2014 Fiscal Year Annual Research Report
価格を大きく左右するナマコ疣足(イボアシ)形質の選抜育種に関する研究
Project/Area Number |
24580280
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
奥村 誠一 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (60224169)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナマコ / 疣足 / 選抜育種 / DNAマーカー / マイクロサテライトDNA / 種苗生産 / 養殖 / 遺伝的集団構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度においては、実施状況報告書に記載のとおり、種苗生産施設の津波被害の影響によりナマコの種苗生産が行われなかったため、選抜育種素材としての疣足形質の遺伝学・生物学的特性を調べた。 1.国内各産地野生集団の疣足形質およびマイクロサテライト(ms)DNAを指標とした遺伝的集団構造について、新規の産地(神奈川県および愛知県)およびこれまで分析が不充分であった標本を分析した結果、昨年度までの結果を強く支持する結果、すなわち各産地の緯度と平均疣足数との間に相関(クライン)が見られ、北方の産地ほど疣足数が多くなる傾向が明確となった。さらにアリル頻度においてもクラインを示すms座の存在が確実となり、本種が段階的に分布を広げ、遺伝的に異なる集団となるのに伴い、疣足形質も変化したことが示唆された。本結果は、優良な疣足形質を有する選抜育種素材の探索に資した点、およびその形質の遺伝的バックグランドを示した点で大きな意義がある。 2.成長(個体サイズ)と疣足数の関係を疣足長も考慮して検討した。凍結するなどして疣足を固定する技法も用いて詳細に検討した結果、目視にて明確に認識できる長さの疣足数は、北方の産地(北海道、青森、岩手)では個体サイズと正の相関を示し、成長と共に疣足数も増加するが、南(西)の産地(神奈川、愛知、三重)ではそのような相関は見られなかった。固定せずに同一個体の成長・縮みに伴う疣足を正確に計測することは困難であったが、これらの結果は、特に南(西)の産地では、疣足数が維持されたまま成長する(あるいは縮む)ことを示唆した。産地によるこのような差の存在は本年度初めて明らかとなった点である。これは選抜育種形質の特性として重要であるが、この種内変異の存在を示した点で生物学的にも意義がある。また、極小の疣状突起の組織構造についても検討したが、通常の疣足組織との違いについては明確でなかった。
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Research Products
(1 results)