2013 Fiscal Year Research-status Report
カレイ類に起こる形態異常の本質的理解と、二次黒化の根本的防除法の開発
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24580266
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田川 正朋 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20226947)
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Keywords | 形態異常 / 種苗生産 / カレイ類 / 着色型黒化 |
Research Abstract |
カレイ類の種苗生産では、体色や形態の異常個体が多い時には80%以上も出現し、本分類群の栽培漁業上で最大の障害となっている。本年度は、体色や形態異常および二次黒化についての本質解明と根本的な防除をめざし、以下のような研究を行った。 1、アカガレイの形態異常各タイプの分類: 飼育下のアカガレイでは他の異体類には見られなない異常タイプが頻発する。各非対称形質の関連性を検討したところ左右の眼位は独立していた。一方、正常な左右の体色は、本来その側の眼が正中線を越えなければ黒色に、超えた場合は白色であることが強く示唆された。そのためアカガレイについては、左右の眼位と眼位から予想される体色の正常・異常について、全ての組み合わせである12タイプに分類した。 2、アカガレイ飼育魚における水温と飼育密度の影響: アカガレイでは飼育条件と形態異常の関連が検討されていない。そこで水温と飼育密度が形態異常に及ぼす影響を前述のタイプ分けを用いて検討した。左右眼位や眼位と体色の関連性は、飼育水温に対し異なった反応性を示したが、天然よりも高水温である12度から15度で最適な結果を示した。一方、高飼育密度は左右の眼位や白化の出現には明確な影響を与えず、軽微な黒化のみを増加させた。即ち、左右眼位と黒化の出現には、異なった発現機構が強く示唆された。 3、ヒラメにおける二次黒化の発現時期の特定: 二次黒化抑制効果が確実である底砂を用いて、成長に伴う二次黒化の開始・中断・再開の状況を検討した。残念ながら二次黒化には決まった発現可能期間は見いだされず、孵化後約5ヶ月(体長約20cm)でも底砂を取り除くと発現した。また黒化開始後に底砂を導入すると黒化拡大は停止したものの、底砂を除去すると速やかに黒化が再開した。即ち、二次黒化は潜在的に常に発現しうること、および底砂による抑制効果は一時的でしかないことが明らかである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに進展している。なお、アカガレイの天然着底稚魚のサンプルが入手できず、天然魚における成長履歴の検討が完了していない。しかし、飼育実験においては計画以上に研究が進展しており、水温や密度の影響が明らかになり、整合性のある結果が得られつつある。また、飼育魚の成長履歴の検討もほぼ完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
特に方針に大きな変更や修正すべき点はない。当初の計画通りに、アカガレイにおける甲状腺ホルモン投与時期が形態異常に及ぼす影響の検討を行うことを考えているが、現時点で明らかになってきた経年的な再現性の低さが懸念されている。そのため、まずこれまでの飼育結果を精査し、ノイズになりうる要因の特定を洗い出す必要を感じている。また、飼育密度と黒化の関係については、今年度までに行ってきたアカガレイ、および予備的なマツカワの結果からは、密度による影響が確認できており、次年度には確実な結果が示せると期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
例年使用している大学内の放射性同位元素使用施設が耐震補強工事に入ったため、計画していたホルモン測定の実験を実施できなかった。そのため放射性試薬および実験用消耗品の購入を行わず、次年度使用額が生じた。 耐震補強工事は次年度(平成26年)6月ごろに終了する予定であり、7月以降には放射性同位元素を用いたホルモン測定実験が可能となる。その際に、放射性試薬等を購入する際に、この次年度使用額より支出を行うことを計画している。
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Research Products
(5 results)