2014 Fiscal Year Annual Research Report
琉球列島に分布する有用樹木の繁殖資源の配分と安定同位体による豊凶メカニズムの解明
Project/Area Number |
24580224
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
谷口 真吾 琉球大学, 農学部, 教授 (80444909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諏訪 竜一 琉球大学, 農学部, 准教授 (30560536)
松本 一穂 琉球大学, 農学部, 准教授 (20528707)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 開花結実 / 安定同位体 / 転流 / 結実豊凶 / 種子生産 / 繁殖生理 / シンク能 / リュウキュウコクタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は琉球列島が分布の中心域である有用樹木のリュウキュウコクタンを供試し、果実豊凶の年変動が生じるメカニズムを解明した。最終年はリュウキュウコクタンの繁殖枝に環状剥皮と摘葉処理を組み合わせた8水準の処理区別に果実採取後、NC元素分析器で炭素含有率を定量し果実成熟に必要な炭素量を推定した。 3年の研究期間全体の研究成果は、果実のシンク能の高い豊作年では、全摘葉した繁殖枝から50cm以内の近隣の枝より光合成産物が転流し全摘葉区の果実に供給され、近隣の枝の果実とともに、全摘葉の繁殖枝の果実も正常に成熟させることが判明した。豊作年であった2010年の0%摘葉区、50%摘葉区では、当年葉で光合成を行い、当年葉の光合成産物が果実成熟に利用された。豊作年では果実に多くの光合成産物が必要であったため、転流が起こり100%摘葉区にも当年葉の光合成産物が供給された。100%摘葉区では転流によって受け取った当年葉の光合成産物に加えて、自身の枝に貯蔵されていた可溶性糖やデンプンが結実に利用され、果実が成熟したと考えられた。並から凶作年であった2013年では果実のシンク能が弱かったため、どの処理区間でも転流が認められなかった。しかし、前年までに枝に貯蔵された可溶性糖やデンプンが結実に利用され、果実が正常に成熟したと考えられた。常緑樹の場合、豊作年では当年の光合成産物が主に利用されて果実が成熟するが、並~凶作年では枝内の可溶性糖やデンプンなどの貯蔵性の炭水化物が主に利用されて果実が成熟する可能性が考えられた。豊作年より結実量が劣る並作年では、貯蔵性の炭水化物が利用されて果実が成熟し、当年の光合成産物は枝の伸長成長や肥大成長に利用されている可能性が示唆された。本研究の成果は、落葉樹の資源収支モデルで提唱されている炭水化物の利用形態と異なった。繁殖資源の利用形態は、落葉樹と常緑樹では異なる繁殖戦略である可能性が推察された。
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