2013 Fiscal Year Research-status Report
初期分泌経路におけるカルシウム振動シグナル変換機構の解析
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24580138
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 秀樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30314470)
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Keywords | シグナル伝達 / カルシウム結合タンパク質 / COPII小胞 / 小胞体 / アネキシン |
Research Abstract |
本研究は、高機能な分泌タンパク質を大量に生産可能な培養細胞系の確立を最終目標とし、哺乳類細胞の小胞体からゴルジ体への物質輸送経路(初期分泌経路)に動員されるカルシウム結合タンパク質の生理機能の解明を目指している。本年度は以下の実験を行った。 1) カルシウム依存性リン脂質結合タンパク質であるアネキシンA11の一部は、小胞体から出芽する輸送小胞COPIIの出芽領域(ER exit site, ERES)に動員される。昨年度は、アネキシンA11が特異的に結合するリン脂質を、各種リン脂質がスポットされた膜を用いたドット・ブロット解析によってスクリーニングしたが、その結果をもとに本年度は、ホスファチジルコリンをベースとして各種のリン脂質を含むリポソームを合成し、アネキシンA11のリン脂質結合特異性とカルシウム依存性を検討した。その結果、COPII小胞の出芽に必要なホスファチジン酸やホスファチジルイノシトール-4-リン酸などを含むリポソームとカルシウム依存的な結合が検出された。アネキシンA11がこれらの脂質と結合することでERESの脂質構成を制御している可能性が考えられた。 2) Sec31AはCOPIIの外皮を構成するタンパク質であり、細胞質からERESに動員される。Sec31Aには、カルシウム結合タンパク質ALG-2が結合するが、カルシウムシグナルとSec31Aの動態の関連は不明である。本年度は、神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いて、脱分極に伴うカルシウム動員時のSec31Aの挙動を生細胞イメージングにより解析した。蛍光蛋白質を融合させたSec31Aは、脱分極刺激後にERESと考えられる斑点状の部位において集積することが観察された。カルシウムシグナルによって、Sec31Aの動員量を増加させることで初期分泌経路が調節されている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アネキシンA11のカルシウム依存的なリン脂質との結合について、ドット・ブロット法とリポソームを用いた結合実験により、その脂質特異性が明らかになりつつある。当初の研究計画よりやや遅れてはいるが、これは組換体アネキシンA11がカルシウム存在下で凝集する性質があっため、複数のリポソームの回収法を検討したことが原因である。一方で、多種の細胞とカルシウム動員刺激を検討し、Sec31Aの動態がカルシウムシグナルによって調節されていることを示す知見を得た。ERESに動員されるカルシウム結合タンパク質ALG-2とアネキシンA11を発現抑制すると、ERESに安定に存在するSec31Aが減少するという前年度までの結果と考え合わせると、カルシウム・シグナルがALG-2やアネキシンA11を介してSec31AのERESの存在量を調節していることが推測される。また、カルシウム動員に呼応して、細胞質のALG-2の大半がERESに動員されるのに対し、アネキシンA11はその一部がERESに動員されるもののERES以外の区画にも局在化する現象を見出している。これらの観察結果は興味深く、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Sec31Aの動態がカルシウムシグナルによって影響を受けるという知見が得られたため、その生理的意義の解明を目指す。すでに、細胞内のカルシウムを枯渇させることでSec31Aが細胞内において分散することを報告しているが、ALG-2やアネキシンA11を発現抑制した細胞におけるSec31A以外のERESに局在化するタンパク質の分布を観察し、カルシウムシグナルがERESの分布に与える影響を検討する。また、Sec31AのALG-2結合領域を含む150アミノ酸から成るプロリンに富んだ領域に結合するタンパク質を探索する。この領域に作用するタンパク質は、Sec31AとALG-2の結合に影響を与えることが予想される。また、アネキシンA11がカルシウム動員時に局在化するオルガネラを同定し、ERESとそのオルガネラとの相互作用について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リポソームを用いたアネキシンA11のリン脂質結合特異性の解析を進めるにあたり、実験系に用いる組換体アネキシンA11が沈殿される傾向があった。そのため、リポソームの回収方法、実験に用いるアネキシンA11の濃度の検討、およびアネキシンA11のタンパク質量を高感度、かつ定量性に優れた検出系の検討を行った。そのため、当初予定していたアネキシンA11が特異的に結合するリン脂質の小胞体での局在解析とERESの分布に対するアネキシンA11の役割に関する解析がすすめらなかった。これらの解析は次年度に行う予定である。 ALG-2およびアネキシンA11がERESの分布に及ぼす影響を解析するために、動物細胞用試薬、免疫実験用試薬、分子生物学用試薬およびガラス器具、プラスチック器具などの消耗品に使用する。
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[Presentation] Potential role of annexin A11 in the COPII biogenesis in SH-SY5Y human neuroblastoma cells.2013
Author(s)
Hideki Shibata, Takashi Kanadome, Satoshi Kamura, Akane Sato, Terunao Takahara, Stephen E. Moss, Masatoshi Maki
Organizer
7th International Conference on ANNEXINS
Place of Presentation
The Chaterhouse Square campus of the St Barts and the London School of Medicine and Dentistry, Queen Mary, University of London, London, United Kingdom
Year and Date
20130909-20130911
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