかった要因となっているため、本研究でめざしているCLC-dの酵母液胞膜を用いた機能解析が待たれている。 これまでにyvc1欠損酵母の液胞膜を用いたパッチクランプ実験によって見出された内在性の陰イオン選択性輸送体の遺伝子の同定を今後も継続して行う。これまでにyhl008cが陰イオン輸送体遺伝子の候補遺伝子であったが、yhl008c遺伝子破壊株を用いたパッチクランプ実験において内在性の陰イオン電流が完全に消失しないことからyhl008c以外にも陰イオン電流を生じさせる原因遺伝子が存在することが推察されている。候補遺伝子が複数存在するため、それらの遺伝子破壊株を作成してパッチクランプ実験を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。また、酵母液胞膜内在性の陰イオン輸送体遺伝子の同定において予想外の実験結果が得られたため、平成25年度に予定していた遺伝子破壊株の作成を次年度に行うことになった。そのため、H25年度に購入予定していた遺伝子工学試薬の一部を次年度に購入することとした。 電気生理学実験によるチャネル活性の測定を予定しているため、ガラス器具、プラスチック器具、電子部品を消耗品として購入する。電気生理学的実験に用いる巨大化酵母の調製などに必要な培地、酵素試薬、化学薬品などの消耗品を購入する。変異遺伝子の作成や酵母細胞に形質導入したチャネル遺伝子の発現を確認するためリアルタイムPCRなどの遺伝子工学実験用の試薬を購入する。成果発表となる国際誌への論文投稿をめざし、英文校正代と論文投稿料を計上した。国内の学会と国際学会に積極的に参加し、本研究の成果を発表するために出張費を計上する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] The Phosphoinositide PI(3,5)P2 mediates Activation of Mammalian but not Plant TPC Proteins: Functional Expression of Endolysosomal Channels in Yeast and Plant Cells2014
Author(s)
Anna Boccaccio, Joachim Scholz-Starke, Shin Hamamoto, Nina Larisch, Margherita Festa, Paul Vijay Kanth Gutla, Alex Costa, Petra Dietrich, Nobuyuki Uozumi, Armando Carpaneto
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Journal Title
Cellular and Molecular Life Sciences
Volume: 掲載確定
Pages: accepted
Peer Reviewed
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[Journal Article] Defining membrane spanning domains and crucial membrane-localized acidic amino acid residues for K + transport of a Kup/HAK/KT-type Escherichia coli potassium transporter.2014
Author(s)
Sato, Y., Nanatani, K., Hamamoto, S., Shimizu, M., Takahashi, M., Tabuchi-Kobayashi, M., Mizutani, A., Schroeder, J.I.,Souma, S, and Uozumi, N.
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Journal Title
The Journal of Biochemistry
Volume: 掲載確定
Pages: accepted
DOI
Peer Reviewed
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