2012 Fiscal Year Research-status Report
国産黒麹菌Aspergillus nigerにおけるフモニシン生合成経路の解明
Project/Area Number |
24580208
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
中川 博之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品安全研究領域, 主任研究員 (30308192)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 公徳 千葉大学, 真菌医学研究センター, 助教 (40345004)
横山 耕治 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (80092112)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
千葉大学真菌医学研究センター保存菌株より代表的な国産A. niger菌株を選抜し、培養後、フモニシン産生の有無を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて調べた。その結果、培養液中にフモニシンB2が検出され、同菌株のフモニシン産生性が確認された。また、フモニシンB2の異性体であるフモニシンB1およびフモニシンB3は検出されなかった。一方、この株についてフモニシン生合成遺伝子クラスター内の代表的な遺伝子として知られるfum8の有無をPCRとサザン解析を用いて調査したところ、fum8と推定される遺伝子(以下fum8遺伝子とする)が存在することが確認された。そこで、本菌株においてfum8遺伝子機能がフモニシン産生性に関係しているかを調べるため、fum8遺伝子破壊株を作出し、その性状を解析した。その結果、fum8遺伝子破壊株ではフモニシンB2産生が完全に失われていることが確認された。また、fum8遺伝子破壊株は生育速度、ストレス感受性など、フモニシンB2産生以外の表現型については野生型株との相違点が見出されなかった。これらの知見から、fum8遺伝子はフモニシンB2産生のみに関与する遺伝子であることが示唆された。現在、遺伝子破壊株にfum8遺伝子を再導入することにより破壊遺伝子を修復した再導入菌株を複数作製し、これらの再導入株におけるフモニシン産生の回復の確認試験を行っている。従来、fum8がフモニシンB2合成クラスターの一部を構成することは報告されているが、遺伝子破壊株の作製によりフモニシン産生との因果関係を直接証明した報告はなされておらず、本研究成果が最初の例である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成24年度の研究計画は、国産 A. nigerにおけるフモニシン産生性の確認と培養条件の検討と、国産A. nigerにおけるフモニシン合成遺伝子破壊株の作製であったが、両者とも平成24年度内に達成されている。特に遺伝子破壊株の作製は困難であることが予想されたが、実験担当者の尽力によりフモニシンB2の産生性が消失した破壊株を取得することができた。現在、遺伝子破壊株にfum8遺伝子を再導入することにより破壊遺伝子を修復した再導入菌株の作製と、これら再導入株におけるフモニシン産生の回復の確認試験を行っているが、候補株は複数取得されてきており、平成25年度の計画も順調に履行している。以上に鑑み、本研究計画は順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した通り、平成25年度はフモニシン合成遺伝子破壊株が産生する生合成中間体の同定、およびフモニシン合成遺伝子再導入株におけるフモニシン産生性再現の確認、を行う。フモニシン生合成経路においてはFB4やFB6と呼ばれる中間体が存在することが報告されているが、これらに該当する中間体が検出されれば、国産A. niger株のフモニシン生合成においてどのような酵素が関与しているかを特定し、生合成経路を推定できる。また、fum8遺伝子の再導入によってフモニシンB2の産生性が回復すれば、同遺伝子がA. nigerによるフモニシンB2合成に必須であることが証明される。これらの実験のためには遺伝子破壊株の取得が必須であるが、既にfum8遺伝子破壊株を取得しているため、十分実施可能であると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(1 results)