2012 Fiscal Year Research-status Report
魚体内におけるStreptococcus iniaeの型変異のメカニズム
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24580271
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
金井 欣也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (40145222)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Streptococcus iniae / 莢膜 / 型変異 / 莢膜合成遺伝子 / IS981 |
Research Abstract |
ヒラメ養殖場で採取した保菌魚および飼育環境から分離されたS. iniae K-タイプ17株およびK+タイプ6株、病魚由来S.iniae K-タイプ11株およびK+タイプ2株、K+タイプを用いた人為感染実験における生残魚から分離されたS. iniae K-タイプ11株、S. iniae ATCC29178 (Type strain、K-タイプ)、の合計48株の研究室保存株を供試菌株とした。GenBankで公開されているS. iniaeの莢膜合成遺伝子群の全塩基配列(Accession no.: AY904444.1)約20 kb全体を2~4 kbの長さで8分割するようにプライマーを設計し、供試菌株のゲノムDNAを鋳型にPCRを行った。その結果、K+タイプはすべてデータベースから予想された長さのPCR産物が得られたが、K-タイプでは40株中29株においてデータベースより1~2 kb長いPCR産物が1~2か所あることが分かった。これらの菌株では、その部分の構造がK+タイプのものと異なると思われたため、当該PCR産物の塩基配列を調べた。その結果、莢膜合成遺伝子内あるいは遺伝子間の1か所に別の配列が挿入されているために配列長が長くなっていることが分かった。挿入された配列は、レンサ球菌群に広くみられるIS981(1,224 bp)であるものが最も多く、他に未知のIS(1~2 kb)と思われるものが数種類あった。 ISはゲノムDNA上を移動し、移動先の遺伝子に挿入変異を引き起こす。S. iniaeの場合も、IS981や他のISが挿入されたために莢膜合成遺伝子の発現や発現タンパクに変化が生じ、その結果、K-タイプでは莢膜の合成が行われなかったと推察された。以上の研究から、K+タイプからK-タイプへの変異メカニズムの一つが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における今年度の研究計画は、K-(莢膜非保有)タイプの莢膜合成遺伝子群およびそのプロモーター領域の塩基配列の解明であり、もしそこにK+タイプとの差異が認められなかった場合、莢膜合成遺伝子群の転写や転写調節遺伝子を調べるというものであった。そこで、まず前者について研究を進めたところ、K-タイプ40株中29株において当該遺伝子群に別の配列が挿入され、その結果、莢膜の合成が阻害されるという変異メカニズムが明らかとなった。したがって、本研究課題の遺伝子関連の研究目的の70%以上は達成されたと言って良いと思われる。なお、上記の変異が確認できなかった、残りのK-タイプ11株についてはさらに解明を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ISの挿入が認められなかったK-タイプ11株について、さらに遺伝学的変異メカニズムの解明を進める。また、次年度の当初の研究計画である、ヒラメ魚体内におけるK+タイプからK-タイプへの変異機序の解明および酸化ストレス、低pH、金属イオン欠乏等の環境因子によるISの移動(K+タイプからK-タイプへ、およびK-タイプからK+タイプへの変異)を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は学会発表を行わなかったために旅費の支出がなく、研究代表者自ら作業を行ったために実験補助についても支出がなかった。次年度は、実験魚の購入、飼料および飼育機材の購入、遺伝子関連実験用消耗品等に使用する。
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