2013 Fiscal Year Research-status Report
紙表面上でナノファイバーを直接合成する手法の確立とその機能解析
Project/Area Number |
24580247
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
市浦 英明 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (30448394)
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Keywords | 機能紙 / 界面重合 / ナノファイバー |
Research Abstract |
本年度は、水溶性モノマーとしてエチレンジアミン(EDA)、油溶性モノマーとしてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を用いて、紙表面上で界面重合反応を行った。生成したファイバー状高分子膜のファイバー径および生成率がエチレンジアミン濃度および有機溶媒が及ぼす影響について検討を行った。 EDA 25% および HDI 1%を用いて調製を行った。有機溶媒として、ヘキサン、ヘキサデカン、シクロヘキサンおよびヘプタンを用いた場合のファイバー径は、それぞれ100 nm、120 nm、96 nmおよび70 nmであった。また、同条件におけるファイバー状高分子の生成面積率は、それぞれ82%、77%、27%および2%であった。この結果より、ヘキサンおよびヘキサデカンを用いた場合、高いファイバー状高分子生成面積率が得られた。 ヘキサンおよびヘキサデカンを有機溶媒として用い、EDA濃度とファイバー径およびファイバー状高分子生成面積率の関係を検討した。EDA濃度が0%の場合でもポリウレア膜を生成することが可能であった。EDA濃度が5%から25%になるにつれて、ファイバー径は小さくなる傾向を示した。また、ファイバー状高分子生成面積率は変化しなかった。 次に基材がファイバー径および生成率に与える影響を検討した。調製条件として、EDA 25% および HDI 1%、有機溶媒としてヘキサデカンを用いた。基材として、ろ紙、PE不織布、PETフィルム(親水化処理ありまたはなし)、PEフィルム(親水化処理ありまたはなし)を使用した。その結果、親水性が低い基材であるPE不織布、PETフィルム(親水化処理なし)およびPEフィルム(親水化処理なし)の場合、ファイバー状高分子生成面積率が低くなる傾向を示した。ファイバー径は、それほど変化しなかった。 このことから、有機溶媒の種類および基材がファイバー状高分子生成面積率に、水溶性モノマー濃度がファイバー径に影響を及ぼすことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、紙を水溶性モノマーに含浸後、再度油溶性モノマーに含浸処理を行うことにより、紙表面上で界面重合反応が生じ、紙表面上でナノファイバーの合成を試みている。このように紙表面上でナノファイバーが生成する考えられる因子が、紙表面上に形成されたナノ界面領域に存在していると推測される。具体的には、水と有機溶媒の液/液界面張力、紙の微細な凹凸などの表面構造因子などの化学的および物理的因子などが考えられる。その因子である①モノマー濃度、②モノマーの種類、③有機溶媒の種類、④基材について検討を行う予定である。今年度は、主に水溶性モノマー濃度、有機溶媒および基材が、生成するファイバー状高分子に及ぼす影響について検討した。 その結果、有機溶媒の種類および基材がファイバー状高分子生成面積率に、水溶性モノマー濃度がファイバー径に影響を及ぼすことが示唆された。このことから、EDA濃度および有機溶媒を考慮することで、ファイバー状高分子の生成をコントロールできる可能性が高まった。また、基材については、親水性処理を施すことにより、フィルムや不織布への適用も可能であることも示唆された。 今年度は考えられる因子の中で、水溶性モノマー濃度、有機溶媒および基材とファイバー状高分子の生成との関係性について検討し、成果を得ることができた。このことから、ナノファイバー合成条件についての知見を得ることができ、概ね今年度の目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、機能性についての研究を進め、高分子膜の形状と機能、特に吸着機能について検討を進める予定である。また、調製したファイバー状高分子への触媒の定着法についても検討する。モデル触媒として酸化チタンを使用し、調製したナノファイバーへの担持手法の確立を試みる。予備実験で担持効果が確認されたシランカップリング剤およびポリシロキサンを活用し、光触媒微粒子を静電的にナノファイバーへ結合させる手法の確立し、高度機能化を試みる。そして、調製したナノファイバーの触媒担持効果を明らかにする。
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