2013 Fiscal Year Research-status Report
二次壁多糖類の生合成、輸送、修飾とゴルジ体の空間的・時間的挙動の解明
Project/Area Number |
24580243
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粟野 達也 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40324660)
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Keywords | 木部細胞 / 蛍光タンパク質 / グルコマンナン合成酵素 / ゴルジ体 / 高圧凍結法 / キシラン加水分解・転移酵素活性 |
Research Abstract |
35Sプロモーター、ポプラ由来グルコマンナン合成酵素遺伝子(PtCSLA1)、黄色蛍光タンパク質遺伝子(YFP)を接続したアグロバクテリウム用コンストラクトを2種類作製した(PtCSLA1のN末端側にYFPを接続したものをYG、C末端側にYFPを接続したものをGYとする)。コントロールとしてPtCSLA1を含まないコンストラクトも作製した(Yとする)。これらのコンストラクトを用いて形質転換ポプラを作製したが、YGとYは生育に差は見られなかったが、GYは生育が極度に遅かった。葉の表皮細胞を蛍光顕微鏡で観察したところ、Yでは表皮細胞の細胞質に蛍光タンパク質由来の蛍光が観察されたが、YGでは蛍光が観察されなかった。 キシラン加水分解・転移酵素活性(XylET)を検出するため、スルホローダミン化キシロオリゴ糖(XO-SR)を調製した。ポプラ分化中木部から抽出した粗酵素液にXO-SRとドナーとしてキシランを反応させ、薄層クロマトグラフィーにより反応物を分離したところ、XO-SRよりも高分子物質でローダミン由来の蛍光が検出された。このことはポプラ分化中木部にXylET活性が存在することを示している。ポプラ分化中二次組織の薄切片を抗キシラン抗体による免疫組織化学染色を行い、木部繊維、師部繊維、道管要素、放射柔細胞には二次壁にドナーとなるキシランが存在することが確認された。同切片にXO-SRを反応させin situ XylET活性を蛍光顕微鏡で観察したところ、ローダミン由来の蛍光は木部繊維および師部繊維の細胞壁に特異的に観察され、形成層帯の細胞、師部柔細胞、道管要素、放射柔細胞では観察されなかった。道管要素、放射柔細胞ではドナーとなるキシランが存在するもののXylET活性が見られないことから、酵素が発現していない、あるいは、活性が阻害されていることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「蛍光タンパク質発現組換えポプラの作出」ではゴルジ体に蛍光タンパク質が発現すると期待される、グルコマンナン合成酵素PtCSLA1のC末端側にYFPを接続したコンストラクトで形質転換したポプラの生育が極度に遅く、顕微鏡観察に至っていない。 「高圧凍結・置換固定法によるゴルジ体の透過型電子顕微鏡観察」については、透過型電子顕微鏡による観察を進めているが、グリッドにより視野が妨げられるなどの理由により細胞の全体像を把握するのが困難で、本研究の目指すところである細胞全体でのゴルジ体の挙動を把握するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光タンパク質によるゴルジ体の可視化については、ゴルジマーカータンパク質遺伝子を用いたコンストラクト(G-gk CD3-963、G-rk CD3-967)による形質転換ポプラの作出を試みる。これらのコンストラクトはシロイヌナズナでゴルジ体に蛍光タンパク質が発現することが確認されている。 高圧凍結・置換固定法によるゴルジ体の透過型電子顕微鏡観察については、透過型電子顕微鏡の代わりに高分解能な電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)を用いて反射電子像による観察を試みる。これにより、低倍から広視野観察と高分解能観察の両立が可能になると期待される。
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