2012 Fiscal Year Research-status Report
植物の栄養繁殖におけるオーキシン機能メカニズムの解析
Project/Area Number |
24580140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石崎 公庸 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00452293)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オーキシン / 発生制御 / 転写制御 / 植物ホルモン / 分裂組織 / 無性生殖 / クローン |
Research Abstract |
栄養繁殖は、交配を必要とせず栄養器官の一部が個体として再生する無性生殖の1様式であり、数々の植物種で形態学的、組織学的に記述はされているものの、その分子メカニズムはほとんど解析されていない。本研究では、単純な発生制御メカニズムを持ち栄養繁殖の仕組みを有する苔類ゼニゴケをモデルとし、栄養繁殖の分子メカニズムを解明する。 平成24年度は、オーキシン信号伝達経路の鍵因子であるMpARF1の機能欠損変異体について、栄養繁殖プロセスセスにおける表現形を解析した。その結果、無性芽発生において、分裂組織の形成に異常が確認され、分裂組織が正常な機能を持っていないことが明らかとなった。さらにMpARF1の発現部位を解析する目的で、MpARF1のC末端に蛍光蛋白質を融合した遺伝子(MpARF1-Citrine)を構築し、MpARF1機能欠損変異体に導入した形質転換体を作製した。作製した形質転換体では、MpARF1機能欠損変異体で見られた種々の発生異常を回復したことからMpARF1-Citrineは、正常なMpARF1の発現様式と機能を持つと考えられる。MpARF1-Citrine形質転換体では、成熟した無性芽の分裂組織を含む全体でCitrine蛍光が観察されたが、無性芽の発生開始から数時間でCitrine蛍光の急速な減衰が見られた。無性芽発生プロセスおよび、無性芽からの葉状体発生の初期プロセスにおいて、MpARF1の発現がダイナミックに調節されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MpARF1の機能欠損変異体の作出とその表現形解析、MpARF1の発現様式を解析する形質転換体の作出と観察が順調に進行している。作出したMpARF1-Citrine形質転換体(mparf1変異体に導入し表現形を相補)は、今後MpARF1下流遺伝子の探索のためのChIP解析等にも用いることが出来ると考えられる。また、本研究でモデルとするゼニゴケにおいて相同組換えに基づくジーンターゲティング法やゲノム解析が進行し、さらにmRNA-seqによるトランスクリプトーム解析も始動した。栄養繁殖プロセスにおけるオーキシンを介した転写制御機構とその役割について、さらに深く解析する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、初年度で得られた結果についてまとめると共に、MpARF1下流の因子について、さらに解析を進める。 まずMpARF1の発現制御について、平成24年度に作出したMpARF1-Citrine株を用いて、杯状体内部での無性芽発生プロセスにおけるMpARF1の発現ダイナミクスを解析する。 次にMpARF1下流因子の探索を重点的に行う。MpARF1下流で機能する無性芽発生制御因子を単離するため、野生株とmparf1におけるトランスクリプトームの比較解析を行う。杯状体基底部では、オーキシンによる転写制御が活性化しており、ARF1による転写制御が示唆される。そこで1つは野生株とmparf1変異体における杯状体基底部の組織をサンプリングしRNAを単離後、次世代シークエンサーによる転写産物の解読(RNA-seq)を行う。解読した大量の配列データは、国立遺伝学研究所の中村保一博士、長崎英樹博士の協力の下、ゼニゴケゲノム配列データベースを用いて解析する。 さらにMpARF1下流因子候補のChIP解析を行う。杯状体底部のトランスクリプトーム解析により絞り込んだMpARF下流遺伝子候補について、クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いて、MpARF1の結合を解析し、MpARF1により直接制御される遺伝子を同定する。本年度作出したMpARF1-Citrine遺伝子をmparf1に相補した株を用いる。 これらの解析により、MpARF1により転写制御を受け、杯状体基底部もしくは発生中の無性芽で発現する因子を同定し、更なる機能解析を行う。近年、申請者はゼニゴケにおいて相同組換に基づくジーンターゲティング法を確立した。この手法を用いて、ノックアウト株の作出を行い、機能解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24~25年度の研究成果をまとめるとともに、MpARF1下流因子の機能解析をさらに進める。またオーキシン転写調節機構の数理モデリングを行う。①MpARF1の機能解析と②オーキシン制御システムのイメージング解析について得られた結果を統合的に解析し、無性芽発生プロセスにおけるオーキシン制御系の発現パターンとオーキシンによる転写制御を考察する。さらに申請者の所属研究室で解析を進めている MpTIR1-MpIAA-MpARFs相互作用解析の結果と合わせてオーキシン転写制御機構の数理モデリングを行う。また、構築したモデルを用いて、野生株およびmparf1変異体における遺伝子発現の変化が説明できるかを検証する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Composition and physiological function of the chloroplast NADH dehydrogenase-like complex in Marchantia polymorpha.2012
Author(s)
Ueda, M., Kuniyoshi, T., Yamamoto, H., Sugimoto, K., Ishizaki K., Kohchi, T., Nishimura, Y. and Shikanai, K.
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Journal Title
The Plant Journal
Volume: 72
Pages: 683-693
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Characterization of the plasma membrane H+-ATPase in the liverwort Marchantia polymorpha2012
Author(s)
Okumura, M., Inoue, S., Takahashi, K., Ishizaki, K., Kohchi, T. and Kinoshita, T.
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Journal Title
Plant Physiology
Volume: 159
Pages: 826-834
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Forward genetics for gametophyte development in Marchantia polymorpha2012
Author(s)
Ishizaki, K., Mizutani, M., Masuda, A., Shimamura, M., Nishihama, R. and Kohchi, T.
Organizer
International Marchantia Workshop 2012
Place of Presentation
ホテルグリーンピア南阿蘇
Year and Date
20121115-20121117
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