2012 Fiscal Year Research-status Report
循環型生物資源利用の立場から見たカツオ節加工残滓の利用に関する研究
Project/Area Number |
24580263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
任 惠峰 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (00345406)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は限りある水産資源を有効利用する立場から、カツオ節の加工残滓に注目した。加工残滓を酵素および酸で処理し、タンパク質の分解率、栄養・呈味・機能性成分の含有量、抗酸化性・抗変異原性などの諸方面から、カツオ節の加工残滓の安全かつ付加価値の高い利用条件を明らかにすることを目的とする。 本年度はまず、カツオ節の加工残滓を3種のプロテアーゼー系酵素で処理し、18種全アミノ酸含有量、18種遊離アミノ酸含有量および抗酸化性に及ぼす酵素添加量ならびに処理時間の影響を検討した。試料に粗タンパク質の1%~4%に相当する酵素を加え、 3~18時間で酵素分解を行った。試料を遠心分離して得られた上澄み液(酵素分解液と略称)を分析試料とした。18種アミノ酸の測定はHPLC、抗酸化力の測定は供試試料量が少なく、測定時間も短い極微弱発光方法を用いた。 ① 対照試料から53mg~173mg/100gの18種全アミノ酸、13~20mg/100gの遊離18種アミノ酸を検出した。 ② これに対して酵素分解液から342~2491mg/100gの18種全アミノ酸、13~886mg/100gの18種遊離アミノ酸が検出され、酵素の添加量および抽出時間の変化に伴って18種アミノ酸含有量の増加傾向が見られた。 ③ 酵素分解液にタンパク質・ペプチドに由来するAsp・Glu・Pro・Gly・Ala・Leu・Lysなどの7種のアミノ酸の占める割合がいずれも多かった。 ④ 酵素分解液から0.056~0.388unitの抗酸化力が検出され、酵素添加量および処理時間の増加に伴って、抗酸化力の増加傾向が見られた。 ⑤ これまでの実験結果から酵素種類はプロテアックス、酵素添加量は1%、酵素分解時間は18時間という処理条件が適切だと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では栄養・呈味・機能性成分の抽出率および生理活性に及ぼす酵素処理条件の影響を明らかにすることを目的とした。カツオ節の加工残滓を試料として、酵素種類(3種)、添加濃度(1%・2%・4%)、分解時間(3時間・9時間・18時間)という三つのパラメータを用い、カツオ節の加工残滓を異なる条件で処理した。 これまでほぼ当初の計画の通りに、得られた酵素分解液に含まれる18種遊離アミノ酸、18種全アミノ酸および抗酸化性などの機能性の分析を完了した。 ① 酵素分解液の18種アミノ酸含有量に及ぼす酵素処理条件の影響 ② 酵素分解液の抗酸化性の変化に及ぼす酵素処理条件の影響についての研究結果を水産学会で2回発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度の研究結果を踏まえ、主に以下の二つの研究内容を実施する予定である。まず、カツオ節の加工残滓を酵素で処理し、得られた酵素分解液を分析対象として、ペプチド含有量を定量分析する。これを昨年で得られた研究結果と合わせて考慮し、カツオ節の加工残滓から栄養性・呈味性・機能性成分の抽出率および生理活性に及ぼす酵素分解処理条件の影響を明らかにする。続いて、同じカツオ節の加工残滓を異なる酸加水分解条件で処理し、カツオ節の加工残滓からの栄養性・呈味性・機能性成分の抽出率および生理活性・安全性に及ぼす酸加水分解処理条件の影響を追究する。酵素分解手法は昨年と同じであるが、酸加水分解実験手法としては以下の通りである。 1)カツオ節の加工残滓を酸加水分解する: 細かくすり潰したカツオ節の加工残滓を①塩酸濃度、②分解時間、③分解温度という三つのパラメータを用いて処理する。得られた酸加水分解液をNo2濾紙でろ過し、ろ過液中の塩酸が完全に除去されるまで、濃縮・乾涸操作を繰り返し、最後に蒸留水で希釈する。 2)18種アミノ酸分析試料を調製する: 上記1)で得られた水溶液をさらにクエン酸緩衝液で希釈し、0.2μメンブランフェルターでろ過した後、18種全アミノ酸分析試料とする。 3)18種アミノ酸を測定する: 上記2)で得られた試料をHPLCで18種アミノ酸を測定し、18種全アミノ酸合計量、呈味性アミノ酸の占める割合および機能性アミノ酸の占める割合を解析し、それらに及ぼす酸加水分解条件を分析する。 4)上記2)で得られた水溶液を0.2μメンブランフェルターでろ過した後、ペプチドの分布状況を分析し、タンパク質の低分子化に及ぼす酸加水分解条件の影響を分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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