2013 Fiscal Year Research-status Report
刈り払いは控えめに:ケヤキ稚樹の生残と樹形発達に与える雑草木切除の効果
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24580210
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
國崎 貴嗣 岩手大学, 農学部, 准教授 (00292178)
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Keywords | ケヤキ / 雑草木 / 刈り払い |
Research Abstract |
刈り払い法の違いがケヤキの生残と樹形発達に与える効果を調べるため,前年度までに設定した計71個の調査枠で,4月から10月まで2週間おきにケヤキの樹高と生死を確認した。また,展葉前の4月と着葉期の7月,落葉期の10月に,調査地における地上高2mの相対光量子束密度を推定した。調査により,2013年には当年生実生が少なかったこと,相対光量子束密度が5%未満と低くてもケヤキ稚樹や実生は生存可能であること,相対光量子束密度が10%と比較的高くても,5%未満の調査枠では見られなかった雑草木の繁茂により,ケヤキ稚樹や実生の樹高成長速度は低いことを確認した。これらの結果は,広葉樹林化の目的樹種としてケヤキが適しているものの,その健全な成長には雑草木の制御が必要不可欠であることを示唆する。 刈り払い法の違いが雑草木群落の地上部構造に与える影響を調べるため,計71個の調査枠で,4月から10月まで2週間おきに雑草木群落の被度と高さ0.2m以上の木本の樹高を測定した。相対光量子束密度が30%を超える調査枠では雑草木の繁茂が著しく,木本の樹高成長速度も,相対光量子束密度10%や5%未満の調査枠より,顕著に高かった。全刈りと坪刈りを比較すると,全刈り後の雑草木再生は遅かった。樹高の低いケヤキ稚樹の成長にとっては,全刈りによる光環境の改善が貢献していると推察される。ただし,樹高0.3m以上と比較的樹高の高いケヤキ稚樹の成長にとっては,坪刈りでも成長促進に貢献していると考えられる。 刈り払いの作業功程を調べるため,相対光量子束密度が30%を超える調査枠で,切除した雑草木の乾燥重量を木本・草本別に測定した。6月下旬の刈り払いでは木本が圧倒的に多いものの,8月初旬の二回目の刈り払いでは,逆に草本の重量が多くなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
刈り払い法の違いがケヤキの生残と樹形発達に与える効果については,実施計画どおりの項目について定期的に調査できているため,おおむね順調に進展している。 刈り払い法の違いが雑草木群落の地上部構造に与える影響については,相対光量子束密度が相対的に低い調査枠で,予想よりも雑草木が繁茂しなかったため,地下部構造の調査を次年度に延期した。しかし,雑草木の地上部については実施計画どおりに定期的に調査できている。これらのことから,おおむね順調に進展している。 刈り払いの作業功程については,実施計画どおりの項目について定期的に調査できているため,おおむね順調に進展している。 以上の3つの研究項目を総合すると,平成25年度も,おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
刈り払い法の違いがケヤキの生残と樹形発達に与える効果を調べるため,実施計画のとおり,計71個の調査枠で,4月から10月まで2週間おきにケヤキの樹高と生死を確認する。そして,11月に,全刈り区,坪刈り区,対照区から5本ずつ,樹高の高いケヤキ稚樹を掘り取り,幹枝の長さと分岐パターン,およびT/R比を調査する。 刈り払い法の違いが雑草木群落の地上部と地下部の構造に与える影響を調べるため,実施計画のとおり,計71個の調査枠で,4月から10月まで2週間おきに雑草木群落の被度と樹高を測定する。そして,全刈り区,坪刈り区,対照区から調査枠を5個ずつ選び,掘り取りにより根系を調査する。 刈り払い法の違いと作業功程との関係を調べるため,実施計画のとおり,雑草木の切除にかかる時間を測定し,切除した雑草木の乾燥重量を種別に測定する。 研究の総括として,論文2報を作成し,投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは,大学運営活動(本務)にかかる時間的制約により,25年度の森林調査を1回減らしたためである。これにより,調査補助にかかる謝金約5千円を使用しなかった。 26年度の研究費80万5千円については,物品費25万円,旅費20万円,謝金25万5千円,その他10万円を目安に使用する。物品費25万円については,森林調査用消耗品や論文別刷を購入するために充てる。旅費20万円については,日本森林学会大会(札幌)参加で11万円,資料収集(東京2回)で9万円を充てる。謝金25万5千円については,森林調査補助,樹木試料計測補助,データ解析補助にかかる謝金に充てる。その他10万円については,論文校閲費(2報分)に充てる。
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