2013 Fiscal Year Research-status Report
食品のハラル制度の国際的不整合の実態とその要因に関する研究
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24580333
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
並河 良一 中京大学, 総合政策学部, 教授 (80313964)
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Keywords | ハラル / 食品市場 / WTO / 東南アジア / 中東 / オーストラリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、食品のハラル制度が国により異なるのは、宗派の相違や社会構造の相違だけが要因ではなく、制度が経済や食品産業の特性(産業構造、貿易構造、新技術)の影響を受けることも要因であることを明らかにすることである。このため、特徴あるハラル制度を有する国として、非イスラム国を含む5カ国(マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリア、エジプトを予定)を選び、各国のハラル制度の態様・内容・運用の時系列変化、各国間の比較検討を行い、これらと経済・産業の関係を明らかにすることとしている。 研究の2年目である平成25年度は、オーストラリア、中東地域に重点を置き、文献調査、関係機関へのインタビュー、食品市場におけるハラル製品の流通動向の調査を、現地および国内で行い、1 ハラル制度の内容・運用の動向・変遷に関する資料/情報、2 食品産業を中心とする経済・産業の動向・変遷に関する情報/資料を収集した。昨年度の報告書で示したとおり、中東地域については、不安定な政治状況を背景に治安に懸念のあるエジプトに替えて、トルコを調査対象とした。また、東南アジだけでなく、オーストラリア、西アジアのハラル製品が幅広く流通するシンガポールの市場調査も実施した。これにより、研究期間の前半である平成24,25年度において、対象5か国の資料/情報を収集したことになる。 平成24、25年度に収集した文献資料および現地調査で収集した各種資料をとりまとめて、企業の実務者向けの専門書を、昨年度に引き続き、執筆・出版した。また、ハラル制度の国際比較、制度上の難しい点、制度の市場開発の阻害要因などについて、企業の実務者向けの総説・解説を執筆・投稿し、いずれも食品分野の経済誌に掲載された。また、大学・学会(研究会)における学術講演だけでなく、研究成果の普及を図るために、企業の実務者向けの講演も積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の2年目である平成25年度は、オーストラリア、トルコ、シンガポールの実地調査を実施し、インタビューや市場調査を通じて、ハラル制度および食品産業動向に関する有益な情報/資料を得ることができた。トルコは、治安情勢に不安のあるエジプトに替えての調査である。これは申請書の「当初予定通り進まない場合の対応」に記載したとおりの変更である。各国からハラル認証製品が流入するシンガポールは、有益な市場情報を得ることができるため、今年度も調査対象とした。これで当初予定どおり、2年間で、対象国5か国(マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリア、エジプト(⇒トルコ))の実地調査を行ったことになる。 国内では、当初予定どおり、国会図書館、日本貿易振興機構(アジア経済研究所を含む)などで、イスラム国の産業経済情報の収集を行った。また、イスラム市場に進出している企業のハラル食品担当者へのインタビュー、企業向けセミナー等における企業実務者との意見交換・質疑を通じて、ハラル制度の国際的な不整合性についての情報を収集した。ハラル製品の輸出商談会にも出席し、ハラル制度の国際的不整合性に対応する日本企業の製品情報を収集した。さらに、食品技術の専門家からは、ハラム(不浄)成文の検出についての基礎知識を得た。 海外における実地調査で得た情報/資料収集を、日本国内で収集した情報/資料、WEBを通して得た情報/資料収集で補強することにより、今後の分析に使える情報/資料を得ることができた。 研究成果の発表については、当初の予定を超えて、2冊目のハラル制度に関する実務書を執筆・出版した。また、ハラル制度の国際的不整合性を含む制度の難しさに焦点を当てた解説・総説を積極的に執筆・投稿し、これらが食品関係の専門誌に掲載された。同様に、学術報告、企業実務者への講演も積極的に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の前半である平成24,25年度において、ほぼ予定どおりに研究が進んだため、今後の推進方策は、大筋において、当初予定と大きな変化はない。 平成26年度は、平成24, 25年度で収集した対象5カ国(マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリア、トルコ)の資料/情報を分析し、各国間のハラル制度の相違を体系的に明らかにすることを試みる。また、ハラル制度の変遷に影響を与える経済・産業の動向についての補足情報、イスラム協力機構(OIC)の標準ハラル制度の策定動向、国内ハラル認証団体と海外認証機関との制度互換性についての情報を収集する。海外では、シンガポールで市場調査を継続し、ハラル認証製品の流通動向について、製品の画像資料も含めて、追加情報を収集する。 平成27年度には、各国のハラル制度の時系列変化、制度・運用の国際比較と各国の経済・産業動向との関連性を見出し、ハラル制度の内容・運用が経済・産業の影響を受けているとの結論を導く。 研究成果については、すでに専門書の出版、専門誌における総説・解説の掲載、学会(研究会)における学術報告を行っているが、今後も、学会報告、論文だけでなく、経済誌への投稿、企業実務者への講演などを積極的に行い、研究成果の普及に努める。 推進方策の中で、再検討する可能性のあるのは、次の点である。 当初予定していた、マレーシア国際ハラル見本市(MIHAS: Malaysia International Halal Showcase)におけるハラル対応新製品の資料/情報の収集に替えて、シンガポールの市場調査を行うこととする。昨年度の報告でも記載したとおり、完全な自由貿易国家であるシンガポールの食品市場には、予想を超える多様な国のハラル製品が流通していることがわかり、シンガポールでの調査が本研究に有益であることが明らかになったからである。
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