2012 Fiscal Year Research-status Report
オボアルブミンの凝集体形成機構:初期中間体オリゴマーのX線結晶構造解析
Project/Area Number |
24580180
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 延行 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20252520)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オボアルブミン / 熱重合 / X線繊維回折 |
Research Abstract |
オボアルブミンは卵の加工特性を特徴付ける重要な食品タンパク質であり、凝集体形成やゲル化のモデルとして研究されてきた。これまでのモデルは、オボアルブミン分子を球体で表した解像度数十オングストローム程度のものであったが、現在では本タンパク質や類縁タンパク質のX線結晶構造解析が進み、各アミノ酸残基の位置を反映した高解像度での分子モデルが構築できる条件が整っている。そこで、本研究では、凝集体形成の初期に生成するオリゴマー(二量体や三量体など)を分離精製し、X線結晶構造解析によりその立体構造を明らかにすることにより、これらを核として凝集・組織化の進むプロセスの解明を目的としている。オボアルブミンの加熱による凝集・組織化の初期段階に生じるオリゴマーについて、加熱条件等を検討し、ゲルろ過クロマトグラフィーに供することにより、二量体の含量の高めたサンプルを調製し、シッティングドロップ法による結晶化を試みた。クロマトグラフィーのバッチにより、二量体の含量が異なるので、複数回サンプルの調製を行い、個別に結晶化を試みているが、現在のところ構造解析に適した良好な結晶を得るには至っていない。 また、オリゴマーや凝集体のX線線維回折実験により、これらサンプルの持つ繰り返し構造の存在を確かめる実験に着手したところ、X線照射により、4.5Å、10Å、20Å程度の繰り返し構造の示唆される、同心円状の回折像を得ることができた。特に4.5Å、10Åの繰り返し構造は、近接するβストランド間、および、βシート間の位置関係を反映している可能性があるので、平成25年度にはさらに、その凝集条件によるこれら回折像の変化を調べ、繰り返し構造の実態に迫りたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加熱したオボアルブミンについて、オリゴマー、特に二量体の含量を高めたサンプルの結晶化を試みる段階に達した。この二量体の特質は不明であるため、結晶化し難い、不安定な構造を有している可能性もある。引き続き単離、結晶化の試みを続け、これが困難であると判断した場合は、不安定な構造を取っているとの見地から、その構造を類推するための実験を行う計画である。 また、X線繊維回折の結果より、繰り返し構造の存在が確認できたので、これが、加熱凝集の条件等を変えることにより、どのように変化するかを調べることにより、構造単位が推定できるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
オボアルブミンの加熱により生じるオリゴマーのうち、二量体を分離、結晶化を試みる段階に到達したが、良好な結晶を得るには至っていない。これは、二量体が安定な状態ではなく、凝集・組織化の中間段階であることを示唆している可能性があり、当初予想していたように、更に組織化が進んだ段階のサンプルをも対象として、本タンパク質の凝集プロセスにアプローチする必要があると考えている(計画調書に平成25年度以降の計画として記載)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
加熱凝集体の性質を知る手がかりとして、ポリマーにプロテアーゼを作用させ、 その感受性部位と抵抗性部位のマッピングを行い、単量体と比較して、加熱ポリマー化により、分子内部に埋もれる部分や、分子表面に新たに露出する部位などを特定する。 一方、大腸菌宿主により生産した組換え型オボアルブミン(リン酸化、糖鎖修飾を受けていないサンプル)を調製し、加熱重合させ、二量体の分離を試み、平成24年度同様に結晶化を試み、リン酸化や糖鎖部分の影響を検討する。
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