2012 Fiscal Year Research-status Report
土壌の物理性をもとにしたリンゴの開花日予測モデルの構築
Project/Area Number |
24580344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
加藤 幸 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (40302020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 勝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00181917)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リンゴ / 開花予測 / 地温 / モニタリング |
Research Abstract |
青森県では,2012年末から2013年にかけ記録的な豪雪となり,リンゴ園では枝折れや幹の転倒・割裂などが多発している.そのため,剪定など春先の作業が大幅に遅れ,通常の営農に支障をきたしている.このような中,農家が作業計画を立てる際,指標となるのが「開花日」である.開花予測に関しては,そのメカニズムなど生理学的見地からの検討も重要であるが,農家のニーズに対応した生産現場での実用性が高い予測モデルの検討も不可欠である. 本研究で活用している地温モデルは,融雪後,ほぼ直線的に上昇する深部地温を線形近似し,目処となる温度(10℃)に到達する日数を概算する.このモデルと一般的な積算地温モデルで開花予測結果を検証したところ,春先の気温変動が大きかった2012年は,地温モデルが積算温量モデルより11日早い段階で正しい予測結果を示した.この結果は,早い段階で開花時期を把握したいという農家の要請に,簡便な計算で対応でき,現場ニーズに沿うものと言える.また,気候変化が激しい昨今の天候への適応策を生産現場レベルで検討するうえで大きな助けとなることを意味する. さらに,このモデルの簡便で実践的な活用策として,堆肥用温度計(シンワ90cm 72611)を活用し,2つのの農園で地温を簡易計測し地温モデルを適用した.アナログ式で単純に目盛りを読むだけの数回の計測結果であるが,予測開花日と実際の開花日との差は2日程度であった.つまり,このモデルが簡易計測をもとに各農園に応じた開花時期の予測に利用可能であることを意味している.加えて,必ずしも高性能な土壌センサに依存せず,設置や維持管理面できわめて簡易に実用可能な地温モデルは,生産現場で日常的に利活用することができるといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンゴ園での開花予測における「地温モデル」の優位性について,2012年の特異な気候(例年に比べて半月以上融雪が遅れ,その後一転して高温傾向になった)下において既存モデル(積算温量モデル)と比較しながらその優位性を証明することができた.特に,2012年は発芽から開花までの期間が例年の2/3程度と短く,栽培環境が特異な条件下にあった.このような場合における地温モデルの有効性を示すことができた成果は大きい. さらに,簡易温度計を利用して,このモデルの生産現場での実践方法を提示することができた.日常的な農作業で忙しい農家は,コストと労力面で負担が大きい場合,観測装置やモデルの導入に否定的な傾向を示す場合も多い.本研究では,単なるモデルの構築だけでなく,その成果を生産現場と共有しつつ実践的な活用につなげることができた.その結果として,農園ごとや,あるいは農園内の場所ごとに地温を利用して開花予測ができる可能性が示されたほか,2012年の特異な気候下での地温モデルの利用により,昨今の極端な気候変化への適応策を検討するきっかけが得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
開花予測のための地温モデルのさらなる精度向上と農家レベルでの実用化と普及を図る. (1)これまでの2農園での土壌モニタリングに加え,昨年度よりさらに2農園で調査を進めている.データ数の増強を図ると同時に,異なる条件下におけるモデルの妥当性の検証や改良により,予測精度の向上を図る. (2)実践的な簡易計測を広範囲で実施し,これまでのモニタリングポイントのデータだけではなく,面的な観点からモデルの検証を行う.経験豊富な農家ほど,土壌センサの点的なデータが広い農園に適用できるものか疑問を呈する傾向がみられる.そこで,ベテラン農家の経験値と測定データ,予測モデルのマッチングをはかりながら地温モデルの普及を進める. (3)連携農家と協力し,予測モデルの活用方法の検討やそれに応じた農作業の進め方について検討を行う.地温モデルの活用により,融雪期に大まかな開花時期が予測できることで,地域的な営農の効率化の可能性を探る. 以上の3点をもとに,地温を使った開花予測モデルの精度面と実用面のさらなる改善を目指していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は,土壌センサを活用した詳細なデータの計測,簡易温度計を使った実用的な計測,協力農家との連携によって構成されている.このうち,野外の農地での活用している機器の一部には故障や破損が起こり始めている.そのため,予算を活用してこれらのセンサや温度計の修理,交換を行う予定にしている.
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Research Products
(5 results)