2013 Fiscal Year Research-status Report
地域マーケティングにおけるソーシャル・キャピタルの形成と効果に関する行動科学研究
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24580323
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
赤沢 克洋 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (70304037)
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Keywords | 地域マーケティング / 観光 / ソーシャルキャピタル / 地域農産物 |
Research Abstract |
本研究の目標は,地域マーケティングにおけるソーシャル・キャピタルに着目し,①地域住民間及び都市住民と地域住民間のソーシャル・キャピタルの形成,②地域住民のマーケティング力や都市住民の需要行動に及ぼすソーシャル・キャピタルの効果を行動科学的方法論に基づいて定量的に検証することである.この目標のために,当該年度は,以下の3つの取り組みを行った. 第1に,ソーシャル・キャピタルの一種であると考えられる『地域愛着』を取り上げ,その構造分析を行った研究である.具体的には,島根県旧3町の住民860人に対して行ったアンケート調査データを用いて,構造方程式モデリングにより,多様な地域愛着の構成因子を組み込んだ構造モデルを抽出し,地域愛着の構成因子を網羅的かつ定量的に把握した.その結果,『安穏』『郷土愛着』『特別意識』『連帯感』『仲合意識』『持続願望』『誇らしさ』『郷愁』の8つの構成因子を得た. 第2に,地域農産物(エゴマ)を利用した機能性食品に関して,都市住民の希求ポイントを定量的に解明した研究である.具体的には,3社に対する聞き取り調査に基づいて地場企業の市場環境とマーケティング戦略を整理した後,女性買い物客を対象としたアンケート調査を行った.選択実験に関する条件付きロジットモデル,クラスター分析等から,高価格を受容しながら『健康』『価格』『珍しさ』『調味料味』『高級感』を希求ポイントとする消費者層が抽出できた.ただし,高価格受容層ではあるものの,その限界支払意思額は実勢価格より250~500円程度低いことが留意点となった. 第3に,日帰り温泉に対する関与の程度と意識及び行動との関連性に関する理論的予測を検証した研究である.具体的には,316人の利用者に対するアンケート調査を実施し,関与の調節変数としての働きに対する理論的整理が日帰り温泉に対しても概ね適用可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,都市住民との交流によるソーシャル・キャピタルの醸成の定量的分析における基礎的材料となる「地域愛着」の構成因子を得ることができ,研究の進捗が認められる.一方,中長期的な観光資源及び地域資源におけるソーシャル・キャピタルの効果を分析したが明確な効果が認められなかった.以上のように,見通しの甘さから十分な結果が得られていない研究があるものの,取り組みは当初の計画通りであり,今後の方向性を確認することができたので,概ね順調に進展していると達成度を評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては,地域の美術館・博物館と道の駅を対象とした2つの事例研究を通して,第1に,それらの施設の存在が地域のソーシャル・キャピタルの醸成に貢献しているかどうかを明らかにすること,第2に,これらの施設が地域内あるいは地域外利用者に対して地域のソーシャル・キャピタルを意識させることができるか,さらにそれは利用者の満足感に効果を及ぼしているかどうかを明らかにすることである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の研究費は概ね有効に使用したが,いくつかの経費を若干節約することができた. 年間を通じて,アンケート調査関連(調査旅費,調査補助謝金,消耗品一式,アンケート郵送料)に約30万円支出する.また,データ解析用PCに約20万円支出する.成果報告関連(学会参加旅費,学会誌投稿料)に約20万円支出する.ソーシャル・キャピタル関連図書の購入に5万円支出する.以上を合わせて,約75万円の支出を予定している.
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Research Products
(3 results)