2014 Fiscal Year Annual Research Report
魚体内におけるStreptococcus iniaeの型変異のメカニズム
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24580271
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
金井 欣也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40145222)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Streptococcus iniae / 莢膜 / 型変異 / 莢膜合成遺伝子 / IS981 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:魚類レンサ球菌症の原因菌Streptococcus iniaeは莢膜の有無によりK+とK-の2つの血清タイプに分かれる。K+は莢膜を有し強毒であるのに対し、K-は莢膜がなく弱毒である。K+株で攻撃したヒラメのうち生き残った個体からはしばしばK-タイプが分離されることから、魚体内でK+からK-への型変異が起こると推察される。本研究はS. iniaeの魚体内における型変異のメカニズムを遺伝子レベルで解明することを目的とした。 研究成果:K+タイプ11株、K-タイプ29株、魚体内でK+からK-に変異した11株、計51株の莢膜合成遺伝子群を8つの部分に分けてPCRを行った。その結果、K-タイプ40株中29株で予想される長さよりも1~2 kbp長い増幅断片が得られた。その断片の塩基配列を調べたところ、IS981や他の配列が莢膜合成遺伝子に挿入されていることが分かった。菌株によっては数か所に挿入があった。このことから、K-株の多くが莢膜合成遺伝子にIS981などの配列が挿入されることで、莢膜合成が阻害されたと推察した。魚体内での型変異を調べるため、K+およびK-株をヒラメに接種し、経日的にサンプリングして血清タイプの変化を調べた。その結果、菌株によって型変異の頻度は異なるが、1~2週間でK+からK-あるいはK-からK+への変異が起こることが分かった。魚体内でK-からK+に変異を起こしたヒラメは10日目までにほとんどが死亡した。K-のまま変異しない菌はヒラメ体内に長期間保持された。以上の結果から、K+菌がヒラメに感染あるいはK-菌がヒラメ体内でK+タイプに変異してヒラメが発病し、レンサ球菌症が流行する。その後、K+菌がK-タイプに変異することでヒラメは死亡しないが、長期間体内に保持される、というS. iniaeの感染戦略が考えられた。 魚体内で型変異を起こす因子として、低pH、ヒラメマクロファージ破砕液および過酸化水素の作用を調べたが、型変異は起こらなかった。
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