2013 Fiscal Year Research-status Report
有機合成を基盤としたメチル分岐を有する昆虫フェロモンの生物有機化学的研究
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24580158
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
安藤 哲 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50151204)
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Keywords | 昆虫フェロモン / キラル合成 / 立体選択的 / 立体反転 / メチル分岐 / 鱗翅目昆虫 / フェロモン受容機構 / 性誘引物質 |
Research Abstract |
ハガタキコケガ(ヒトリガ科:コケガ亜科)の雌成虫は、性フェロモン成分として新規なメチル分岐を有する2級アルコール5-methylheptadecan-7-ol(1)を分泌する。4つの立体異性体の誘引活性から天然フェロモンは(5R,7R)-体であることを推定したが、それらは1つのキラル中心のみを立体選択的に導入し、得られたジアステレオマーをHPLCで分離する方法で調製したものであった。そこで今回、新たに完全なキラル合成の方法を確立するとともに、直鎖炭素数の異なる幾つかの類縁化合物も合成し、野外試験にて雄蛾の分岐位置の認識能力に関する知見を得ることを目的として実験を行った。 その結果、(S)-propylene oxide((S)-2)から得られるキラルな二級アルコールのトシル化物(3)に、立体反転を伴うNaCH(CO2Me)2のSN2反応を行った。得られたジエステル(4)を一連の反応(脱炭酸、還元、酸化、Corey-Chaykovsky反応)で1炭素伸長したエポキシ化合物(5)に導き、Jacobsen 速度論的光学分割を利用して(2S,4R)-体のみとし、その後に必要なアルキル鎖をカップリングすることで単一なエナンチオマー(5R,7R)-1を得た。同様にして、(R)-2から(5S,7S)-1を合成し、順相キラルHPLCで各光学純度を測定したところ、どちらも高いエナンチオマー過剰率(>99 % ee)を有していた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで蛾類昆虫では見つかっていなかったメチル分岐を有する2級アルコールは、2つの不斉中心を有する興味深い化合物である。全4つの立体異性体を立体選択的に合成するルートを新に開発すると共に、類縁化合物を合成しその活性を見ることで、雄蛾のフェロモン受容機構の一端を知ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した合成法を利用し、リンゴハモグリガなどの性フェロモンを合成し、害虫防除に利用する。
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Research Products
(5 results)