2012 Fiscal Year Research-status Report
標識化合物を用いたダニ類由来脂肪族エステルの代謝機構の解明
Project/Area Number |
24580167
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
清水 伸泰 京都学園大学, バイオ環境学部, 准教授 (30434658)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生合成 / 脂肪族ギ酸エステル / コナダニ / 脂質 / 代謝機構 |
Research Abstract |
本研究はダニ類に同位体標識化合物を摂食させ、代謝物である脂肪族エステルの同位体ラベル位置から、その代謝機構を解明するものである。これは生合成研究の中で、最も直接的に動物の生命活動を認識する手法の一つといえる。そこで本研究では、コナダニ類の主要な分泌化合物群である脂肪酸エステルに注目して、その代謝機構の解明を目指す。ゴミコナダニの一種 Caloglyphus sp. “sasagawa” は、クワガタムシの飼育容器から数年前に単離して以後、申請者が人工培地で継代飼育している。分泌腺成分を分析したところ、コナダニ特有の炭化水素類の他に、これまで報告例のない2種の脂肪族アルコールのギ酸エステルを検出した。両化合物の炭素鎖は17であるが、不飽和結合の位置から炭素数18のリノール酸とオレイン酸がそれぞれの前駆物質と推定した。そこで、化学合成は、前駆物質と考えられるリノール酸とオレイン酸を基質としたラジカル脱炭酸反応を利用して、脂肪族アルコールを合成する方法を検討した。その結果、2種のギ酸エステルを、ともに短行程で効率的に合成することができた。次にダニを用いて、摂食による同位体標識化合物([1-13C]-酢酸ナトリウム)の取り込み実験を行った。経時的に分泌物のGC/MS 分析を行うことで、ラベル体の取り込みを確認できた。そこで現在、分子内の同位体ラベル化された炭素原子を決定するために、ダニを大量飼育して13C-NMRスペクトルを測定するに足る量を確保する実験を進めている。今後、別途同位体標識リノール酸とオレイン酸を合成して、それらをダニに与えた後、ギ酸エステルへの直接変換が生合成的に起こるかを検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していた2種の脂肪族ギ酸エステルの合成を、短行程で達成することができた。これで次年度以降の生合成研究で使用する標品を準備できたことになる。平成25年度に予定していた同位体標識化合物の取り込み実験が、前倒しで予備的に行えたことで、今年度と次年度に予定している生合成研究の方向性が定まった。
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Strategy for Future Research Activity |
ギ酸エステル2成分を分泌するCaloglyphus sp. “sasagawa”を用いて、摂食による同位体標識 [1-13C]-酢酸ナトリウムの取り込み実験を行う。経時的なGC/MS 分析でラベル体の取り込みを確認できたので、十分な同位体の取り込み後、ダニの分泌物と脂質をそれぞれ抽出し、各種クロマトグラフィーにより精製する。ギ酸エステルおよびグリセリドから誘導した脂肪酸の13C-NMRスペクトルを測定し、合成により得た標品のスペクトルと比較することにより、同位体ラベル化された炭素原子を帰属する。また標識リノール酸とオレイン酸を別途合成し、ギ酸エステルへの直接変換も検討する。本実験を総合して、ダニ類のリノール酸合成能(平成22~23年若手研究(B))を検証するとともに、ギ酸エステル2成分の前駆物質を特定する。さらに、ギ酸炭素の由来を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は当初の予定よりも消耗品の使用量が少なく、且つ研究の進行上、比較的高価なクロマトグラフィー用カラムや同位体標識試薬の購入を取り止めた。よって平成25年度は消耗品として、安定同位体標識試薬を中心に、合成・精製・分析用試薬類の支出を多めに見積もっている。また各種クロマトグラフィー用カラムの購入も考えている。動物飼育に必要な培地材料や飼育容器などの費用は、例年通りの予定である。調査・研究旅費や学会への参加費用も、平成24年度と同等程度と考えている。
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