2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580136
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若木 高善 東京大学, 農学生命科学研究科, 研究員 (70175058)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸化還元酵素 / 超好熱菌 / 中央代謝 / フェレドキシン |
Research Abstract |
グリセルアルデヒド(GA)酸化還元酵素(GAOR)に関する研究: スルホロバス・トコダイ菌の大量培養菌体からGAORの精製を行ったが、かつて取得に成功したGAOR1、GAOR2、GAOR3、GAOR4の4種類のうち、再現性よく精製できるのは、GAOR1のみであった。クロマトグラフィーに複数の活性ピークが得られたが、いずれもGAOR1と同様の酵素学的・蛋白質化学的な性質を示し、GAOR2も僅かに得ることが出来た。 また、大腸菌を宿主とする遺伝子発現系を、L, M, Sの3種類のサブユニット各々の単独発現系として先ず作成したところ、Sサブユニットの組み換え体だけが、有色の蛋白質を生産することが分かった。 本菌でグリセルアルデヒド-3-リン酸GAPの酸化に関わる可能性のある酵素には、非リン酸化型のGAP脱水素酵素(GAPN)と考えられるORF:ST2477とST0064、リン酸化を伴う従来型のGAPデヒドロゲナーゼと考えられるST1356がある。遺伝子の組み換え体を精製して、ST2477とST1356の機能解析を行ったところ、前者はGAPに対して強い正の協同性を示すアロステリック酵素であることを発見した。後者は可逆反応を触媒するが、糖新生方向の速度が速いこと、その際NADP+だけを補酵素として用いることが明らかになった。これらの研究成果は、欧文誌 FEBS Letters 586 (2012) 3097–3103 に印刷公表した。 ピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素(PFOR)に関する研究: 酵素のセレノメチオニン誘導体を作成し結晶化条件を探索中である。一方、PFORの鉄硫黄クラスターに配位するを4つのシステインを置換させて様々な変異体を作成し、一つでもシステインが置き換わると鉄硫黄クラスターが脱落すること、酸化還元活性も失われること等を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GAORに関する遺伝子発現系を、第1年度はL, M, Sの各サブユニット単独での発現系として設計した。Sサブユニットは補因子が入った状態で産物が得られる見込みがついたが、L,Mはモリブデンやフラビンの入った蛋白質を発現させることは難しそうであり、GAORを組み換え酵素として取得するには、単独発現系ではなく共発現系で、しかも宿主としての大腸菌にも見直しが必要であることがわかった。スルホロバス・トコダイ菌の大量培養菌体からGAORの精製を行ったが、かつて取得に成功したGAOR1、GAOR2、GAOR3、GAOR4の4種類のうち、再現性よく精製できるのは、GAOR1,2であり、本年度は新しい進展は少ななかった。 本菌でグリセルアルデヒド-3-リン酸(GAP)の酸化に関わると考えられるST2477とST0064、リン酸化を伴う従来型のGAPデヒドロゲナーゼと考えられるST1356について遺伝子の組み換え体を精製した。それぞれの機能解析を行い、所期の実験結果を得た。これらの研究成果は、欧文誌 FEBS Letters に印刷公表した。 ピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素(PFOR)に関する研究: 酵素のセレノメチオニン誘導体を作成し結晶化条件を探索中であり、成果に乏しかった。一方、PFORの鉄硫黄クラスターに配位するを4つのシステインを置換させて様々な変異体を作成し、一つでもシステインが置き換わると鉄硫黄クラスターが脱落すること、酸化還元活性も失われること等を明らかにした仕事は、論文として投稿準備中である。 全体として、GAORやPFORの研究に比べてGAPNの研究達成度が突出しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
GAORの遺伝子発現については、複数のサブユニットの共発現系や、宿主の検討を行う。もとの菌体からのGAORの精製については菌の培養条件などに検討を加え、さらにGAOR1以外の酵素の安定的取得を試みる一方、GAOR1については酵素学的な分析とX線結晶構造解析を目指して結晶化条件の検討を行う。 GAPNの研究: スルホロバスのGAPNに関して、これと異なるアロステリックな性質を示す類縁酵素のアミノ酸配列を参考にして、変異体を作成して、動力学的な性質がどのように変化するか調べる。この中には、基質GAPへの協同性、活性化エフェクターの役割、補酵素NAD+/NADP+ の使い分け、を含む。 PFORに関する研究: 引き続き酵素の結晶化とX線結晶構造解析を行う。セレノメチオニン誘導体の結晶化に苦しんでいるので、ネイティブ酵素の重原子置換体を解析するなどの道も試みる。また、鉄硫黄クラスターを欠失した変異体には、酸化を伴わないPFOR副反応が起こるか否かを調べる。クラスターの有無により触媒する反応が異なるので、その反応機構を明らかにして論文をとりまとめる。また、フェレドキシン関連酵素として、ST2133というORFがフェレドキシン:NADP還元酵素(FNR)として推定されているので、その機能を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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