2014 Fiscal Year Research-status Report
カレイ類に起こる形態異常の本質的理解と、二次黒化の根本的防除法の開発
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24580266
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田川 正朋 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20226947)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 形態異常 / 種苗生産 / カレイ類 / 着色型黒化 |
Outline of Annual Research Achievements |
カレイ類の種苗生産では、体色や形態の異常個体が多い時には80%以上も出現し、本分類群の栽培漁業を推進する上で最大の障害となっている。我々はこれまでカレイ類の変態の仕組みを個体レベルで明らかにしようと試みてきた。また、変態後におこる無眼側黒化は防除が困難とされる。本年度は、体色や形態異常および二次黒化についての本質解明と根本的な防除をめざし、以下のような研究を行った。 1、アカガレイ飼育魚における形態異常の出現機構: これまで本課題で行ってきた水温、飼育密度および成長履歴などの検討の結果を総合的に考察することで、アカガレイにおける多様な形態異常の出現機構の概要がほぼ明らかになった。即ち、左右の眼位や白化は、左右ごとにそれぞれが独立して、主に成長速度に依存して決定され、一般的には高成長ほど正常化する。一方、無眼側黒化は主にストレスに依存して増加するが、本種では高水温がストレスとして作用している可能性も示唆された。これらより、本種では低水温で高成長を促すような新しい飼育技術の開発が形態異常の防除に必要であると考えられた。 2、ヒラメにおける鱗の自家移植実験: ヒラメの無眼側鱗を有眼側に移植すると、移植鱗上に黒色素胞が出現した。一方、有眼側鱗を無眼側に移植しても黒色素胞は減少しない。しかし、移植した有眼側鱗を再び取り除くと、そのあとに再生してくる鱗は有眼側鱗と同様に多数の黒色素胞を有していた。このことから、有眼側や有眼側鱗には、無眼側鱗に黒色素胞を出現させる何らかの要因が含まれていると推測された。 3、ヒラメの着色型黒化におけるストレス応答ホルモンおよび水槽底形状の影響:ストレス応答ホルモンであるコルチゾルをヒラメに投与すると、有意に無眼側の着色型黒化面積が増加することが予備的に明らかになった。また、水槽底面に凹凸をつけることで、ヒラメの着色型黒化が抑制できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている。これは当初、平成26年6月頃に完了するはずであった、京都大学放射性同位元素総合センター分館の耐震補強工事および検査が遅れたため、ホルモンをラジオイムノアッセイで測定することが出来なかったことによる。一方、ヒラメの着色型黒化に関しては計画以上に研究が進展している。試験的に検討した鱗の移植実験では有眼側を形成する因子の存在が示唆された。さらに予備的ではあるがストレスとの直接関連性や、着色型黒化を防除できそうな水槽底面構造も把握できつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
特に方針に大きな変更や修正すべき点はない。次年度は、マツカワおよびヒラメにおいて既に収集してある血液や体全体のサンプルを用い、ラジオイムノアッセイによりホルモン、特にストレス応答ホルモンであるコルチゾル濃度を検討する。しかし、ホルモン測定まで1年以上経過してしまったことで、サンプルが劣化している可能性があるため、場合によっては再度飼育実験を行う必要が考えられる。また、既に収集してあるサンプルを用いて、マツカワにおける飼育密度の影響、および浮遊期あるいは着底後の飼育密度がより強い影響を及ぼすかを検討する。
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Causes of Carryover |
例年使用していた大学内の放射性同位元素使用施設の耐震補強工事および検査の完了が、当初予定されていた平成26年6月ではなく平成27年4月となった。そのため、計画していたラジオイムノアッセイによるホルモン測定のための放射性試薬および実験用消耗品の購入を行わなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
耐震補強工事と検査は平成27年4月に完了した。5月以降には放射性同位元素を用いたホルモン測定実験を開始する予定である。その際に、放射性試薬等を購入する際に、この次年度使用額より支出を行うことを計画している。
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Research Products
(4 results)