2012 Fiscal Year Research-status Report
水産廃棄物残渣等を用いた藍藻毒マイクロシスチン中毒の化学予防
Project/Area Number |
24580304
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小松 正治 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (30325815)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
「安全な水」の供給のための重要課題として、有毒藍藻類由来の化合物中毒、特に肝臓毒マイクロシスチンLRに対する予防法を確立する必要があり、その毒性についての知識を得るための詳細な毒性学的実験研究が急務である。そこで、マイクロシスチンLRの細胞内解毒代謝機構の分子機序の解明への着手に加え、マイクロシスチンLRの細胞毒性を抑制し得るアメリカオオアカイカ由来のセラミド誘導体セラミドアミノエチルホスホン酸(CAEP)等の水産物廃棄残渣をはじめとした食品成分・天然化合物の機能解析を実施した。 第I相薬毒物代謝酵素のカルボキシルエステラーゼ(CES)2が関与するMCLRの弱毒化現象について詳細にその分子機序を解析した。CES2を安定に発現するHEK293-OATP1B1/CES2とHEK293-OATP1B3/CES2細胞はCES2非発現HEK293-OATP1B1またはHEK293-OATP1B3細胞に比べてMCLR耐性を示すことを突き止めた。そこで,MCLR耐性の賦与におけるCES2の関与を以下の2つの実験で明らかにした。(1) CES2のカルボキシルエステラーゼ活性をMCLRが阻害した。(2) CES2とmicrocystin-agaroseとの結合すなわち相互作用が検出された。 アメリカオオアカイカ皮由来のCEAPは、保存安定性が悪く、機能性の低下が比較的早いことが判明したため、H25年度計画を前倒して実施した。HEK293-OATP1B3細胞を用いた解析において、O-P-C構造をもつCAEPはマイクロシスチンLRの細胞毒性を有意に抑制した。この毒性抑制活性は、対照として用いたO-P-O構造をもつスフィンゴミエリンの約2倍であり、また、リン酸基をもたないセレブロシドには活性は検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAEPの活性保存性の不安定性が判明したことから、当初計画を多少変更し、平成25年度実施予定の検討項目にすでに着手し、論文発表した。そのために第三相の薬物代謝系に関する解析が若干不十分であるが、それ以上に有益な研究結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続きMCLRの代謝・弱毒・解毒機構の解析を実施する。 報告者らは、これまでに柑橘類の苦み成分でフラボノイドの一種であるナリンジンが、活性酸素の消去ならびにOATP1B1およびOATP1B3を介したMCLRの細胞内取り込みを阻害することにより、細胞毒性の発現を抑制することを明らかにした。また、アメリカオオアカイカ由来のセラミド誘導体セラミドアミノエチルホスホン酸(CAEP)、奄美大島産のある種の海綿から単離したトリテルペノイドの一種であるステリフェリンA、同じく奄美大島の健康食品であるクビキ、ダラキ、バナバ、並びに月桃の各抽出物中の成分にMCLRの細胞毒性を減弱する効果があることも突き止めた。そこで、MCLRのOATP1B1およびOATP1B3を介した細胞内への取り込み抑制、毒性発現の鍵分子であるp53等を指標に用いて、上述のCAEPをはじめとした天然物由来の化合物を用いた中毒の化学予防法の開発をめざす。また、報告者らの以前の研究でアゴステロールA(伊勢湾および英虞湾産の海綿由来)がグルタチオン抱合体排出ポンプABCC2の輸送機能を阻害することを発見した。そこで、MCLRの毒性発現促進作用についてもアゴステロールAの機能性を検討する。これはMCLRを抗癌剤として検討する際の有用な情報となると期待される。 さらに、主に次年度に実施する実験動物(マウスおよびゼブラフィッシュ)を用いたMCLRの毒性抑制化合物の機能評価の準備にとりかかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
報告者らの所属する機関の研究棟が新築移転した。これに伴い、研究環境に変化が生じ、新たに蛍光顕微鏡の購入の必要性が生じた。この点以外については、概ね申請書通りに予算使用可能である。
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