2013 Fiscal Year Research-status Report
微生物ナノファイバー紡糸装置における繊維排出機構の解明
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24580241
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
天野 良彦 信州大学, 工学部, 教授 (80273069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 一雄 高知大学, 教育研究部, 教授 (40152417)
水野 正浩 信州大学, 工学部, 助教 (60432168)
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Keywords | セルロース合成 / タンパク質複合体 / CesDの構造 / CesDの局在 |
Research Abstract |
本年度は高知大と共同して、ターミナルコンプレックス(TC)の局在について抗CesD抗体を使い,まずは化学固定による免疫電顕を行った。培地表面に形成した薄膜中の菌体を,パラホルムアルデヒドで固定し、エチルアルコールによる脱水後、水溶性のLRWhite樹脂に置換し、低温で紫外線によって樹脂を重合させた。超薄切片を作製し、抗CesD抗体による一次抗体処理、金標識抗ウサギIgG抗体による二次抗体処理を行い、電顕観察した。金粒子は菌体の膜付近に多く存在したが、細胞質にも存在した。まだ解析が不十分であるが、菌体内で合成されたCesDタンパク質が、膜付近に移動する際の一過程とも考えられるが、詳細は今後の検討課題である。次に、フリーズフラクチャー法を用いて、TCの局在性について観察した。内膜上にはタンパク質複合体と思われる突起物が見られたが、Gluconacetobacterの時に見られるような一列に配列した構造は観察されなかった。このことがセルロース合成量に関係しているかどうかは今後の課題である。 ついで、CesDの立体構造解析については、Hisタグカラムによって精製したAbCesDを用いて、ハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化を行った。その結果、マロン酸ナトリウム、PEG3400、2-methyl-2,4-pentanediolを用いた条件において、結晶を作成することができた。得られた結晶を用いてX線回折強度測定を行った結果、空間群I222、結晶格子(a=57.8Å、b=99.2Å、c=112.5Å)であり、Gluconacetobacter xylinus由来のCesDを用いた分子置換法により、最終的に分解能1.9Å、R factor=22.7%での立体構造を決定した。AbCesDは、ダイマー・テトラマーを形成しており、8量体構造を形成していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究項目では、以下の2点が重点の課題であった。 ①CesDタンパク質の結晶化と立体構造解析 ②抗CesD抗体を用いた細胞における局在性の解明のための電顕観察 これに対して、①については高分解能での立体構造の解析に成功し、GluconacetobacterのCesDと同様に、ダイマー・テトラマーの8量体構造を形成していることを明らかとした。これにより、セルロース合成の機構の解明の基礎的な知見が得られることが期待される。また、両菌間でのセルロース合成量の違いに関する要因を解析することが可能となるものと考えられる。また、②については抗体染色によるCesDの局在について、基礎的なデータが得られた。現在これを解析中であるが、今後さらに詳細に検討するための基礎は構築された。
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Strategy for Future Research Activity |
セルロース合成に重要な合成酵素複合体のうち、CesDタンパク質の局在性について、抗体を用いた電顕観察から種々の仮説が考えることが可能となった、今後は、さらに精度をあげて観察するために、以下の検討を行う。 ①CesDの欠損株の構築とこの株におけるTCの局在の観察 ②上記欠損株からGlluconacetobacterのCesDを相補した株におけるセルロース生産性の確認とTcの局在性の確認 またCesDの構造を緻密化し、合成における本タンパク質の役割を解析する。特に合成語のセルロース鎖の排出に関わる機構についての観察を行う。このために、得られた構造を基に、MD計算によるシミュレーションを行えるかどうかの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、抗体を作成して高知大との共同研究を行っており、当初計画では討論のための出張を本年度実施予定であった。しかし、研究の進捗状況により、次年度実施にすることになったので、繰越をした。 これまで個々に行ってきた研究を加速するため、今年度は共同研究先との直接討論の場を増やすための出張を計画している。また、今年度は、遺伝子工学的手法で菌株の改変を計画しているため、高消耗品として高価な遺伝子操作用の試薬の購入に当てる予定である。そのほか、論文作成にかかる経費を考えている。
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