2012 Fiscal Year Research-status Report
マングローブ植林の生態系修復効果の検証:カニを鍵種としたアプローチ
Project/Area Number |
24580269
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
池島 耕 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (30582473)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マングローブ / 植林 / 生態系修復 / 水生生物 / カニ |
Research Abstract |
近年,魚類やエビ類の成育場,あるいは有機物の供給源など,マングローブ域が生態的に果たす役割の解明が進む一方,マングローブ林の再生や保全においては,生態系の修復効果を検証した研究は少なく,生態系の機能をふまえた修復や管理もほとんど行われていない。本研究は,マングローブの再生林と保全林において水産動物群集と植物群落,土壌環境を同時に調査し,マングローブ植生の再生による生態系の修復効果を検証するとともに,マングローブ生態系における水産動物と動植物間の相互関係を明らかにし,マングローブ生態系の環境指標となる水産動物・環境測定項目を明らかにすることを目的としている。 初年度の本年は,予備調査を行い,調査方法と調査区の検討を行った。タイ国南部で,エビ養殖開発によるマングローブ伐採地,植林されたマングローブ林の混在する沿岸の調査地を選び,マングローブ植生の無い「干潟」,植林後の年数の異なる(2年,20年)2地点,古いマングローブの残る水路の合計4地点を設定し,地曳網による魚類採集,プランクトンネットによるプランクトン採集,コドラート法によるベントス採集を行った。 本年度の調査では,水質およびプランクトンの組成,密度には地点間による明瞭な違いは見られなかったが,魚類ではマングローブ植林後20年の地点で他の地点より種数,密度ともに高い傾向が見られた。 また,マングローブに生息するカニ類の密度を推定する方法についても予備的な調査と検討を行い,ビデオカメラを用い,より高い精度で密度推定を行える可能性を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は先ず,現地の共同研究者と共に調査候補地を選定するための視察を行った後,これまでの経験と文献情報をふまえ,環境と水産動物の採集調査を実施した。概ね,調査地点間を比較するために必要な標本の定量的な採集を行う事が出来たが,ベントスについては調査時間・労力内で必要充分な定量調査を行うための方法の検討が必要であることが分かった。また,本年度は土壌,樹木の調査は行えず,さらに現場の条件や調査の時間,労力の制限から側点数と測定項目が当初計画よりやや少なくなっており,次年度の課題である。 植林後の経過年度の異なる地点間の比較については,魚類についてすでに地点間による違い,とくに経過年数の多い地点で魚類が豊富であることが示唆される結果が得られ,今後のベントスや他の物理,生物パラメータとの比較により植林による生物相,環境条件とそれらの相互作用を明らかにできる可能性が示された。 カニの生息密度の推定方法については,まだ確立にはいたらなかったものの,ビデオを利用した方法が従来の方法よりも高い精度で密度推定できる可能性を明らかにしており,次年度に方法を確立し,植林地の調査に適用できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は先ず,タイ国において現地共同研究者とともに調査候補地の選定と視察を行った。本研究では植林後の経過年数の異なるマングローブ再生林を同時に調査することで,短期間で植林経過後の生態系修復効果を検証することを目指しており,経過年数以外の環境条件をできるだけ同等にするべきである。しかし,実際のマングローブ植林においては,マングローブ前面に形成された干潟で植林が行われたり,一部を伐採された場所での補足的な植林が行われたりしており,経過年数のみを要因として比較を行えるような場所は設定できなかった。それでも,ナコン・シ・タマラートにおいては,20年前より数年おきに植林により隣接した再生林を拡大して来た場所があり,水理条件の違いについての考慮が必要であるが,植林後の経過年数の違いを含めて,生態系修復効果を検証できると考えられ,調査地として選び定点調査を開始した。水質観測および水生生物の定量採集については,従来の方法を用いて実施することが出来たが,ベントスについては,海外であるための調査時間と労力の制約の中で,時間も労力かかりすぎることなど,採集方法について再検討する必要があり,次年度はコアサンプルなど,効率的で十分に定量性のある採集方を検討する。 本研究のもう一つの柱として,カニを中心とした生物間および環境との相互作用についての解析を目的としている。そのためにカニの生息密度の定量的な把握が必要であるが,その方法は確立していなかった。初年度はこれまで行われていたトラップや巣穴数の計数による推定法とあわせてビデオ観察を試み,一定の成果を得た。本年度は観察条件について更に検討を重ね,簡易的におこなえる定量調査法の確立と植林地の調査への適用を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)