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2012 Fiscal Year Research-status Report

麻痺性貝毒生産渦鞭毛藻のオミクス統合解析による無毒化機構の解明

Research Project

Project/Area Number 24580295
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

長 由扶子  東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60323086)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 日出間 志寿  東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助手 (30241558)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywordsオミクス統合解析 / サキシトキシン / 生合成遺伝子 / 渦鞭毛藻 / 麻痺性貝毒
Research Abstract

【1.麻痺性貝毒中間体解析】初期中間体合成標品によりAlexandrium tamarense中の中間体A’及びC’-2のLC-MS MRM定量分析法を確立し、有毒株は中間体A’及びC’-2をアルギニンの約50分の1及び170分の1のレベルで含有し、無毒株は検出限界未満であることを明らかにした。C'-2は推定中間体と類似するが構造の異なる化合物であった。A.tamarense有毒株の5-Fluoro-2’-deoxyuridine (FUdR)添加系の毒組成及び毒量と中間体量の変化からFUdRは生合成の初期段階の反応を阻害し、毒生産を抑制したことを明らかにした。藍藻の遺伝子解析から推定された酵素が渦鞭毛藻でも関与していることを示唆する重要な知見である。
【2.有毒、無毒株間の差分解析】A. tamarenseをHILICカラムを用いたUPLC-ESI-Q-TOFMSで分析する条件を検討し、有毒株と無毒株で麻痺性貝毒類縁体やアルギニンと類似の溶出範囲で量差のある化合物を見いだした。今後麻痺性貝毒との関連を調べる。
【3.麻痺性貝毒3群の一細胞分析法の確立】蛍光化HPLC法の改良によりA.tamarenseの主成分であるC1+2及びGTX1-4を一斉検出するための溶離条件を見出し、超高感度蛍光検出器を導入することで分析感度の向上をはかり、A.tamarenseの一細胞抽出液からのC2とGTX4の一斉検出に国内外ではじめて成功した。
【4.推定Sxt遺伝子のクローニングとリコンビナント酵素の調製】推定されているSxt遺伝子をクローニングするため、totalRNAから調製したcDNAを鋳型として、既報のプライマー及び新たに設計したプライマーによるRT-PCRを行い、渦鞭毛藻有毒株から推定理論塩基長のバンドを得ることができた。Sxt遺伝子は時期特異的発現の可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成24年度に計画した四項目のうち、三項目について計画通りあるいは予想しなかったものの役立つデータが得られているため、おおむね順調と判断した。
麻痺性貝毒生合成初期中間体の定量分析法を確立し、FUdRが麻痺性貝毒生合成初期中間体の合成に影響を及ぼしていることを世界ではじめて明らかにした。本成果は国際会議で発表した。得られた結果が藍藻の遺伝子解析から推定されている既報の推定生合成経路と完全には合わなかったため、当初計画した中間体の単離や標識化合物調製に先立って、FUdR添加系での有毒細胞内中間体量変化の詳細な定量分析を優先した。代謝阻害剤を用いて生合成関連化合物を追跡するという本手法が遺伝子解析では不明の反応解析に有効であることがあらためて立証された。
有毒株と無毒株の差分解析により、麻痺性貝毒類縁体や初期中間体と近い溶出区に株間で差のある複数の化合物を見いだし、それらが既知のアミノ酸や核酸関連化合物のような生体成分と分子量が異なることを明らかにした。今後再現性を確認し、MSMSなどで麻痺性貝毒生合成との関連を調べるために、有用な基礎データが取得できたと考えている。
蛍光化HPLC法を改良し、A. tamarense培養細胞一細胞分析で主成分であるC2とGTX4の検出に成功した。本法と分子生物学的手法の組み合わせにより麻痺性貝毒生産渦鞭毛藻の新たな研究分野へと発展する可能性が示唆された。
Sxt遺伝子のクローニングは達成できていないが、RNA収穫時期の検討により増幅産物を得ることに成功したため、それを足がかりにクローニングができるものと考えている。

Strategy for Future Research Activity

【1.代謝阻害剤添加系の解析】中間体の定量分析法を確立し、FUdR添加系での有毒細胞内中間体量変化の詳細な定量分析したことにより生合成経路を推定するために有用な現象を見いだした。すなわちFUdRによる毒生産阻害が推定生合成経路のシチジンデアミナーゼ阻害によるものであれば中間体C’-2は時間の経過とともに消滅すると予想したが、実際には増加は抑制されたものの減少量が少ないことがわかった。そこでFUdRでは阻害が完全ではない、あるいはC'-2は生合成の副産物である可能性を想定して、別の代謝阻害剤による阻害実験(シチジンデアミナーゼの特異的阻害剤zebularine)と中間体C'-2補充による毒生産回復実験を実施する。さらにすでに確立している他の代謝阻害剤でも同様に検討し、有毒株、無毒株間での代謝阻害剤添加系における低分子画分のLC-MS差分解析で麻痺性貝毒生合成関連化合物を探索する。
【2.一細胞分析法】一細胞毒量分析法を3群一斉分析できるように改良し、さらに収穫方法の工夫により毒量分析と遺伝子解析を同一細胞から実施する手法を開発する。
【3.Sxt遺伝子クローニングとリコンビナントタンパクの調製】sxt遺伝子と推定される増幅断片の塩基配列解析後、Race法により全長を取得する。大腸菌での発現タンパク質の調製により、STX生合成に関与するリコンビナント酵素を得て、in vitroでの中間体変換実験に供する。
【4.網羅的タンパク発現相対解析】有毒株、無毒株のタンパク抽出液のiTRAQによる解析で網羅的に発現量に差のあるタンパクを探索し、データベース解析に供し同定する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

【物品費】麻痺性貝毒及び中間体の定量分析にカラムやHPLCの消耗部品、溶媒など、代謝阻害剤などの試薬類、培養器具が必要である。一細胞毒量分析法を3群一斉分析するための蛍光化試薬類やHPLC消耗品、さらに収穫方法の工夫のための特殊コーティング器具と遺伝子解析用試薬類を購入予定である。受託合成プライマー、RNA及びゲノムの抽出キット及び分子生物学的実験用の試薬、器具が必要である。タンパク抽出の試薬、iTRAQ試薬、データベース検索などのデータ解析用消耗品を購入する。
【旅費】国内学会(2014年度日本農芸化学会(東京)、第55回天然有機化合物討論会(京都))及び国際学会(ゴードン会議(アメリカ))に成果発表及び情報収集のため参加予定として、計上した。
【人件費・謝金】成果を外国語論文として投稿する際の英語の校閲費用として計上した。
【その他】iTRAQによる網羅的タンパク発現相対解析には本学の共通設備であるMALDI-TOFMSを使用予定であるため、機器使用量として計上した。

  • Research Products

    (3 results)

All 2013 2012

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Single-cell analysis of paralytic shellfish toxins in Alexandrium tamarense by HPLC with post-column fluorescent derivatization2013

    • Author(s)
      Yuko Cho, Ryoko Ozeki, Mari Yotsu-Yamashita, and Yasukatsu Oshima,
    • Journal Title

      Harmful Algae

      Volume: 25 Pages: 47-53

    • DOI

      doi.org/10.1016/j.hal.2013.02.005

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 5-Fluoro-2'-deoxyuridineの渦鞭毛藻 Alexandrium tamarenseにおける麻痺性貝毒生合成初期中間体合成に与える影響2013

    • Author(s)
      長 由扶子、土屋 成輝 、此木 敬一 、大島 泰克 、山下まり
    • Organizer
      日本農芸化学会2013年度(平成25年度)大会
    • Place of Presentation
      仙台
    • Year and Date
      20130325-20130325
  • [Presentation] Effect of 5-fluoro-2’-deoxyuridine on the cell proliferation and toxin production of Alexandrium tamarense2012

    • Author(s)
      Yuko Cho, Motoo Ogawa, Mari Yotsu-Yamashita and Yasukatsu Oshima
    • Organizer
      The 15th International Conference on Harmful Algae
    • Place of Presentation
      Changwon, Republic of Korea
    • Year and Date
      20121029-20121102

URL: 

Published: 2014-07-24  

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