2013 Fiscal Year Research-status Report
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24580202
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
竹中 麻子 明治大学, 農学部, 教授 (40231401)
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Keywords | vitamin E / anxiety / HPA axis / glucocorticoid |
Research Abstract |
申請者は、ビタミンE欠乏によってラットの不安行動が増加することを見出し、この現象を更に解析した結果、「ビタミンE欠乏による酸化ストレスの亢進がグルココルチコイド分泌増加を引き起こし、不安行動を増加させる」という不安行動の新しい誘導機構を想定するに至った。グルココルチコイド分泌は視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)で制御されることが知られている。平成24年度に引き続き平成25年度は、ビタミンE欠乏がHPA軸の各応答段階に及ぼす影響を、通常食あるいはビタミン欠乏食で4週間飼育したWistar系雄ラットを用いて検討した。また、ビタミンE欠乏が海馬の神経新生におよぼす影響を、組織切片を用いて検討した、 通常食あるいはビタミンE欠乏食を4週間摂取したWistar系雄ラットにHPA軸の最上流因子であるCRF(コルチコトロピン放出因子)を腹腔内に投与して、血中グルココルチコイド分泌応答を解析した。その結果、CRF投与によるグルココルチコイド分泌の増加が認められたが、この増加がビタミンE欠乏でさらに促進されることはなかった。ビタミンE欠乏によってストレスに応答したグルココルチコイド分泌が増加すること(平成24年度)、一方ACTH投与によるグルココルチコイド分泌は増加しないこと(平成24年度)を考慮すると、ビタミンE欠乏時はストレスによるCRF分泌を促進する、あるいはグルココルチコイドによるHPA軸のフィードバック抑制を低下させる可能性が示された。 さらに、グルココルチコイドによるHPA軸のフィードバック抑制に重要な海馬がビタミンE欠乏でどのような影響を受けるのかについて、組織染色の手法を用いて解析。海馬の神経細胞新生の解析を行ったが、ビタミンE欠乏による影響は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度以降の主要な研究目的は、ビタミンE欠乏時にHPA軸に生じる変化を明らかにすることであった。この目的を達成する実験系として、HPA軸を活性化させる各因子をラットに投与してグルココルチコイド分泌におよぼす影響を解析した。その結果、ビタミンE欠乏時にHPA軸に生じる変化を視床下部からのCRF分泌あるいはグルココルチコイドによるHPA軸のフィードバック抑制に限定することができた。 さらに、グルココルチコイドによるHPA軸のフィードバック抑制に重要な海馬について、組織切片を用いた新生神経細胞の解析に着手した。まず、脳組織切片の作成や組織染色・免疫組織染色の技術の導入を行い、これを完了した。今年度の結果では海馬の神経新生に変化は認められなかったが、次年度以降、海馬のグルココルチコイド受容体などの免疫組織染色を行う準備を整えることができた。 さらに、ビタミンE欠乏など他の酸化ストレスがHPA軸におよぼす影響や、精神的あるいは物理ストレスが不安行動やHPA軸活性に及ぼす影響の検討を、平成25年度に開始している。脳の組織染色の技術と組み合わせることにより、酸化ストレスによる不安増加の解析が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ビタミンE欠乏により脳内で生じる変化について解析を行う。海馬と視床の組織切片を用いて、グルココルチコイド受容体の検出、酸化ストレス状態の解析、視床下部のCRF発現解析を行う計画である。この結果から、ビタミンE欠乏によるHPA軸活性変化に関与しうる脳内の変化を検出する。(2)ビタミンC欠乏動物(不安行動が増加する)でも、ビタミンE欠乏と同様のHPA軸の変化が生じているかどうかを検討する。副腎除去後の不安行動を解析し、ビタミンC欠乏による不安行動増加にもグルココルチコイド分泌が重要であるかどうかを検討する。さらにストレスに応答したHPA軸各段階のホルモン分泌を検討する。この結果から、ビタミンC欠乏時にグルココルチコイド分泌が増加する機構を明らかにする。(3)他の酸化ストレス動物でもビタミンE欠乏と同様の変化が生じているかどうかを検討する。グルタチオン合成阻害剤であるBSOを投与したラット、ラジカル発生剤であるAAPH、AMVN、PQなどの薬剤を投与したラットを用いて不安行動の解析、HPA軸活性化の変化を解析する。(4)HPA axisに生じる変化が抗酸化剤で抑制可能かどうかを検討する。ビタミンE欠乏食に種々の抗酸化剤(ビタミンC、水溶性ビタミンEであるTrolox、SH基をもちグルタチオン合成基質ともなるα-リポ酸、ポリフェノール化合物であるケルセチン等)を添加してラットに与え、HPA 軸の変化および不安行動増加が抑制されるかどうかを検討する。(5)精神的ストレス(社会的隔離、早期離乳、他個体からの攻撃など)あるいは物理的ストレス(拘束ストレスなど)で不安が増加したラットのHPA軸の変化を解析する。この結果から、ビタミンE欠乏モデルで明らかになった不安増加機構が、他の多くの不安増加現象にもあてはまるのかどうかを明らかにする。
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