2012 Fiscal Year Research-status Report
超高圧処理による牛乳アレルゲンの低アレルゲン化と経口免疫寛容の誘導
Project/Area Number |
24580173
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
山田 潔 宇都宮大学, 農学部, 講師 (30313076)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アレルギー / 食品 / 免疫学 / 蛋白質 |
Research Abstract |
β-ラクトグロブリン(β-LG)は主要な牛乳アレルゲンである。これまでに、高圧下でタンパク質分解酵素の処理を行うことによる様々なアレルゲンタンパク質の低アレルゲン化が報告されているが、β-LGにおける手法は確立されていない。本研究では超高圧下酵素処理によるβ-LGの低アレルゲン化の検討を行った。β-LG水溶液に各種タンパク質分解酵素を添加し、超高圧処理した。BALB/cマウスに2 週間ごとにβ-LGをAlumアジュバントと共に腹腔内に2 回注射した。最初のAlum免疫から28 日目の血清を用いてβ-LG特異的IgG1との結合度を競合ELISA法によって測定した。また、皮内アナフィラキシー応答についても検討した。トリシン SDS-PAGE解析の結果、高圧下でペプシン処理した場合、β-LGの顕著な分解が認められたが、パンクレアチン処理ではβ-LGが残存した。さらに、逆相HPLC解析の結果、400 MPaで5 分のペプシン処理では認められたβ-LGの残存が、 400 MPaで20 分及び600 MPaで5 分の処理では認められなかった。一方、競合ELISA法による解析の結果、 400 MPaで20 分及び600 MPaで5 分酵素処理したβ-LGでは400 MPaで5 分酵素処理したβ-LGと比べてβ-LG特異的IgG1への結合度が顕著に低下していた。また、皮内アナフィラキシー応答の強度を比較した結果、未処理のβ-LGに比較して600 MPaで5 分の処理では有意に低下し、抗原性の軽減が認められた。これらの結果から、600 MPaで5 分の超高圧下ペプシン処理により、β-LGの低アレルゲン化が可能なことが示唆された。また、低アレルゲン化β-LGに対する抗原特異的T細胞のサイトカイン産生応答についても検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度実施計画については、β-ラクトグロブリン(β-LG)の超高圧処理だけではタンパク質の構造変化が十分ではないことが示唆されたため、超高圧下でのタンパク質分解酵素処理を検討した。その結果、適切な酵素と高圧処理条件を組合わせることにより、十分な分解とアレルゲン性の低下が示唆された。アレルギーモデルマウスは経口投与による発症については検討していないが、皮内アナフィラキシー応答での解析を実施できた。また、抗原特異的T細胞応答の解析も実施できた。一方、平成25年度実施計画のうち、β-LG特異的抗体に対する超高圧処理β-LGの結合性の解析を実施できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
β-ラクトグロブリン(β-LG)の超高圧処理または適切な酵素処理と組合わせた超高圧処理についてさらに検討し、アレルゲン性軽減への効果を確認する。アレルゲン性の評価は、経口投与によるアレルギー発症モデルについて解析するとともに、培養細胞を用いたアレルゲン性評価モデルの構築も検討する。これらの解析から得られた低アレルゲン化β-LGを用いて、β-LGに対する経口免疫寛容を誘導できるかについて検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アレルギーモデルマウスを用いた試験に変更があり、マウスの使用数が計画よりも少なかったこと、T細胞応答の解析を行うにあたり、細胞調製用磁気ビーズを用いない方法を採用したためその購入がなかったことにより、当該研究費が生じた。これらは、翌年度以降に予定しているアレルギーモデルマウスを用いた試験および磁気ビーズを用いて調製したT細胞応答の解析に使用する。
|
Research Products
(2 results)