2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 由佳子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60212156)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 味覚 / 細胞間情報伝達 / ATP受容 / 味細胞 / マウス |
Research Abstract |
五感の中の視覚・嗅覚・味覚は、類似の機構で感知・情報変換・伝達・処理される。すなわち、Gタンパク質共役型受容体で受容され、セカンドメッセンジャーを介し、神経がその情報を中枢に伝達している。味細胞の応答頻度が味神経応答頻度と一致しないことから、その途中になんらかの情報の整理整頓が行われていると考えるのが一般的である。しかし味蕾のなかに4種の味細胞が存在しI型はグリア様、II型は甘味・苦味・うま味受容、III型は酸味受容、IV型は前駆細胞と考えられ情報が中枢に送られていく過程にそのような情報処理の過程を考えるのは困難である。これまでの研究の成果からIII型味細胞には酸味受容する細胞のほかにII型味細胞が放出するATPを受容する細胞が存在するという成果を得ている。さらに本研究においては、ATP受容に関わる受容体の同定と細胞における存在場所に関して明らかにし味情報の整理を明らかにすることを目的としている。 本研究を通じて、ヒトと味覚の類似したC57BL系統マウスを用いて酸味受容細胞とATP受容細胞の存在を組織免疫染色で調べる。今年度は、ATP受容細胞に存在する ATP受容体のタイプを調べた。現在味蕾に存在していることが知られている分子は、7種、P2X2、 P2X3、 P2X4、 P2X7、P2Y1、P2Y4、P2Y6がある。また、細胞タイプとの相関性を見るために、II型味細胞のマーカーやIII型味細胞のマーカーとの2重染色を試みた。P2X2、 P2X3は前報とおり、味細胞ではなく味神経に存在していた。また、そのほかのATP受容体はそのタイプによって、II型味細胞とIII型味細胞の両方に存在するものとどちらかに局在するということが示唆される結果を得た。新規の重要な知見であるので再実験を重ねて行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度と25年度に行う研究計画を入れ替えて行った。それは、酸味受容体やATP受容体抗体のロットが途中で生産中止になり、他社製品にと変わったと同時に実験結果の再現性が乏しくなり、再度始めるにあたって、信頼性の高いII型味細胞とIII型味細胞マーカー分子の抗体を使用することから始めたからである。その結果、II型味細胞とIII型味細胞におけるATP受容体の存在様式に迫っている。途中のハプニングに見舞われ、結果として公表するには十分とは言えず、さらに実験を重ねて確証をしなければならないが、順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に行った実験を確証するために、繰り返しおこなう。 酸やATP応答細胞に、酸味受容体抗体とATP受容体抗体単染色による条件検討を行った後に、酸味受容体抗体とATP受容体抗体で2重染色を行う。どのATP受容体が実際に機能しているか不明な段階であるのですべてにおいて検討予定である。得られる結果は、2つの抗体で染まった細胞がわかれる場合、重なる場合が想定される。ATP受容体のタイプ別に分類し、酸味受容をする細胞に存在するATP受容体は、わずかにみられた酸とATP両方を受容する細胞で機能していると考えられる。細胞応答を測定する場合単離せねばならないため基底膜の応答(味受容ではない)をひらう可能性が十分ある。そのため、酸味受容細胞に存在するATP受容体に着目して研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ATP受容体抗体のロットが途中で生産中止になり、他社製品にと変わった。その時に作成方法が異なったため、2重染色を行うと、非特異的な染色がみられた。単染色から再度条件検討を始めるところから始めたため、研究が遅れた。そこで、信頼性の高いII型味細胞とIII型味細胞マーカー分子の抗体を使用することを導入した。そのため、24年度と25年度の計画が前後し、現在精力的に推し進め研究の遅れがほぼない状態までとりもどしつつある。研究経費的に25万弱次年度に持ち越されたが、抗体のロット免疫染色のための1次抗体(約6万/本x2本)、2次抗体(5万/本x2本)および染色に必要な試薬は次年度早々に購入予定である。今年度の予定の研究は滞りなく行うことにめどがついたため、実験は滞りなく遂行できると考えられるので、予算は当初通り使用する計画である。
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