2013 Fiscal Year Research-status Report
ブナ林における個体ごとの繁殖と防御のトレード・オフ関係の検証
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24580211
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小山 浩正 山形大学, 農学部, 教授 (10344821)
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Keywords | ブナ / 豊凶 / 防御 / 繁殖 / トレード・オフ |
Research Abstract |
平成25年度の山形県庄内地方のブナ林は中規模な開花年となり、個体ごとに繁殖程度が大きく異なっていた。そこで、山形大学農学部附属演習林(以降、演習林分)と山形県鶴岡市櫛引地域の国有林内(以降、櫛引林分)の林齢約100年のブナ二次林において、林道沿いの72個体を対象として開花量を調べた。枝先50cmあたりの平均雌花序数は0~20個と個体間で大きく異なっていることが認識された。すなわち中規模な開花年には、個体により大量に開花する個体と開花の少ない個体が混在することが明らかになった。これらの個体のうち、高所作業車により高位の枝が採取可能だった12個体を対象に、それぞれ大量開花個体、中規模開花個体、非開花個体に分類し、それぞれの葉の食害程度および物理的・化学的被食防御の違いを調べた。 各個体から採取した葉の食害程度を0~4までの5段階で評価したところ、非開花個体の平均が1.15であったのに対して、大量開花個体の平均は3.05と、開花量の増加に応じて食害を受けやすい傾向がみとめられた。これらについて物理的防御の指標として葉身の硬さを測定したが、開花量による違いが検出されなかった。一方、化学的防御の指標とした縮合型タンニン量は、非開花個体で10.0%と、開花が中程度および多い個体の4.6~5.6%よりも高い値を示した。総フェノール量もほぼ同様の傾向を示した(12.5%vs. 7.9~9.3%)。このように、ブナでは繁殖量が多いと、防御への投資が少なくなり、それが食害程度を増やす一因と考えられた。すなわち繁殖と防御(化学的防御)との間には光合成産物をめぐるトレード・オフ関係があり、それが当年の開花量と葉の食害程度にも影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、研究対象として開花を観察してきた72個体について、平成25年度も観察を継続した。本年は中規模な開花・結実年に当たったために、個体による繁殖量の違いを同一年内で観察することができた。ただし、同年7月の大雨による出水で、対象としていた林分のうち演習林分へ通じる林道が大規模に崩壊したため、高所作業車による枝のサンプリングが不可能となり、櫛引林分のみの採取に留まった。このため対象個体数において当初の計画を達成できなかった。しかし、残りの対象個体に対する食害・防御等の解析から、繁殖と防御に関わるトレードオフ関係が示唆されたので、おおむね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象としている72個体の観察個体について、平成26年度も開花の観察を継続する。平成25年度に開花した個体と開花しない個体に別れたので、それが今年度の繁殖にどのように影響するか注目して観察を実施する。平成25年度の生育期間終了時において、枝先に冬芽サイズを個体ごとに測定していたので、冬芽サイズと翌年の展開シュートの成長を前年度の開花程度との関係で解析する予定です。同様に、防御形質についても平成25年度と同じ個体に対して測定して、経年変化を観察する。平成25年度に決壊した演習林分の林道の復旧程度を見極めながら、対象個体を拡充するか否かを判断する予定である。
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Research Products
(7 results)