2012 Fiscal Year Research-status Report
動物細胞小胞体におけるタンパク質のジスルフィド結合形成機構
Project/Area Number |
24580141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
門倉 広 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 研究員 (70224558)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ジスルフィド結合 / 動物細胞 / 小胞体 / 品質管理 / JPDI |
Research Abstract |
ジスルフィド結合形成は、分泌タンパク質にとって立体構造形成上、重要な反応ステップである。哺乳動物細胞の小胞体内にはこの過程に関わると予想される酵素(チオレドキシン様のドメインを持つ)が約20種知られている。その一つであるJPDIは、分子内に4個のチオレドキシンドメインと1個のJドメインをもつ。本酵素の生理的な機能を解明するために、平成24年度は本酵素の生理的な基質の同定をすすめた。このためには、チオレドキシン様の酵素が、ジスルフィド結合の形成、還元、 異性化をおこなう際には、酵素と基質がジスルフィド結合で連結した中間体が形成することを利用した。様々な工夫の後、NEM処理した精巣上体試料から、JPDIと基質の複合体を、精製した。更に、マススペクトル解析により、JPDIと複合体を形成しているタンパク質を、網羅的に同定することに成功した。その結果、本タンパク質の生理機能に関して有用な情報を得た。 インシュリンは、分子内に3個のジスルフィド結合をもつ。インシュリンにジスルフィド結合を導入する酵素の同定を目指し、本年度は、実験条件を最適化した。目的の酵素の同定には、インシュリンにジスルフィド結合が導入される過程で形成される共有結合中間体を同定し、精製することが必要である。しかし、実際に実験を進めてみると、おそらくインシュリンが極めて小さな分子であるため、免疫沈降でタンパク質を回収することも、タンパク質をウエスタンブロッティングで、検出することも困難であった。そこで、各実験ステップの条件を最適化した。その結果、現在、インシュリン産生細胞から、インシュリンを効率よく回収するとともに、タンパク質を検出することが可能になった。これは実験上の大きな進展である。 また、ジスルフィド結合等がうまく形成されなかったタンパク質は修復もしくは分解を受ける。この過程に関連する新知見も得たので報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、主に、2つのアプローチによって研究を進めている。 第1のアプローチでは、小胞体内のジスルフィド代謝に関与すると予想されているJPDIの生理的な基質を同定することによって、本酵素の生体内における機能を解明することを目的としている。平成24年度は、JPDIと基質の間で形成された共有結合中間体と予想される複合体を、精巣上体から精製するとともに、このなかに含まれるタンパク質をマススペクトル解析により網羅的に同定することに成功した。まだ、この段階では、今回同定したタンパク質は、基質の候補タンパク質にすぎないが、JPDIの生理基質の同定にむけて大きな前進である。 第2のアプローチでは、インシュリン(より正確にはプロインシュリン)と共有結合中間体を形成する酵素をインシュリン産生細胞から精製することにより、インシュリンにジスルフィド結合を導入する酵素を同定することを目的にしている。実際に実験を進めてみると、上述したように、免疫沈降でタンパク質を回収することも、タンパク質をウエスタンブロッティングで、検出することも困難であった。そのため、各実験ステップの条件を最適化する必要が生じたため、その点では実験が遅れている。しかし、この問題は平成24年度中に解決することに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. JPDIの生理機能の解明 (1) JPDIの基質の同定 平成24年度に用いたと同様の方法をもちいて、平成25年度は、前立腺からも、JPDIの基質候補タンパク質を同定する。 (2) JPDIを欠損する細胞を用いたJPDIの生理機能の解析 JPDIの生体内に於ける具体的な機能を解明する目的で、各基質候補タンパク質の生合成過程を、パルスチュイス実験等により、野生株とJPDI欠損細胞で、調べる(JPDI遺伝子欠損マウス線維芽細胞は作製済)。もし、JPDI の欠損下、基質候補タンパク質の挙動に影響が出ると、そのタンパク質は確かにJPDIの基質であることが判明する。また、JPDIの欠損下、基質に生じる影響を詳しく解析することによって、JPDIの機能が明らかになる。 2. インシュリンと複合体を形成する因子の同定および当該因子がインシュリンの生合成に果たす役割の解明 平成24年度には、予想外に、実験条件の最適化が必要であった。そのため平成25年度は、インシュリンと複合体を形成する因子の同定を引き続き進める。この実験には、マウス膵臓β細胞由来の培養細胞株MIN6を利用する。目的の因子が得られたら、当該因子がインシュリンの生合成に果たす役割を解明するために、当該因子の発現をsiRNA法等で抑制した場合の影響をパルスチェイス実験により調べる。 3. JPDIの各チオレドキシンドメインの役割分担の解明 平成26年度には平成25年度の研究を継続するとともに、JPDIのもつ4個のチオレドキシンドメインの役割分担を調べる為に、各チオレドキシンドメインの活性中心モティーフ(CXXC)に点変異を導入した変異体を作成し、JPDI上のこのような変異によって、基質タンパク質の生合成過程にどのような影響が生じるかをパルスチェイス実験で解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先述したように、上述のアプローチ2では、予想外の問題が発生したため、実験条件の検討が必要になりました。このため、当初予定していた実験が行えなかったため、平成25年度への繰越金が生じました。しかし、先述したように、実験条件の検討により問題点は解決したので、平成25年度には、平成24年度に行えなかった実験と当初平成25年度に予定していた実験の両方を進める予定です。これらの実験には消耗品としては、汎用の薬品や器具の他、様々な基質候補タンパク質のcDNAをクローン化し発現させるために必要となる、化学合成オリゴヌクレオチドが必要になります。更に、消耗品費は、タンパク質の検出に必要な抗体や、遺伝子を動物細胞にトランスフェクションするための試薬、動物細胞の培養や維持に必要な試薬や器具の購入にも、使用します。また、パルスチェイス実験に必要な、放射性アミノ酸も購入します。更に、研究成果を学会等で積極的に発表し、その場での議論を研究の発展に生かしたく、研究費は国内旅費、外国旅費としても利用したいと考えております。その他、論文発表のための費用を計上しています。
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Research Products
(3 results)