2012 Fiscal Year Research-status Report
火山灰混入度合いの異なる褐色森林土壌下のリン可給性と人工林の応答
Project/Area Number |
24580233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
稲垣 昌宏 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (00343781)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リン可給性 / 火山灰 / 酸性フォスファターゼ活性 / イオン交換膜 / 根圏土壌 |
Research Abstract |
火山灰中に多く含まれる遊離酸化鉄やアルミニウムは水溶性のリンと強く結合し、植物へのリン可給性を制限する。日本には火山灰由来の土壌が広範囲で分布するが、リンが主要因となって森林の成長を制限する事例はほとんど聞かれず、根系や菌根などからの有機酸や酵素の放出等によってリン獲得の補償機能が働いていることが予想される。日本の人工林が火山灰質の土壌でリンをどのようにして獲得しているかを調べるため、熊本県下の菊池(火山灰質)と鹿北(非火山灰質)の褐色森林土壌下の2試験地のヒノキ林で土壌特性と樹木の形質を調べた。表層土壌およびその根圏土壌の酸性フォファターゼ活性を比較した結果、平均(n=12)で菊池(16.5±4.59 μmol g-1 hr-1)は鹿北(9.84±2.82 μmol g-1 hr-1)より有意に活性が高かった。根圏とそれ以外の土壌での活性の違いは有意でなかった。火山灰由来の土壌では微生物バイオマス量が大きい傾向にあるため、本試験地において酸性フォスファターゼは菌根など根圏由来のものより、火山灰質の土壌により多く存在する微生物由来のものが主体となっていたものと考えられた。陰イオン交換膜法を用いた可給態リン量の測定を2012年10-11月にかけて行なったが、両試験地とも吸着されたリン量は検出限界未満であった。硝酸態窒素は検出されていたことからイオン交換膜の吸着能には問題がなく、生成されるリン量に土壌中の位置、季節による偏りがあることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験地として、凝灰岩母材で火山噴出物の影響が極めて大きい菊池試験地と変成岩由来で火山灰の影響の少ない鹿北試験地にそれぞれ2プロットづつ試験区を設定することができた。本課題においてイオン交換膜を用いた新しい可給態養分測定法の導入を試みているが、初年度において一定の測定手順を確立することができた。また、火山灰混入度合いが大きい褐色森林土において酸性フォスファターゼ活性が高いという結果が得られ、当初設定した仮説の一部を検証することができた。一方で、プロットの設定や測定手法の試行に時間がかかり、風乾土壌や植物体サンプルの回収までは出来たものの未分析項目が残っている。次年度にはそれらの結果も得られることが見込まれることから試験計画は概ね計画通り順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
可給態養分の季節的な変化を調べる。特に初年度の結果でイオン交換膜法でリンが検出されなかった理由について、測定時期と空間的な分布の点から検証を行なう。生葉および落葉サンプリングを継続し、植物体サンプル中の窒素、リン濃度の測定を行なう。火山灰由来の土壌中に含まれる全リン量と可給態リンとの関係について、文献値から知見を深める。得られた知見の一部を、国内外で学会発表を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、分析に関わる消耗品類に主に使用する。また、分析補助者への賃金に使用する。成果の公表のため、英文校閲費、投稿料、国内外の学会参加費、旅費等に使用する。
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