2013 Fiscal Year Research-status Report
魚体内におけるStreptococcus iniaeの型変異のメカニズム
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24580271
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
金井 欣也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (40145222)
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Keywords | Streptococcus iniae / 莢膜 / 型変異 / 莢膜合成遺伝子 / IS981 |
Research Abstract |
ヒラメにK+タイプおよびK-タイプを接種し、K+タイプからK-タイプ、あるいはK-タイプからK+タイプへの経日的変化を調べた。K+タイプとしてNUF631株を用いた場合、接種3日から16日目にかけて継続的に死亡が見られた。K-タイプが出現したのは接種15日目であり、分離菌の12.2~22.6%がK-タイプであった。20日目には72.5~99.5%がK-タイプであり、その後も高率にK-タイプが分離された。分離菌のほとんどがK-タイプになった34日目のヒラメの腎臓と脳の組織標本を観察したところ、食細胞に取り込まれ集塊状になったS. iniaeが腎臓ではメラノマクロファージセンター、脳では髄膜に認められた。血清抗体の産生状況を調べたところ、抗体価が高いヒラメからK-タイプが高率に分離される傾向が見られた。他のK+タイプ3株を用いて同様の実験を行った結果、K-タイプへの変化は観察されたが、NUF631と比べて変化率が低かった。次に、K-タイプとしてNUF44株を用いてK+タイプへの変化を調べた。その結果、35日目までS. iniaeが高率に分離されたが、すべてK-タイプのままだった。そこで、NUF631から変化したK-タイプ3株を用いて再度実験を行ったところ、そのうちの1株(S3K株)のみ、高率にK+タイプが分離された。しかも接種7日という極短期間で変化した。K+タイプに変化した分離菌の莢膜合成遺伝子群の塩基配列を調べた結果、K-タイプのときに挿入されていたIS981が消失していた。 マクロファージ内に存在する作用因子として低pHとマクロファージ破砕液の影響を調べた。NUF631株をpH5.8のヒラメマクロファージ破砕液に懸濁し、10日間生菌数と血清タイプの変化を観察した。pH7.2のものと比較して、5日後に生菌数が1,000分の1に減少したが、血清タイプの変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S. iniaeの莢膜合成遺伝子群内にIS981等の挿入配列が入ることでK+タイプからK-タイプに変化するという遺伝子レベルでの血清タイプ変異のメカニズムが昨年度の研究で明らかになり、当該年度の研究目的は70%以上が達成された。今年度以降の研究計画としては、魚体内における血清タイプの変化の様子を観察すること、および血清タイプの変化を引き起こす環境因子を突き止めることであった。 研究実績の概要で記したように、魚体内における経日的な血清タイプの変化を調べ、K+タイプからK-タイプへの変化および逆向きの変化も起こることを示し、K-タイプを保菌しているヒラメの血清抗体価が高いことも分かった。K-タイプに変化した菌の腎臓および脳における存在形態も明らかにした。血清タイプの変化を引き起こす環境因子については、pHおよびマクロファージ破砕液の作用を検討したが、血清タイプを変化させることはできなかった。このテーマについては研究期間として残された1年間で力を注ぎ、解明するつもりである。 以上のことから、今年度の研究の達成度は90%以上であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまではほぼ計画通り研究が進み、残された課題は血清タイプの変化を引き起こす環境因子の特定である。そこで今年度検討しなかった酸化ストレス、浸透圧ストレス、金属イオン欠乏等の影響を調べる予定である。その際、使用する菌株を増やし観察期間を長くする等、今年度と比べより詳細に検討する。さらに、今年度の研究から、血清タイプの変化を起こしやすい菌株とそうでないものがあること、抗体価が高いヒラメがK-タイプを高率に保菌していることが分かった。そこで、IS981の挿入位置と血清タイプの変化のしやすさの関係、および免疫魚と非免疫魚にK+タイプ株あるいはK-タイプを接種し、両者における血清タイプの変化のしやすさの差についても検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費は消耗品の購入経費としてほとんど使い切った。わずかに研究費が残ったが、あえて0円とせずに次年度使用することにした。 次年度の研究費は、実験魚および飼料、遺伝子関連実験用試薬および消耗品等に使用する。
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