2012 Fiscal Year Research-status Report
ドコセン酸およびイコセン酸の高度利用技術の開発と栄養学的展開
Project/Area Number |
24580305
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
西川 正純 宮城大学, 食産業学部, 教授 (90404839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富岡 佳久 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00282062)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サンマ / 魚油 / ドコセン酸 / イコセン酸 / 水産利用学 / 栄養機能性食品 |
Research Abstract |
本研究は、北海道から関東の太平洋近海で安定的に水揚げされる「サンマ」の加工残渣から得られるサンマ油の有効利用を最終目標に、サンマ油に特徴的に含まれるモノエン酸類のドコセン酸やイコセン酸の高度精製技術の開発、さらに栄養学的意義を明らかにすることで、新たな栄養機能性脂肪酸の実用化・産業化を最終目標としている。 本年度はサンマ油グリセリド画分のドコセン酸やイコセン酸、並びに機能性脂肪酸として有用なn-3系高度不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)について高度精製技術の開発を目的に、基質特異性の異なる4種類の食用リパーゼ、OFL(Candida cylindracea由来)、TL(Pseudomonasu stutzeri由来)、DF(Rhizopus delemar由来)、QLM(Alcaligenes sp.由来)を用いて、酵素量、反応時間、反応温度等の条件を詳細に検討した。 試験の結果、リパーゼOFLがサンマ油中のドコセン酸、イコセン酸の高度精製に有用であることが示された。産業スケールでの最適な条件としては、原料油1gに対しリパーゼ600Uを用い、反応温度30℃で32時間が有用と考えられ、分子蒸留で得られたグリセリド画分においてドコセン酸含量は27.3%、イコセン酸含量は10.1%、DHA含量は25.3%まで濃縮可能となった。また、その時点での歩留りは約30%であった。本法はサンマ油中のドコセン酸の高度利用に有用な濃縮法であると共に、世界的に粉ミルクや機能性食品への利用が拡大しているDHAについても現行のマグロ製品レベルの含有量22%をクリアしたことから、精製サンマ油はDHA含有魚油としても産業的に十分利用可能なレベルに達したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実施計画ではサンマ油に含まれるドコセン酸、イコセン酸について食品衛生法に則りグリセリド画分中の含有量を向上させる技術開発を行うことを目的とした。 結果として、①ウィンタリング法による検討では、エタノール、ヘキサン、アセトンを活用してドコセン酸、イコセン酸の含有量の向上を目指したが、歩留まり等が低値を示し、産業的な活用は難しいと判断した。②リパーゼ酵素による方法では、4種類の食用リパーゼ、OFL(Candida cylindracea由来)、TL(Pseudomonasu stutzeri由来)、DF(Rhizopus delemar由来)、QLM(Alcaligenes sp.由来)を用いて検討し、リパーゼOFLがサンマ油中のドコセン酸、イコセン酸の高度精製に有用であることが示された。さらに、機能性脂肪酸として有用なn-3系高度不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量についてもドコセン酸と同様の挙動を示し含量が向上したことから、サンマ油の利用価値としてDHA含有魚油という新しい価値を見出すことができた。 以上のことより、平成24年度の実施計画は順調に遂行できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究実施計画通り、サンマ油と24年度確立した方法による精製サンマ油のトリグリセリド、ジグリセリドに結合するの脂肪酸結合位置(構造脂質組成)の解析を実施し、脂肪酸含量向上との相関関係を明らかにする。 さらにサンマ油の栄養効果について、KK-Ayマウス(糖尿病モデルマウス)を用いて脂質代謝や糖尿病改善作用を、NC/Ngaマウス(アトピー性皮膚炎発症モデルマウス)を用いて抗炎症作用(アトピー性皮膚炎)を検討し、ドコセン酸やイコセン酸の栄養学的有用性を明らかする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の試験実施が計画より若干遅延し新年度にまたがったことから、平成24年度の研究費に残余分が発生した。
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