2013 Fiscal Year Research-status Report
紫外線被曝シグナルによるメタボリックシンドロームへの影響の網羅的解析
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24580199
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
大石 祐一 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (00313073)
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Keywords | 紫外線 / メタボリックシンドローム / マイクロアレイ / アディポネクチン / 急性期タンパク質 |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームには、様々なホルモン、サイトカインなどの因子が関与している。一方、皮膚は、光の影響を受ける器官の1つであり、光の中でもとくに紫外線が皮膚に与える影響については、分子レベルで詳細に研究されている。しかし、紫外線が皮膚を介して、栄養、とくにメタボリックシンドロームに関与する因子に影響を与えるか否かについては明らかになっていない。申請者は、紫外線が皮膚を介して、メタボリックシンドロームに関与する因子にどのような影響を与えるのかを遺伝子の網羅的解析法を用いて、明らかにし、また、メカニズムを解明することを本研究の目的にした。 昨年度は、皮膚に紫外線を1.6J照射させることで、皮膚、視床下部および肝臓のCGRP(Calcitonin gene-related peptide)mRNA量、肝臓でのインターロイキン(IL)‐6、急性期タンパク質(SAA)のmRNA量の増加、脂肪組織でのPPARγ、アディポネクチン、レプチンのmRNAの減少を明らかにした。 今年度は、肝臓でのSAA増加メカニズムをHepG2を用いて検討した。HepG2へのCGRP添加でSAA mRNA量が濃度依存的に増加した。また、TNFα、IL‐1βのmRNA量は変化しなかったが、IL-6mRNA量は増加した。さらに、CGRPの添加とともに、IL-6の中和抗体を添加したところ、SAAmRNA量は増加しなかった。よって、UV照射によるSAAの増加は、皮膚のCGRPの増加が神経系を介して視床下部のCGRPさらには肝臓のCGRPを増加させ、この因子がIL-6を増加させることによると考えられた。SAAの増加は、PPARγなどを低下させ、アディポネクチンを減少させる。よって、UV照射はアディポネクチンを低下させ糖尿病などを悪化させる可能性があるとともに、間接的に皮膚機能を低下させることも考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的は、紫外線照射によってアディポネクチン、急性期タンパク質の変動メカニズムを明らかにすることだった。「研究実績の概要」でも述べたように、今年度はアディポネクチンの減少、急性期タンパク質の増加のメカニズムを明らかにした。よって、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
アディポネクチン減少は肝臓でのTGF-β1の増加、さらには肝臓の線維化を惹起することが分かっている。さらにTGFβ1の増加は、線維化を増悪化させるPAI-1(plasminogen activator inhibitor-1)を増加させる。平成26年度は、肝臓でのTGF-β1およびPAI-1の変動とそのメカニズムを明らかにする。また、メタボリックシンドロームに関与するモデル動物、たとえば高血糖、高血圧ラットに紫外線を照射し、CGRP,IL-6,急性期タンパク質などの着目した遺伝子の変動をreal time PCR法等を用いて測定しする。さらに変動したタンパク質量を通常に戻す食事条件、たとえば摂取脂質量などを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度に動物実験などを行うため、その費用が予定以上に必要と考え、次年度使用額を生じさせた。 皮膚への紫外線照射による肝臓でのTGF-β1やPAI-1への影響を細胞レベルで検討するため、これらタンパク質およびその抗体を購入する。また、高血糖や高血圧などのモデル動物の実験を行うに当たり、CGRP,IL-6,急性期タンパク質などのmRNA量あるいはタンパク質量を測定するための試薬、器具を購入する。
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