2012 Fiscal Year Research-status Report
酢酸の骨格筋におよぼす作用を介した抗肥満・抗老化の効果に関する研究
Project/Area Number |
24580195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
山下 広美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70254563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木本 真順美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (40108866)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 酢酸 / 脂肪燃焼 / AMPK |
Research Abstract |
これまでの研究で、肥満の病態動物に酢酸を摂取させると、体脂肪蓄積・肥満を抑制することを示してきた。本年度の研究では酢酸の骨格筋における作用に焦点を絞り、ラットに酢酸を継続的に摂取させた場合の骨格筋における脂肪燃焼ならびにミトコンドリア生合成関連因子の解析、および酢酸摂取に運動トレーニングを加えた場合の効果を検討した。6週齢のSD系雄ラットを安静期に水を投与するrest-water群、酢酸を投与するrest-ace群、運動前に水を投与するwater-ex群、運動前に酢酸を投与するace-ex群に無作為に分け、2週間の予備飼育後、蒸留水または酢酸を週5日間4週間にわたり投与し、さらに運動負荷(18 m/分、30分間)を行った。4週間後に運動耐久性試験を行った後に解剖し、腹腔内脂肪量の測定、ならびに骨格筋を採取し、骨格筋におけるAMPK、ミオグロビン、GLUT4、PGC-1α、troponinI等のmRNAおよびタンパク質の発現量を解析した。 酢酸を摂取すると水摂取に比較して腹腔内脂肪量の減少と体重増加の抑制がみられた。また耐久性運動下での脂肪の利用促進、グルコースの利用低下が見られた。酢酸摂取に運動トレーニングを加えると、運動トレーニングのみに比較して運動継続時間が増加し、運動中の燃料としてグルコースの利用の低下および脂肪の利用が促進した。酢酸摂取に運動トレーニングを加えた場合、酢酸摂取のみ、運動トレーニングのみに比較して腓腹筋では、troponinI、ミオグロビン、cytochrome cおよびGLUT4等の遅筋線維マーカー遺伝子が増加し、ヒラメ筋ではtroponinI、cytochrome cの増加、腹筋ではPGC-1α、troponinI、ミオグロビンおよびGLUT4の発現が増加していた。これより酢酸摂取と運動トレーニングによって、骨格筋における遅筋化が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、酢酸の骨格筋における作用に焦点を絞り、 以下の(1)~(4)を目的としている。即ち、(1) ラットに酢酸を継続的に摂取させた場合の骨格筋における脂肪燃焼ならびにミトコンドリア生合成関連因子の解析、(2)酢酸摂取と運動による効果の比較検討、(3)高週齢動物の骨格筋における酢酸の影響、特に酢酸の抗老化作用の解析、(4)骨格筋における酢酸の作用機序の解明、を目的としている。現在までに、(1)および(2)について検討を行っている。 平成24年度の研究において、酢酸をラットに継続的に摂取させると骨格筋における遅筋化が進行することが示唆されたことより、平成25年度にはその作用機序について明らかにすると共に、上記(3)で示した高齢動物の骨格筋における作用について明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究に引き続き、若齢動物における酢酸の影響についてその作用機序に焦点を置き検討すると共に、高齢動物における影響を検討する。酢酸を摂取した動物の骨格筋における脂肪燃焼関連因子の解析を行うために、1ヶ月間酢酸投与したラットを解剖して、ひ腹筋およびヒラメ筋、および腹筋を採取し、遺伝子発現およびタンパク質発解析、ミトコンドリア酵素活性および呼吸活性を測定する。酢酸による若齢動物の骨格筋における影響を、運動負荷した場合と比較検討する。エアタイトトレッドミルMK-680ATを用いてラットに運動負荷を行ったラットの骨格筋を採取して、タンパク質および遺伝子発現動態を解析する。得られた結果より両条件の相似および相違を評価する。一方、高齢になると脂肪燃焼の低下、さらに脂肪蓄積増加により肥満の割合が増加すると考えられる。最近AMPKの活性化により長寿遺伝子として知られるSIRT1の活性化が起こることが報告されている。酢酸によりラット骨格筋ではAMPKが活性化することから、高齢動物においてもAMPKが活性化されれば抗老化の効果が期待できる。そこで先ず、40~50週齢の高齢ラット骨格筋の性状を解析し、若齢の場合と比較検討する。次に高齢動物に酢酸を摂取させた場合の骨格筋の動態および寿命延長に対する効果を観察し酢酸の抗老化作用について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨格筋における遺伝子発現動態および骨格筋特異的タンパク質の発現動態について解析するために、以下の実験に必要な遺伝子解析用プライマー、抗体、ならびに関連試薬の購入に研究費を使用する。遺伝子発現解析は抽出した総RNAからcDNAを合成して定量的リアルタイムPCR法により行う。測定対象として脂質代謝関連タンパク質(AMPKa1および2、β酸化系酵素)、ミトコンドリア生合成関連因子PGC-1a、シトクローム酸化酵素、遅筋線維タンパク質トロポニIおよび速筋線維タンパク質MHCIIa, MHCIIb、骨格筋分化関連因子(MEF2、マイオジェニン)などの遺伝子発現動態を調べる。またタンパク質の解析はウェスタンブロット法を用いて、AMPKならびにPGC-1aの発現および活性化レベルを測定する。AMPKの活性化(リン酸化)は172Tのリン酸化抗体を用いる。PGC1aの活性化はリン酸化および脱アセチル化により達成される。これより、抗PGC1a抗体により免疫沈降後、リン酸化抗体ならびに抗アセチルリジン抗体を用いて、リン酸化およびアセチル化・脱アセチル化を評価する。ミトコンドリア酵素はクエン酸合成酵素活性を測定する。ミトコンドリアの呼吸活性は、ミトコンドリアを単離したのち酸素電極を用いて行う。以上の研究計画に必要なDNA、抗体、酵素、試薬、器具類を購入する。
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Research Products
(16 results)