2013 Fiscal Year Research-status Report
超高圧処理による牛乳アレルゲンの低アレルゲン化と経口免疫寛容の誘導
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24580173
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
山田 潔 宇都宮大学, 農学部, 講師 (30313076)
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Keywords | アレルギー / 食品 / 免疫学 / 蛋白質 |
Research Abstract |
本研究では主要な牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロブリン(β-LG)を高圧下酵素処理することにより、低アレルゲン化の検討を行った。β-LG水溶液にペプシンを添加し、400 MPaまたは600 MPaで高圧処理した。BALB/cマウスに2週間ごとにβ-LGをAlumアジュバントと共に腹腔内に2回注射した。β-LGを免疫したマウスを用いて皮膚アナフィラキシー応答を検討した結果、ペプチドへの顕著な分解が認められた高圧下ペプシン処理β-LGの投与による皮膚アナフィラキシー応答の強度は、未処理のβ-LGの投与に比較して有意に低下し、アレルゲン性の軽減が認められた。また、β-LGを免疫したマウスにβ-LGを腹腔投与することにより誘導した全身性アナフィラキシーに伴う体温低下を検討した結果、高圧下ペプシン処理β-LGでは体温低下が認められず、低アレルゲン化が確認された。これらの複数のアレルギーモデルの結果から、高圧下ペプシン処理により、β-LGの低アレルゲン化が可能なことが示された。さらに、これらの低アレルゲン化β-LGをマウスに経口投与することにより経口免疫寛容が誘導できるかどうか検討した結果、アジュバント免疫後のマウスリンパ節細胞の増殖応答およびサイトカイン産生において抑制が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、前年度までにペプシンと高圧処理条件を組合せることで十分な分解とアレルゲン性の低下が示唆された高圧下ペプシン処理β-LGについて、2つの異なるアナフィラキシーモデルを用いてアレルゲン性を検討した。その結果、皮膚アナフィラキシー応答での解析に加えて、全身性のアナフィラキシー応答における低アレルゲン性の評価も実施できた。これらにより、アレルゲン特異的抗体との結合とヒスタミンなどの化学伝達物質の放出に起因する、局所での血管透過性および体温低下などの全身性ショックを誘導するアレルゲンとしての活性が低下していることを確認することができた。さらに、平成25年度以降実施計画のうち、低アレルゲン化したβ-LGの経口投与による経口免疫寛容の誘導についても検討することができた。低アレルゲン化を確認したβ-LGを経口投与したマウスにおいて、アレルゲン特異的T細胞の増殖応答とサイトカイン産生が抑制されていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
β-LGの高圧処理または適切な酵素処理と組合わせた高圧処理についてさらに検討し、低アレルゲン化および経口免疫寛容の誘導能への影響を検討する。アレルゲン性の評価は、アレルギー発症モデルでの解析とともに、培養細胞を用いたアレルゲン性評価モデルの構築も検討する。また、低アレルゲン化β-LGに含まれるペプチドについての解析も行う。さらに、高圧処理単独での低アレルゲン化についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アレルギーモデルのマウスを用いた試験に変更があり、マウスの使用数が計画よりも少なかったこと、T細胞応答の解析を行うにあたり細胞調製用磁気ビーズを用いない方法を採用したため、その購入がなかったこと、遺伝子発現の解析を実施しなかったことなどから当該研究費が生じた。 これらは、次年度に予定しているマウスを用いたアレルゲン性評価試験および経口免疫寛容誘導試験で相当数が必要となるマウスの購入に使用する。また、T細胞分離磁気ビーズ、遺伝子発現解析キット、フローサイトメトリー用抗体に使用する。
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