2012 Fiscal Year Research-status Report
食料高価格時代の米国穀物セクターの構造変化と農業政策の展開方向に関する研究
Project/Area Number |
24580324
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
磯田 宏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00193392)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アメリカ農業 / アメリカ農業法 / 穀物価格高騰 / アメリカ農協 / 新世代農協 / アメリカ農業構造 / 穀作農場 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実施計画は3つからなり,(1)米国農業・食料産業の基礎的統計による構造と動態の分析については,主として農業センサス,農務省全国統計局(NASS)データベース,同経済調査局・農業資源経営調査統計(ARMS)を収集した上で,穀物・油量種子価格高騰局面における米国穀作農業セクターのマクロ経済状況,経営収支状況,生産構造変動について統計分析を行なった。 実施計画の(2)米国新農業法策定プロセス策定プロセスの追跡については,連邦議会上院で可決された「2012年農業改革・食料・雇用法」および下院農業委員会で可決された「連邦農業改革・リスク管理法」について検討し,両者の共通性と相違点について検討した。その結果,①両者とも2008年農業法にあった固定支払,価格変動補填支払(CCP,実質的な不足払い),平均作物収入・選択支払(ACRE,CCPに対する選択肢として高価格を前提とした収入下落補填)を撤廃し,代わりに②上院法案では農業リスク保証支払い(ARC,直近5中3の作物別収入基準の補填),下院案では収入損失保証支払いを(上院のARCとほぼ同じ)ないし価格損失保証(PLC,不足払い)の選択としている,③両者とも作物収入保険の拡充保証支払い(SCO)を導入する,という主要内容が明らかになった。ただし上下院の(民主党・共和党の)協議が整わず,未だに法案は成立していない。 実施計画の(3)ネブラスカ州現地調査は,①大型穀物販売・資材購入単協2つ,②1980年代後半に設立された後,成功的に事業拡張してきている広域大豆・トウモロコシ農協1つ,③特産品である食用豆の集荷・洗浄・包装・販売を行なう新世代農協1つ,④これら農協に穀物・大豆・食用豆を出荷する農業経営8つについて,訪問ヒアリング調査を実施し,(1)のような経済環境における農場経営実態について最新情報を収集できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記「研究実績の概要」で要約したように,平成24年度の実施計画について,統計資料の収集・検討,農業法案策定プロセスの追跡と特徴の析出,ネブラスカ州の現地調査はほぼ計画通り実施することができた。しかし,実施計画策定時に予期していなかった事態,具体的には環太平洋連携協定(TPP)への日本参加問題が急激に進展,深刻化したため,想定外の研究的エフォートを当該TPPのわが国農業・農政に与える影響分析に注入せざるを得なくなった。そのため,とくにネブラスカ州現地調査で収集した情報,統計,文献資料についての分析に,若干の遅れが生じた。平成25年度以降にこれらの分析について,より深めることとする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究実施計画も大きく3つの部分からなる。うち(1)は穀物関連アグリフードビジネス個別企業の事業展開・収益基盤等の分析であり,主要個別企業の財務諸表(公表の場合),公式ウェブサイト情報,業界紙誌の報道情報等を収集し,近年の企業成長,組織・事業再編,収益状況の動向と特徴を析出する。 (2)は米国系アグリフードビジネスによる対外事業展開の統計的分析であり,「合衆国対外直接投資統計」の1999年,2004年および2009年ベンチマーク調査結果(2009年は暫定報告)を用いて,米国に親会社を置く多国籍アグリビジネス企業の対外直接投資の規模と地域分布,外国子会社との関連性,原材料調達・生産品販路,企業内国際分業等の状況について,時系列的比較を含めて検討する。 (3)は米国現地調査であり,平成25年度は,①穀作農場実態調査は大平原北部春小麦地帯のモンタナ州で実施し,②全米最大にして多国籍化している穀物関連巨大農協CHS(ミネソタ州)の訪問調査を実施し,その1990年代以降の事業再編・拡大,多国籍化,組織再編と加入単協との関係性,および収益動向についてヒアリングと資料収集を行ない,それらの分析を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度から25年度に繰り越された研究費71,138円については,24年度に積み残した実態調査収集データ・情報・資料の解析,それに必要な図書資料等の購入に充てる。25年度請求の130万円(直接経費)については,上記「今後の研究の推進方策」に記した25年度研究実施計画のための支出に宛てる。
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Research Products
(1 results)