2013 Fiscal Year Research-status Report
昆虫の摂食行動関連因子の脳神経ネットワークが制御する生体応答と体内の分子変動解析
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24580157
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 晋治 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40345179)
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Keywords | 昆虫 / 摂食行動 / ペプチドホルモン / ネットワーク |
Research Abstract |
私たちの研究グループでは、カイコBombyx moriの幼虫を用いて、摂食行動を調節するペプチド性の因子群を同定してきた。本研究では、これらのペプチド性因子が脳神経系でお互いにどのような関連性があるか、そして、最終的にはその神経ペプチドネットワークの構造を明らかにすることを目的としている。平成25年度では、カイコ幼虫から精製単離および構造決定により摂食行動を調節する因子群をまず同定し、明らかにしたホルモン群の発現部位の解析から、脳-食道下神経節-前額神経球にそれらのホルモン群が集中していることが明らかとなった。すなわち、この領域を昆虫における摂食中枢とした。 そこで、昆虫での摂食中枢におけるホルモン動態を解析するため、これまで様々なペプチド性因子の発現解析を網羅的に行ってきた。また、それらの受容体群の発現解析も行ってきた。この中でも、short neuropeptide F (sNPF)とアラトトロピン(AT)は、摂食行動を調節するうえで中心的な役割を担っている可能性が出てきた。特に、これら2つのペプチドは脳腸ペプチドであるため、摂食行動を、餌が体内へと入る段階である消化吸収から関わっている可能性を見出した。実際に、各昆虫種で認められる摂食周期に同調するように、sNPFおよびATの受容体の発現レベルが増減していることを明らかにした。現在、それらのホルモンネットワークを明らかにすることのみならず、転写調節に関わる因子を明らかにすることを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ホルモンの発現解析およびそれらの受容体の発現解析において、先行研究とのデータの不一致、不整合などの条件検討を行っていたため、発現解析自体は遅れている。 しかし、発現解析を行っている際に、新規のペプチド性因子を見出したり(投稿準備中)、機能が未知のペプチド性因子に対する受容体を見出したり(投稿中)、本研究分野の世界的な視野からは、大きな成果を得ることができている。現在は、これら新規に見出したホルモンやホルモン受容体に対し、積極的に生体内での機能解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定していた研究計画とは多少遅れているものの、「達成度」の項に示した通り、計画とは別の大きな成果を得ることができた。現在それらを論文発表に向けてまとめているところである。以降、当初の研究計画の3つの項に沿って記す。 A.摂食行動関連因子およびその受容体の脳神経系での発現部位と発現量を解析する;現在、発現量を解析するための定量的PCRの条件検討などを行っている。定量系を調製後は、発現量を考えた網羅的な解析を行うことを予定している。なお、様々な栄養条件での発現量での推移を B.摂食行動関連因子による代謝・消化酵素、腸管の蠕動運動、生体アミンへの影響を分析する。;カイコにおいて、様々な摂食行動調節因子群が腸管の蠕動運動に関わることが先行研究と同様なデータが得られつつある。ところが、腸管における蠕動運動を解析するうえで、なるべくVivoでの腸管の状態が反映されるような解析方法が必要であることが、新規ペプチドGSRYアミドなどを投与する実験により明らかになった。そこで、Vivoでの C:摂食行動関連因子あるいはその受容体の発現量を変化させるような栄養分あるいは代謝物を同定する。;AT受容体およびsNPF受容体のプロモーター領域は既にクローニングで来ているため、今後はレポーター遺伝子などを用いた解析により、関連化合物を同定する予定である。レポーターアッセイが上手くいかない場合は、実際の生体を用いた発現量解析を用いて目的化合物の同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に購入した試薬および既に当該研究室にて現有の試薬や器具類を利用したことが多く、計画していた計上予算よりも抑えて研究することができた。 そのため、次年度に使用額が生じた。 前年度に予定していた出費が抑えられたために生じた予算を、平成26年度の転写制御活性を測定する系に重点的に利用することができる。 そのため、今年度の研究計画では精力的に分子生物学的手法に必要な試薬類を多く利用でき、研究の躍進に貢献できると期待できる。また、研究成果における論文執筆に必要な投稿費や英文校閲費にも予定の予算よりも多く利用できるよう成果報告を検討する。
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Research Products
(7 results)