2012 Fiscal Year Research-status Report
二次壁多糖類の生合成、輸送、修飾とゴルジ体の空間的・時間的挙動の解明
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24580243
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粟野 達也 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40324660)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 木部細胞 / 蛍光タンパク質 / グルコマンナン合成酵素 / ゴルジ体 / 高圧凍結法 |
Research Abstract |
35Sプロモーター、ポプラ由来グルコマンナン合成酵素遺伝子(PtCSLA1)、黄色蛍光タンパク質遺伝子(YFP)を接続したアグロバクテリウム用コンストラクトを、PtCSLA1のN末端側にYFPを接続したものおよびC末端側に接続したもの、2種類作製した。ポプラにおいて、PtCSLA1はゴルジ体画分で活性が認められており、上記コンストラクトを用いて形質転換ポプラを作製すればゴルジ体を標識できると期待される。形質転換実験に先立ち、Populus tremula X P. tremuloides T89系統の組織培養系を整備し、茎外植片からの個体再生(カルス誘導、シュート誘導、シュート伸長、発根)が恒常的に可能となった。現在、上記コンストラクトを用いた形質転換実験を1回実施し、シュート誘導中である。 ポプラ(Populus trichocarpa)のゲノム情報からマンナン合成酵素(PtCSLA1)、マンナナーゼ(GH5)の遺伝子配列を取得し、バイオインフォマティクス解析を行い、抗原ペプチドに適した配列を検討した。PtCSLA1に関してはアミノ酸配列情報のみでは類似酵素と交差反応性のおこりにくい配列を決定することが難しいことが判明した。 野生株のPopulus tremula X P. tremuloides T89系統を照明条件を通常および昼夜逆転した2条件で栽培し、 高圧凍結・凍結置換固定法により固定した。固定に四酸化オスミウムを用いたものはエポキシ樹脂に包埋して形態観察用とし、固定にグルタルアルデヒドを用いたものは親水性アクリル樹脂に包埋して免疫電子顕微鏡法用とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に予定した3つの実験のうち、「1.蛍光タンパク質発現組換えポプラの作出」はほぼ予定通り進行しているが、他はやや遅れている。 「2.多糖類生合成酵素、加水分解酵素の抗体作製」については、抗原となるアミノ酸配列に求められる条件は、(1)グルコマンナン合成酵素(PtCSLA1)には存在するが、他の酵素、特にセルロース合成酵素(Cellulose Synthase)およびセルロース合成酵素様酵素(Cellulose Synthase-like)には存在せず、(2)抗体産生を誘導できる配列である。配列解析を行った結果、(1)を満たす配列はいくつか候補が見つかったが、PtCSLA1は膜タンパク質であり、アミノ酸の配列だけでなく、ドメイン構造やタンパク質内での位置も考慮して慎重に判断したほうがよいとの結論に至り、時間を要している。膜タンパク質特にセルロース合成酵素の研究者からのアドバイスを求める予定である。 「3.高圧凍結・置換固定法によるゴルジ体の透過型電子顕微鏡観察」については、借用している高圧凍結装置が動作不能に陥り、その修理改善にほぼ半年間を費やしてしまった。運転中に何らかの物質の凍結により内部配管が閉塞してしまうことが原因と予想されたので、保守業者にメンテナンス(オーバーホール)を2回依頼したが、根本原因は解明できなかった。しかし、試料処理の間隔を4分以上置くことで閉塞せず使用できることが分かり、現在は安定して運転できるようになった。以上の理由により本実験に関しては、約半年の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、「1.蛍光タンパク質発現組換えポプラの作出」、「2.多糖類生合成酵素、加水分解酵素の抗体作製」、「3.高圧凍結・置換固定法によるゴルジ体の透過型電子顕微鏡観察」を継続する。2.の抗原配列決定に関しては、膜タンパク質の専門家と意見交換しながら現在進めている。3.については装置の問題が解消されたので、1.で作出したポプラを用いて試料を作製し、観察を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度、抗体作製が抗原配列の選定の段階で時間がかかり、抗原ペプチドの作製および抗体の調製を発注するに至らなかったため、研究費の剰余が生じた。抗原配列を本年度7月までに決定し、本年度中に抗体を調製する予定である。
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