2013 Fiscal Year Research-status Report
モノクローナル抗体とPCRによる有害赤潮藻ヘテロカプサ殺藻ウイルス定量法の開発
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24580290
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
中山 奈津子 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 任期付研究員 (20612675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長崎 慶三 独立行政法人水産総合研究センター, 本部, 研究開発コーディネーター (00222175)
浜口 昌巳 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 主幹研究員 (60371960)
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Keywords | リアルタイムPCR / HcRNAV / ヘテロカプサ / ELISA |
Research Abstract |
ヘテロカプサ(Heterocapsa circularisquama)赤潮の終息にはウイルスHcRNAV感染が重要な影響を与えていることが示唆されている。今後、HcRNAV を用いた赤潮防除法を確立するためには、接種試験と並行してHcRNAV を定量し、精緻な検証データを蓄積することが必要不可欠である。しかしながら従来の定量法は感度が低い上、測定に1 週間以上要するため、現場への適用は困難である。そこで、今年度は、現場環境での持続的な利用を目指し、迅速かつ正確な定量法としてリアルタイムPCR法と酵素抗体法(ELIASA ; Enzyme-linked Immunoadosorbent Assay)の2 法を確立した。とくに、リアルタイムPCRにおいては、異なる感染タイプのゲノム情報からプライマーとプローブを作製し、HcRNAVに特異的であり、かつ、HcRNAVを網羅的に検出することを目標に系を最適化した。本標識セットは、2つの領域を同時に検知するため、非常に特異性が高く、夾雑物の多い環境試料中からの正確な定量に適用可能であると期待された。そこで、海底泥からのHcRNAV検出とその精度を上げることを目指し、底泥処理法、RNA抽出法の検討試験を繰り返すことによって、従来法の100-1000倍程度の感度でHcRNAVを検出することが可能になった。さらに、従来法では結果が得られるまで1週間程度要するのに対し、解析温度や時間の改変により、本リアルタイムPCRではわずか40分程度と解析時間の大幅な短縮に繋がった。しかしながら、底泥からのウイルス抽出効率は未だ1%に過ぎないため、今後の改善を必要とする。さらに、現在、タイプ別の定量に向けてプライマー・プローブセットを作製中であるため、来年度は、環境中からの検出効率の向上と地域ごとのHcRNAVタイプ別定量を目指したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤潮原因渦鞭毛藻ヘテロカプサに感染するウイルスHcRNAVは本種の挙動に深く関わっており、その高い特異性と殺藻能から本種赤潮の防除ツールとして有用性が期待されている。現在、HcRNAVを含む天然海底泥散布による赤潮制御技術を現場で適用する方法を検討中である。その際、海底泥中に含まれるウイルス量や試験過程でのウイルスの効果を検証するには、簡易かつ迅速に定量する技術が不可欠である。そこで、特異性が高く、高感度、多数の試料を同時に処理できるという利点を持つリアルタイムPCRおよびELISA法によるウイルス定量系開発を試みた。25年度の計画は、野外試料からのHcRNAV定量を目指し、モノクローナル抗体を用いたELISA法によるウイルス定量系の確立およびリアルタムPCRを立ち上げることであった。モノクローナル抗体については、特異性の高い抗体を作製中である。リアルタイムPCRについては、3タイプのHcRNAVのゲノム情報から、2領域を対象にしたプライマーと蛍光プローブのセットを作製し、系を確立した。さらに、解析温度や時間等条件検討を繰り返し、HcRNAVに非常に特異性が高く迅速な系に最適化した。この系を野外試料に適用するために、底泥の処理法やRNA抽出法についても検討し、従来法の100-1000倍も検出感度を上げることに成功した。 これまでいくつか定量法があったが、ある宿主に感染するウイルス量に限定されることや夾雑物の影響など、全HcRNAVを正確に定量することは困難であった。本リアルタイムPCR法の確立により、夾雑物の多い海水および海底泥試料からHcRNAVを高感度で検出することが可能になった。今後のHcRNAVモニタリングや同種を利用した赤潮防除対策の発展に大きく貢献するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、ヘテロカプサ感染性ウイルスHcRNAV定量に向けて、ELISA法やリアルタイムPCR法の確立のため、さまざまな検討実験を行った。特に、リアルタイムPCR法では、2領域を対象とする非常に特異性の高い系の確立に成功し、さらに、海水試料や海底泥からのHcRNAV回収試験やRNA抽出等検討試験を通して、野外試料中から従来法の100-1000倍程度の感度でHcRNAVを定量することができた。しかしながら、検出効率は1%と低く、今後改良する必要がある。また、現在、タイプ別の定量に向けてプライマー・プローブセットを作製中である。検出効率の向上とタイプ別定量が可能になれば、地域ごとの全HcRNAV量推移とともにタイプ別推移、宿主赤潮プランクトンとの関係といった新たな知見を得ることが期待できる。これと抗体法を組み合わせた解析によって室内実験はもとより野外試料中のHcRNAV量についても正確に定量できるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
6年度は、本リアルタイムPCRの野外試料からの検出精度を上げるために、RNA抽出法やcDNA合成、底泥分散法等を検討し、野外試料からのHcRNAV定量法の最適化を図る。また、ELISAにおいても、現場適用を目指し、さまざまな検討試験を行う。さらに、実際にヘテロカプサ赤潮現場の試料採取も行い、定量を試みる。また、25年度で進めた試験の論文掲載、学会発表を予定している。 次年度の研究費は以下の通り使用を予定している。 物品 (850,000円)、旅費・調査費 (550,000円)、人件費・謝金 (50,000円)、その他 (100,000円)
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Research Products
(3 results)