2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580181
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 由佳子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60212156)
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Keywords | 味覚 / マウス / 味受容細胞 / 情報変換 |
Research Abstract |
五感の中の視覚・嗅覚・味覚は、類似の機構で感知・情報変換・伝達・処理される。すなわち、Gタンパク質共役型受容体で受容され、セカンドメッセンジャーを介し、神経がその情報を中枢に伝達している。 味細胞の応答頻度が味神経応答頻度と一致しないことから、その途中になんらかの情報の整理整頓が行われていると考えるのが一般的である。しかし味蕾のなかに4種の味細胞が存在しI型はグリア様、II型は甘味・苦味・うま味受容、III型は酸味受容、IV型は前駆細胞と考えられ情報が中枢に送られていく過程にそのような情報処理の過程を考えるのは困難である。申請者はこれまでの研究の成果からIII型味細胞には酸味受容する細胞のほかに II型味細胞が放出するATPを受容する細胞が存在するという成果を得、さらに本研究においては、ATP受容に関わる受容体の同定と細胞における存在場所に関して明らかにし味情報の整理を明らかにすることを目的とする。本研究を通じて、ヒトと味覚の類似したC57BL系統マウスを用いて酸味受容細胞とATP受容細胞の存在を組織免疫染色で調べる。 手法としては、酸味受容体抗体とATP受容体抗体で2重染色を行うこと、それらの細胞の酸やATPに対する応答性を測定し、付き合わせて解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験の最重要項目である酸味受容細胞の免疫組織学的染色において良い抗体が得られていない。他の論文で用いている抗体は1社のみであるのでその抗体をロットを変えて現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の研究計画においてノックアウトマウスが作成されていればそれを利用するはずであったが、現在利用可能なマウスは作成されていない。この研究の要となるPKD2L1の分布と応答の比較検討を行えると、現在遅れている酸やATP応答細胞に、酸味受容体抗体とATP受容体抗体単染色による条件検討を行った後に、酸味受容体抗体とATP受容体抗体で2重染色が行える。得られる結果は、2つの抗体で染まった細胞がわかれる場合、重なる場合が想定される。ATP受容体のタイプ別に分類し、酸味受容をする細胞に存在するATP受容体は、わずかにみられた酸とATP両方を受容する細胞で機能していると考えられる。細胞応答を測定する場合単離せねばならないため基底膜の応答(味受容ではない)をひらう可能性が十分ある。そのため、酸味受容細胞に存在するATP受容体に着目して研究を進める。そのことによって、ATP受容体の細胞タイプ別・機能別分類が行える。さらにターゲットATP受容体がII型味細胞と接するところに存在していることを確認する。そのために組織をもちいて電子顕微鏡によって金コロイド免疫染色を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
酸味受容体抗体の染色が特異性が低いとの指摘があり、抗体を探した。また、酸味受容体の抗体染色条件にかなり時間を費やしたため、計画が遅れたことによる。さらに、酸味受容体交代の信頼確認のためにIII型受容体のマーカー抗体を使っての確認作業も行ったため。 信頼性の高いII型味細胞とIII型味細胞マーカー分子の抗体を使用することを導入した。また、酸味受容体の新ロットを購入し現在精力的に推し進め研究の遅れがほぼない状態までとりもどしつつある。研究経費的に91万次年度に持ち越されたが、物品費に関しては当初通り使用している。差額が生じた主な原因は旅費と謝金であり国際学会での発表が日本であったこと、論文や発表準備の経費が少なかったことによる。それらは今年度使用予定であり、予算は当初通り使用する計画である。
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