2013 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病予防・改善に向けた食品因子による腸管上皮単糖トランスポーターの制御解析
Project/Area Number |
24580176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
薩 秀夫 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (80323484)
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Keywords | トランスポーター / フルクトース / グルコース / 単糖 / 腸管上皮細胞 / GLUT5 / SGLT1 |
Research Abstract |
近年生活習慣病の増加が社会問題となっているが、その一因として過剰な糖質の摂取が考えられる。一方栄養吸収の場である腸管上皮細胞は食品因子に最も高濃度かつ高頻度に曝されることから、その機能が食品因子により制御を受けると考えられる。そこで本研究では生活習慣病予防に向けて、腸管上皮細胞にてフルクトース及びグルコースの吸収を担うトランスポーターであるGLUT5及びSGLT1に注目し、これらの活性を抑制する食品因子の探索・解析を進めた。H24年度までの本研究で、グルコースの主要な腸管吸収トランスポーターであるSGLT1をCHO細胞に安定に導入した高発現株の構築に成功した。そこで本年度は本細胞株を用いてSGLT1を介したグルコース取込活性を阻害する食品成分を約60種類のフィトケミカルを用いて探索した。その結果、温州ミカンなど柑橘類に多く含まれるタンジェレチン、緑茶に含まれるエピカテキンガレート(ECg)、ショウガ科植物に含まれるカルダモニンが高いグルコース取込阻害活性を示した。そこで実際にin vivoにおいてもグルコースの腸管吸収をタンジェレチン、カルダモニンが抑制するか、マウスを用いて経口糖負荷試験をおこなった。その結果、いずれのフィトケミカルも血中グルコース量の増加を有意に抑制することが示され、これらはin vivoにおいても腸管におけるグルコース吸収を抑制することが示唆された。一方フルクトースの吸収を担うGLUT5については、昨年度までにノビレチン及びECgが阻害活性を有することを報告したが、本年度さらに新しいフィトケミカル類についてGLUT5安定高発現CHO株を用いてスクリーニングをおこなった。その結果、新たにホップ由来のキサントフモール、アシタバ由来のキサントアンゲロール、4-ヒドロキシデリシンがGLUT5を介したフルクトース取込活性を阻害することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目であるH25年度では、初年度に構築した腸管上皮グルコーストランスポーターであるSGLT1高発現株を用いてスクリーニングをおこない、タンジェレチン、ECg、カルダモニンの3種のフィトケミカルがSGLT1を介したグルコース取込活性を抑制することを見出すことに成功した。さらにタンジェレチンとカルダモニンはマウスを用いた糖負荷試験よりin vivoにおいてもその抑制作用がみられることを実証した。また同じく初年度に作成したGLUT5高発現株を用いて、新たな食品化合物ライブラリーからGLUT5を介したフルクトース吸収阻害活性を有する食品成分を探索したところ、新たにホップ由来のキサントフモールなど3種の化合物が阻害活性を有することを見出した。これらの化合物については極めて新規な発見であることから東大TLOより特許出願を予定している。以上より、本課題にいては現在までのところおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度までの結果で、タンジェレチンとカルダモニンがSGLT1を介したグルコース取込活性を抑制することを示唆する結果がin vitro及びin vivoの両方で得られた。そこでH26年度はタンジェレチンやカルダモニンがSGLT1活性を阻害するメカニズムについて解析を進める。具体的には、これらのフィトケミカルがSGLT1に直接結合しているのかどうかアフィニティービーズなどを用いて解析する。一方GLUT5については、H25年度に新たに見出したGLUT5阻害活性を示す3種のフィトケミカルについてその阻害特性解析をおこなう。また初年度に見出したフィトケミカル2種とあわせて、GLUT5阻害活性を有するフィトケミカルがin vivoにおいてもフルクトース吸収活性を抑制するか、マウスなど実験動物モデルを用いて検証する。さらにフルクトース過剰摂取による生活習慣病の動物モデルが報告されていることから、文献などを参考に実際にフルクトース過剰投与による生活習慣病動物モデル系、特に非アルコール性脂肪肝モデル系の構築を試み、そこにGLUT5阻害活性を見出したフィトケミカルを加えて改善がみられるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞実験系を改良したことにより使用する高額試薬の量が少なく済んだこと、実験動物を用いた評価系の構築が予想以上に速やかに完了したため、動物実験に関する経費が全体として予想以上にかからなかったため。 細胞培養に関する消耗品、生化学・分子生物学的解析に関するキット・試薬などの購入を予定している。また成果報告のための学会発表に係る旅費、同じく成果報告として論文の投稿料、英文校閲料などに使用する予定である。
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Research Products
(13 results)