2012 Fiscal Year Research-status Report
樹木特有の新規環拡大反応であるトロポロン生合成機構の解明と応用
Project/Area Number |
24580248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤田 弘毅 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90264100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 祐司 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30236921)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒノキチオール / テルピノレン / トロポロン / 生合成 / モノテルペン |
Research Abstract |
ヒノキチオールの生合成路の探索を進めてきた。これまでのラベル化基質投与実験や各種酵素のアッセイにより、代謝経路の予想は行ってきたが、最重要課題である共役7員環生成そのものについての知見がまだ無かった。そこで、まず、オレフィンモノテルペンの最初の中間代謝物と予想するテルピノレンの関与をラベル化基質投与実験で確認した。2H ラベルのテルピノレンを合成し、Cupressus lusitanica 培養細胞に投与した。過去に安定同位体などの投与実験で用いてきた条件では取り込みを明言できなかったが、培地等成分をすべてマンニトールに変えて細胞を飢餓条件にし、分析にも60mのガスクロマトグラフィーキャピラリーカラムを用いて精密に分析することにより、ラベル原子(重水素6個)がすべてヒノキチオールへ移行した物資のピークを同位体効果でラベル無しヒノキチオールと完全に分離して観察することが可能で、テルピノレンからヒノキチオールへの代謝が証明された。即ち、予想経路が正しいことが証明された。この成果は、天然物における初めてのテルペン生合成経路を使ったトロポロン核の合成経路の存在を示すという点で、極めて意義深いものである。 同様の系が中間代謝物に適用可能である可能性が高いため、取り急ぎ上記のガスクロマトグラムに見られるピークをサーベイしたが、明らかな中間物は見られなかった。しかしながら、ヒノキチオールの同定を目的にした分析であることと、中間代謝物は比較的高極性の物質であると予想されるので、抽出条件を含めてさらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オレフィンモノテルペンの最初の中間代謝物と予想するテルピノレンの関与をラベル化基質投与実験で確認する実験では、想定外に高い基質取り込み率を達成したことと、同位体効果による天然同位体ヒノキチオールとラベル化ヒノキチオールの分離がガスクロマトグラフィー質量分析計で可能であったために、十二分に「綺麗な」投与実験結果を得ることができた。ただし、ヒノキチオール分析時と全く同じ抽出、分析条件ではP450によって代謝された高極性の中間代謝物は検出が難しいであろうことが示された。実際、テルピノレンの直後の代謝物は水酸化物やエポキシ化物であることが既に示されている。そのため、液体クロマトグラフィー質量分析計による中間代謝物の探索や、誘導体化物のガスクロマトグラフィーへの分析などへ迅速に移行すべきで有ったと思われる。 しかしながら、テルピノレン投与実験成功は計画初段階の一番重要な部分がクリアされた事を示し、次年度以降の中間代謝物の探索に利用できる実験系で有ると思われるので、将来の展望が明るいと言えるので概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ラベル化テルピノレン投与実験系が十分に機能することが初年度の結果として分かったので、先ず第一の目標は6dラベルテルピノレンを投与することで中間体を検出することである。テルピノレン投与のメリットはより上流の物質の投与に比べ、ヒノキチオール関連物質しか関与しないと思われる。ネガティブコントロールにはエリシターを用いない細胞系と投与実験と全く同条件で非ラベル化テルピノレンを用いる2つの系が利用できる。ただし、テルピノレンの直後の代謝物は水酸化物やエポキシ化物である。さらにエポキシの開環によるトリオール構造の物質が次の代謝物と予想している。そのため、ヒノキチオール分析時と全く同じ抽出、分析条件では高極性の中間代謝物は検出が難しいであろうことが示された。そのため、液体クロマトグラフィー質量分析計による中間代謝物の探索や、誘導体化物のガスクロマトグラフィーへの分析などを検討せねばならない。当初計画していた13Cラベルグルコース投与による中間代謝物の探索は、テルピノレンの十分な取り込みが見られたことから不要になると思われる。 また、粗酵素反応によるトリオールの生成も同時に進行させる予定である。対象は、P450とハイドロラーゼを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(5 results)