2012 Fiscal Year Research-status Report
「転換点」後の中国農業の構造変化に関する実証的研究
Project/Area Number |
24580332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
池上 彰英 明治大学, 農学部, 教授 (80339572)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 中国 / 農業経済学 / 農業構造 |
Research Abstract |
中国は現在、労働過剰経済から労働不足経済への「転換点」を迎えている。本研究は中国沿海部と内陸部の特定地域に的を絞った農村実態調査により、「転換点」後の中国農業の構造変化について明らかにすることを目的としている。また、具体的な調査研究課題として、小課題(1)農業生産の担い手の問題、(2)農地流動化の問題、(3)農産物流通の問題、(4)農村内部の経済格差の問題、を設定している。 平成24年度には、この目的を達成するために連携研究者および研究協力者等の協力を得て、内陸部の河北省遵化市および沿海部の福建省厦門市(および隣接する晋江市、しょう州市)において、農村実態調査を実施した。 この調査の結果、内陸部の農村と沿海部の農村において、(1)農業生産の担い手や(2)農地流動化の面で、大きな違いがあることが明らかになった。具体的には、遵化市においては、農地の流動化がほとんど進んでおらず、小規模な家族農業+兼業が一般的であるのに対して、厦門市や晋江市、しょう州市においては、借地による大規模な企業直営農場や雇用依存型の資本家的農場経営が幅広く発達している。 (3)農産物流通については、全国7位の取扱量を誇る厦門市のびん南青果物卸売市場を調査した。その結果、中国の青果物流通において、産地仲買人(出荷商人)、卸売市場に店舗を構える荷受人、消費地仲買人という分業関係の成立が確認できたのは大きな収穫であった。また、農民専業合作社が野菜の品質向上やブランド化に大きな役割を果たす一方、販売力が弱く、既存の商人や卸売市場に頼る面が強いことも明らかになった。 (4)農村内部の経済格差については、地域および作目により農家所得の構成が大きく異なるために、兼業収入を含めた農家所得の格差構造について、明確な結論を得るには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の内陸部調査(9月)は、当初内モンゴル自治区東部の通遼市において実施する予定であったが、中国共産党第18回党大会(2012年11月)前の政治的混乱期に、少数民族地区において農村調査を実施するリスクを考慮して、実施地域を漢族地区である河北省遵化市に変更した。年度後半に、あらためて内モンゴルにおける調査を追加的に実施することも考えたが、9月以降の日中関係の悪化に鑑み、断念した。通遼市は、本研究課題の実施に当たり、最も重要な調査地として想定していたために、研究遂行上の痛手が大きかった。 通遼市に代わる内陸調査地である河北省遵化市は、燕山山脈の山麓に位置する農業県であり、農家の経営規模が華北地区としては著しく小さく、農地流動化もほとんど進んでいなかった。その分、沿海部とは対照的であり、研究目的を達成する上では、有意義な調査を行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、沿海部と内陸部の農村において、村民委員会、農業関連企業、農民合作経済組織、産地仲買人及び農家等に対する聞き取り調査並びに地方資料調査を実施する。また、調査結果の分析を進め、研究成果を学会、学術雑誌等で発表する。 連携研究者:一橋大学大学院経済学研究科教授・佐藤宏・小課題(4)に関する調査、分析。東京農業大学生物産業学部准教授・范為仁・小課題(2)に関する調査、分析。 平成25年度より、主に小課題(3)に関する調査、分析を担当する連携研究者として、東京大学社会科学研究所特任研究員の張馨元(研究者番号60635879)を、新たに研究組織のメンバーに加える。また、平成24年度の研究にも参加した、明治大学大学院農学研究科RAの暁剛を、主に小課題(4)に関する調査、分析を担当する研究協力者として、正式に研究組織のメンバーに加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に実施できなかった内モンゴル自治区通遼市における農村実態調査を実施することを計画している。
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Research Products
(14 results)