2014 Fiscal Year Research-status Report
栄養素・食品成分からDNA合成酵素分子種阻害物質の探索と新規な健康機能性の解析
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24580205
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
水品 善之 神戸学院大学, 栄養学部, 准教授 (20307705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入野 康宏 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10415565)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA合成酵素 / 酵素阻害剤 / クルクミン / ナフトキノン / 抗炎症活性 / メタボローム解析 / RNA干渉 / 健康機能性食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(平成26年度)は、当初予定していた3年間という研究期間の最終年であった。今年度に実施した主な研究は、次の3つである。 (1)これまでに見いだした栄養素・食品素材由来の哺乳類DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ、pol)分子種に対する選択的阻害剤のうち、ウコン(ターメリック)に存在するpolλ特異的阻害活性を有する『クルクミン』、およびビタミンK3誘導体である『ナフトキノン(NQ)』に焦点をあてて、メタボローム解析(代謝物変化の網羅的解析)を実施した。NQにはpolλ阻害活性があることを見いだして報告している【Int. J. Oncol. (2013) 42, 793-802】。メタボローム解析では、マウス・マクロファージであるRAW264.7細胞を用いて、①polλ阻害剤無添加のコントロール群、②リポ多糖(LPS)で炎症刺激を与えた群、③polλ阻害剤を添加した群、④LPS+polλ阻害剤を添加した群、以上の4群について代謝産物の分析(同定と定量)および各群間の比較を行った。 (2)RAW264.7細胞を用いて、RNA干渉(RNAi)によってpolλのmRNA発現量をノックダウンさせることによる炎症マーカーのTNF-α(Tumor Necrosis Factor-α)および炎症シグナルの下流にあるNF-κB(nuclear factor-κB)のmRNA発現量の変化をリアルタイムPCRで解析した。 (3)栄養素・食品素材、特に食品廃棄物・副産物から哺乳類pol分子種選択的阻害剤の探索を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)哺乳類pol分子種の精製: 哺乳類のpol分子種は、polα~νの15種類の存在が知られている。pol遺伝子を導入した組換え細胞を構築しての遺伝子工学的手法および生化学的手法により、活性があり精製された11種類(polα、β、γ、δ、ε、η、ι、κ、λ、μ、TdT)のpolタンパク質の調整に成功した。これによりpol分子種選択的阻害剤の探索が可能になった。 (2)栄養素・食品素材から哺乳類pol分子種選択的阻害物質の探索: 今年度(平成26年度)の本研究では、10物質以上のpol分子種選択的阻害物質を見いだして、論文発表14報(英文13報、邦文1報)、学会発表26回を行った。 (3)RAW264.7細胞におけるRNA干渉によるpolλノックダウン解析: RAW264.7細胞は抗原提示細胞であり、LPSによってTNF-αの産生が亢進されて炎症が誘発される。TNF-αは炎症シグナルの動かしてNF-κBを活性化させて核内移行を促す。これまでに、LPSによって細胞内で活性酸素種(ROS)が上昇し核内のDNA損傷が増加するので、DNA修復・組換え型であるpolλのmRNAやタンパク質の発現量が増大することをreal-time PCR法やWestern-blot法で明らかにしている。今回は、RNA干渉によりpolλのmRNA発現が70%ノックダウンされると、細胞増殖には全く影響しないが、TNF-αおよびNF-κBの産生(mRNA量)がそれぞれ35%、30%抑制されることを見いだした【Arch. Biochem. Biophys. (2015) 573, 100-110】。 (4)RAW264.7細胞を用いてのメタボローム解析では、LPS添加による代謝物(多糖類、アミノ酸、有機酸)の顕著な変化は見られなかった。また、polλ特異的阻害剤であるクルクミンおよびNQの添加においても無添加のコントロール群と比較して、代謝物量の変化は見られなかった。同様にLPS+クルクミンまたはNQの同時添加においても無添加のコントロール群と比較して代謝物の顕著な変化は見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)栄養素・食品素材から哺乳類pol分子種に対する選択的阻害剤の探索研究: これまでの研究の継続であり、pol分子種研究の分子プローブ(化学的ノックアウト剤)として利用可能な低分子天然物を見いだす。 (2)polλ阻害活性に基づいた抗炎症/抗アレルギー作用の作用機序(分子メカニズム)の解析: これまでに見いだしたpolλ特異的阻害剤であるクルクミンなど栄養素・食品素材由来のpolλ阻害剤を用いて、マウス・マクロファージであるRAW264.7細胞におけるマイクロアレイ解析(mRNA発現レベルの網羅的解析)を実施する。メタボローム解析では最終の代謝物を同定・定量していたが、顕著な結果が見られなかった。そこで、本来ならば平成27年3月末をもって完了するはずの本研究を1年間延長することで、マイクロアレイ解析を実施する。その際には炎症関連のマーカー・タンパク質だけでなくアレルギー関連のマーカー・タンパク質にも注目して、polλ阻害剤による炎症シグナルおよびアレルギーシグナルの経路への影響を調査する。
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Causes of Carryover |
これまでに見いだした栄養素・食品素材由来の哺乳類polλ特異的阻害活性を有する『クルクミン』、およびビタミンK3誘導体である『ナフトキノン(NQ)』に焦点をあてて、マウス・マクロファージであるRAW264.7細胞におけるメタボローム解析(代謝物変化の網羅的解析)を実施した。しかし、polλ阻害活性と抗炎症活性を関連づけるデータが得られなかった。メタボローム解析に替わる網羅的解析を実施するために1年間の延長をする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
哺乳類polλ特異的阻害活性を有する『クルクミン』、およびビタミンK3誘導体である『ナフトキノン(NQ)』について、マウス・マクロファージであるRAW264.7細胞におけるマイクロアレイ解析を実施する。具体的には、①polλ阻害剤無添加のコントロール群、②リポ多糖(LPS)で炎症刺激を与えた群、③polλ阻害剤を添加した群、④LPS+polλ阻害剤を添加した群、以上の4群について炎症シグナルやアレルギーシグナルに関連する因子(タンパク質)のmRNA発現量について、各群間の比較を行う。
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[Presentation] A Novel Radiosensitizer, Monogalactosyl diacylglycerol, Enhanced the Cytotoxic Effects for the Pancreatic Cancer2014
Author(s)
○H. Akasaka, R. Sasaki, I. Takayama, M. Nakahana, N. S. Sulaiman, D. Miyawaki, K. Yoshida, Y. Ejima, H. Uezono, Y. Mizushina
Organizer
The 15th Asian Oceanian Congress of Radiology (AOCR 2014)
Place of Presentation
神戸ポートピアホテル
Year and Date
2014-09-24 – 2014-09-28
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[Presentation] A Novel Radiosensitizer, Monogalactosyl diacylglycerol, Enhanced the Cytotoxic Effects for the Pancreatic Cancer2014
Author(s)
○H. Akasaka, R. Sasaki, N. Mukumoto, M. Nakayama, N.S. Sulaiman, D. Miyawaki, K. Yoshida, Y. Ejima, H. Uezono, Y. Mizushina
Organizer
ESTRO 33
Place of Presentation
Vienna, Austria
Year and Date
2014-04-04 – 2014-04-08
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