2013 Fiscal Year Research-status Report
エビ類におけるワクチン効果判定ツールの探索‐哺乳類の抗体に代わる指標はあるのか?
Project/Area Number |
24580273
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊丹 利明 宮崎大学, 農学部, 教授 (00363573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178536)
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Keywords | クルマエビ / 生体防御遺伝子 / サイトカイン関連遺伝子 / ワクチン / WSSV / PRDV / ビブリオ |
Research Abstract |
ワクチン投与あるいは生菌を接種したクルマエビの血球,リンパ様器官,鰓および心臓など主な循環器系組織からmRNAを抽出して,昨年度に構築した定量遺伝子発現解析を実施した。継時的にサンプリングして,遺伝子の変化を観察した。解析にあたっては,異物認識機構に関連する遺伝子と,ウイルス感染に特徴的に動くSOCSやアポトーシス関連遺伝子並びにサイトカイン関連遺伝子に注目した。 その結果、ワクチン投与や病原体接種によって特徴的に発現が変化するサイトカイン関連遺伝子としては、VEGF (血管内皮細胞増殖因子)1遺伝子を発見した。VEGF1は細菌体接種後6時間程度で顕著な発現量の増加がみられ、ウイルス接種によって108時間以降に発現量の増加がみられる。これに対して、VEGF2~4は、いずれの病原体を接種してもほとんど発現量に変化はない。VEGF1の性状は、全長845 bpで198アミノ酸をコードして、その分子量は約22.7 kDであった。astakine遺伝子はウイルス接種後108時間、つまりウイルスによって血球数が極端に低下する時期に、発現の上昇がみられた。そこで、astakine遺伝子の造血効果を検討するために、クルマエビの血液を抜いて、血球数を低下させたのち、さらにdsRNA astakineを接種してastakine遺伝子をノックダウンした。その結果、dsRNA astakineを接種していない個体では血球数は増加して、ほぼ正常な値に戻ったが、接種した個体では血球数の増加は見られなかった。astakine, MIF(マクロファージ遊走阻止因子)とDDT(MIF ファミリー)のリコンビナントタンパク質の作製に成功した。 以上のことから、VEGF1とastakineは感染に対して高感度に発現することから、ワクチン評価の指標として有望な候補遺伝子であることが解った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ワクチン投与や病原体感染に重要な働きをしているサイトカイン関連遺伝子を20種類以上検出することができた。中でも、多機能性でその起源も古いとされているIL-17のリガンドとレセプターを2種類ずつ検出することができたことは今後の実験の進展に大きな一歩となった。JAK/STAT経路の中のHopscotch (JAKのホモログ)、STAT, PIAS、SOCS 2A, 2B, 5, 6, 7など本経路の主要な遺伝子が明らかとなった。現在全長が明らかとなっているサイトカイン関連遺伝子は20種類となり、今後、ワクチン効果の解析や感染動態の解析に重要な指標となる。 リコンビナントタンパクの発現に関しては、当初予定していた昆虫細胞を用いた系ではastakineしか生成できなかった。しかし、大腸菌の系を用いた結果、MIFとDDPタンパクを生成することができた。今後、LPSの混入に注意して、これらのタンパクの機能性について検討することが可能となった。 以上のように、甲殻類で初めてとなるサイトカイン関連遺伝子が予想以上の数同定され、リコンビナントタンパクも一部生成することができた。これらは、ワクチン効果の判定や病原体感染の動態解析に重要な手がかりと考えられる。 以上の結果から、今年度の達成度はおおむね順調に進んでいると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で、種々のサイトカイン系の遺伝子が明らかとなったので、これらの遺伝子についてワクチンや病原体接種後の動態を詳細に調べる。本年度の副次的成果として、IL-17レセプター2が幼生期に発現が顕著に上昇することが明らかとなった。このような原始的なサイトカインとクルマエビの変態との関連性は極めて興味深い。また、ウイルス病はエビの幼生期には感染しないことから、このような観点からも今後サイトカインの研究を進めていきたい。これは、甲殻類の変態に伴うレセプター発現の変遷とウイルス感染という新たな研究局面を生み出すものと期待される。 エビ類はLPSに対して特に感受性が高い。そこで、リコンビナントタンパクの発現については、LPSの混入がないという理由で、昆虫細胞系でのタンパクを当初試みた。しかし、本年度の結果としては、生成できなかった。これは将来の研究の成否を大きく左右するとも考えられるので、大腸菌系でのタンパク生成を続けながら、昆虫細胞系でのタンパク生成の条件検討を続けたいと考えいている。大腸菌の系でMIFとDDPのリコンビナントタンパクの発現が可能となったので、次のようなアッセイ系を確立して、その機能を明らかにしたい。アッセイ系としては1)ボイデンチャンバー法を用いた血球の遊走阻止試験、2)キャピラリーチューブを用いた血球の遊走阻止試験、できれば、3)クルマエビ血球幹細胞を用いた血球の分化に関する培養系。 以上の結果をまとめると、1)平成26年度にはサイトカイン系の遺伝子の動態を種々の条件下で発現解析する、2)MIFとDDPのリコンビナントタンパクの機能を明らかにする。3)できれば、昆虫細胞系によるリコンビナントタンパク生成の条件検討を行う。
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[Journal Article] Deciphering of the Dual oxidase (Nox family) gene from kuruma shrimp, Marsupenaeus japonicus: Full-length cDNA cloning and characterization2013
Author(s)
Inada, M., Kihara, K., Kono, T., Sudhakaran, R., Mekata, T., Sakai, M., Yoshida, T., Itami, T.
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Journal Title
Fish and Shellfish Immunology
Volume: 34
Pages: 471 - 485
DOI
Peer Reviewed
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