2013 Fiscal Year Research-status Report
ニンニク臭気前駆体―多糖/タンパク質複合系による次世代型機能性食品の創製
Project/Area Number |
24580201
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
熊谷 日登美 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20225220)
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Keywords | ニンニク臭気前駆体 / アリルシステインスルフォキシド / こく味 / 電子レンジ加熱 / 嗜好性向上 |
Research Abstract |
ニンニク臭気前駆体物質であるS-allyl-L-cysteine sulfoxide (ACSO)は、in vitroで生理活性を発揮するばかりでなく、こく味を有するとされている。従って、ACSOを高濃度に含有するニンニク抽出物には、健康増進効果ばかりでなく、嗜好性向上効果も期待できる。 そこで、種々の加熱法を用いて、ニンニク中のアリイナーゼを失活させ、ACSOを高濃度で保持する条件を検討した。次に、最適な処理条件で得られたニンニク鱗茎からACSOを高濃度に含有する抽出物を調製し、その嗜好性を評価した。 まず、加熱によるアリイナーゼ失活のため、ニンニク鱗茎を、電子レンジ、茹で、蒸し、揚げ加熱に一定時間供した。ACSOが最も残存する条件で調製したニンニク鱗茎を粉砕し、水抽出物を得た後、エタノールにより多糖類を沈殿させ、ACSO含量の増加を試みた。嗜好性については、得られた水抽出物およびエタノール処理抽出物を凍結乾燥後、ACSO濃度が一定になるように希釈し、この試料希釈液の匂いやこく味を評価した。また、各希釈液を湯煎中で1時間加熱したものについても、同様に官能評価を行った。 ニンニク鱗茎を、電子レンジ加熱で20秒、茹で加熱で45秒、蒸し加熱で60秒、揚げ加熱で30秒処理した場合において、アリイナーゼ活性が最も低くなり、ACSO残存量が高くなった。特に、電子レンジ加熱を20秒行った試料で、最もACSOが残存していた。 電子レンジ加熱後のニンニク鱗茎から得られた水抽出物は硫黄臭がしたが、この溶液を湯煎で加熱することにより、硫黄臭は低下し、こく味は高くなった。エタノール処理抽出物では甘味の増強作用が認められ、この溶液を湯煎でさらに加熱することにより、甘味の増強の程度は減少したが、その一方で、塩味や旨味の増強作用は高くなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは、合成したS-allyl-L-cysteine sulfoxide(ACSO)を用いて研究を行ってきたが、この成果を食品に応用するためには、ACSOを高濃度に含有するニンニク抽出物を作製する必要があった。しかし、酸・アルカリ・有機溶媒等の試薬を用いずに酵素アリイナーゼを失活できるか、アリイナーゼを失活させてニンニクからACSOを簡便に抽出できるのかが課題であった。アリイナーゼ失活法の確立およびACSO含有抽出物の調製ができたので、本年度の目的は達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ACSO高含有のニンニク抽出物をゼラチンや寒天などの多糖と混合し、その粘弾性をレオメーターにより測定する。また、超音波パルスドップラー法により、ゼラチンや寒天ゲルの嚥下特性を測定する。さらに、ACSO高含有のニンニク抽出物を種々の濃度でタンパク質や多糖のゾル/ゲルに混合し、塩味、甘味、旨味の増強効果の程度を官能検査により評価する。
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