2013 Fiscal Year Research-status Report
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24580285
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
平井 俊朗 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (30238331)
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Keywords | 性分化 / 生殖腺 / 遺伝子 / 成長 |
Research Abstract |
ニシキゴイ遺伝的全雌群を用いて通常飼い区と成長抑制(締め飼い)区を作成し、それぞれについて孵化後2,3,4,6ヶ月より、4,8,12ヶ月間のアロマターゼ阻害剤投与試験を行なった。現在までのところ処理開始前と処理終了直後の生殖腺試料を取得し、組織学的解析を行なっている。処理終了時において全般的に通常飼い区の方が締め飼い区よりも生殖腺が発達していたが、全ての群において生殖腺の精巣化が観察された。4ヶ月間処理では、通常飼い孵化後2,3ヶ月処理開始区ではほぼ完全な精巣化が確認されたのに対して、4,6ヶ月処理開始区では処理終了時における卵母細胞の残存数が顕著に増加した。一方、締め飼い区では2,3,4ヶ月処理開始区でほぼ完全な精巣化が確認されたが、生殖細胞の増殖が見られず卵巣形成および精巣形成のいずれとも判断できない個体も多数見受けられた。処理期間の延長(8,12ヶ月)に伴って、締め飼い区ではほぼ全個体で精巣化が確認されるようになったが、通常飼いのうち処理開始時期が遅い(孵化後4,6ヶ月開始)実験区では卵巣組織の残存が顕著となった。以上の結果は、体成長に伴って遺伝的雌生殖腺の卵巣への分化が進行し、それに伴って性的可塑性(潜在的精巣化能力)が低下していくことを示している。現在、処理終了後の継続飼育実験を行っており、アロマターゼ阻害剤により誘導された精巣組織のその後の状況を追跡することで、不可逆的な効果であるかどうかの確認を行っている。以上の研究を遂行する過程でギムザ染色を応用することにより、卵巣化の組織学的指標となる初期周辺仁期卵母細胞を選択的に染色できることを見出した。組織学的評価の簡便化につながることが期待される。 熊本大学との共同研究により、メダカにおいて生殖腺刺激ホルモン受容体(FSHR)の遺伝子欠損によって卵巣の発達不全とそれにともなう精巣化が生じることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝的全雌については長期間の飼育実験によって順調に解析が進んでおり、従来不明であった性的可塑性の推移についての新知見が得られている。初年度における事故発生により、遺伝的全雄群を得ることができなかったことに加えて、ニシキゴイ養殖において遺伝的全雌生産へのニーズがより高いことに鑑み、遺伝的雌の人為性転換(精巣化)に関する研究を重点的に推進することとした。本年度、遺伝的全雌雄両群を作出することが出来たため、遺伝的雄についても同様の研究を開始した。しかし長期間の飼育実験を要するため、遺伝的全雄に関しては研究計画満了時までに全ての実験結果を得ることは困難であり、途中までの実験結果に加えて、先行して行なった予備的研究の研究を総合して、遺伝的雌に関する研究結果との比較を行ないたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝的雌の性的可塑性を中心に研究を継続し、効率的な人為性転換(精巣化)法提案を目指す。成長抑制(締め飼い)区において孵化後の時間経過に伴い性的可塑性(潜在的精巣化能)がどこまで維持されるのかを明らかにすることで、体成長と時間経過が性的可塑性に及ぼす影響の関連性についてより詳細に調査する。それをもとに体長を基準とした人為性転換(精巣化)プロトコルの提案を試みる。そのためにこれまでの形態学的手法を中心とした解析を完成させるとともに、分子生物学的な解析を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
謝金支出予定者(実験補助者)の都合により就労時間が予定よりも下回ったため、小額の未使用が生じた。 次年度に繰り越し、実験補助者への謝金へあてる予定である。
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Research Products
(7 results)